不動産を共有状態で所有していると自由に使えないことから「自分一人の所有に変更したい」と考える人は多いのではないでしょうか。
共有者から共有持分を取得するためには、贈与や売却、もしくは分割請求をする必要があります。ただし、共有者が行方不明で連絡が取れない場合や、共有者が亡くなったが相続人がいない場合など、特殊なケースでの対応を知っておくことも大切です 。
今回は、共有者から不動産の共有持分を取得する方法について、わかりやすく解説します。
目次
他の共有者から共有持分を取得する方法
共有者と連絡が取れる場合、不動産の共有持分を取得する方法には、以下の3つがあります。
- 贈与
- 買い取り
- 共有物分割請求
次項から、個別に解説します。
贈与
共有者に物件を譲ってもらう「贈与」は、共有者との関係が良好で、共有者がその不動産に価値を感じていない場合に検討できるでしょう。
ただし、贈与を受けた場合、「贈与税」を支払う必要があります。贈与税の額は贈与された財産の価値によって異なりますが、税率は最低10〜55%までと高額。
贈与税の額は「譲渡される共有持分の評価額 × 贈与税率」で算出されます。贈与を受ける際には、「不動産取得税」という税金を支払わなければならない点にも留意しましょう。
買い取り
2つ目の選択肢は、共有持分の「買い取り」です。購入価格は、当事者が合意できるものであれば問題ないのですが、参考までに「適正価格の算出方法」を把握しておきましょう。
売却時の価格を算出する際には、土地の場合は「相続税路線価」。建造物の場合は「固定資産税評価額」を用いるのが一般的。
その後、以下のように自身が有する共有持分をかければ、おおまかな共有持分の売却価格を算出できます。
- 土地の購入価格 = 土地の相続税評価額 × 共有持分割合
- 建物の購入価格 = 固定資産税評価額 × 共有持分割合
共有物分割請求
他の共有者と話し合いをしても、贈与や売却に同意してもらえない場合があります。
そのようなケースは、裁判所に「共有物分割請求」を行わなければなりません。共有物分割請求とは、裁判所に共有物の分割方法を決めてもらうための手続き。
請求には「調停」「訴訟」の2種類があります。
共有物分割の「調停」
調停とは、裁判所の調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いで共有物の分割に関する問題を解決する手続きです。当事者間の仲介役を務めるのは、不動産の専門家や弁護士。
相手方を説得する。あるいは和解案を提示することで、自力での解決が困難なケースでも合意に達することができます。
もちろん、調停は話し合いによる手続きなので、合意できない場合もあります。「相手方が贈与や売却に納得していない」「売却の価格が決まらない」場合などは、調停では解決できない点は把握しておきましょう。
共有物分割の「訴訟」
調停で合意に至らなかった場合でも「共有物分割訴訟」を起こすことで、問題を解決できる可能性があります。
共有物分割訴訟とは、共有不動産の分割方法を「判決」によって決定する裁判です。判決が出れば、共有不動産の分割方法は強制的に決定されます。
共有者の一方が所有権の取得を強く希望し、補償金を支払う意思と能力があれば、所有権の取得を認める判決が下される可能性が高いでしょう、
このように、共有者の一方に補償金を支払わせて不動産を取得する分割方法を「価格賠償」といいます。
ただし、状況によっては、以下のような判断がなされることもあります。
- 現物分割:不動産を物理的に分ける方法で、建築物が建っていない土地のみの場合に適用される。
- 換価分割:第三者に売却して、経費を差し引いて残ったお金を共有持分に応じて共有者全員に分配する方法。
現物分割や換価分割が裁判所で決定された場合、共有持分の取得はできません。価格補償の判決を得るためには、以下の最低要件を満たす必要があります。
- 不動産の対価が正しく算定されていること。
- 不動産の対価を支払う意思と能力があること。
つまり、不動産の価格が正しく算出され「対価が支払える能力がある」ことが必須といえます。
共有者の所在が不明の場合
共有者の所在が不明な場合は、話し合いもできません。その場合は、以下の手順で対応しましょう。
- 手順1.共有者の所在を確認する
- 手順2.不在者財産管理人を選任する(※共有者の所在がわからない場合)
次項より、個別に解説します。
手順1.共有者の所在を確認する
まず、共有者の居場所を確認するために、「在者の住民票」「戸籍謄本」を取得する必要があります。
自身で住民票を取得できない場合は、弁護士に依頼しましょう。住民票から相手の現在の居場所がわかった場合は、相手に連絡して共有持分の贈与や購入について相談する……、という流れです。
手順2.不在者財産管理人を選任する(※共有者の所在がわからない場合)
住民票を取得しても相手方の所在がわからない場合は、裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。 不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を管理する人のこと。
不動産の所有者が行方不明のままだと、不在者は不動産を放置することで損害を被る可能性があります。さらに、必要手続きを進められずに、利害関係者に迷惑をかけてしまうケースもあるでしょう
そのため、不在者財産管理人には、財産の管理や保護、手続きを代行してもらう必要があるのです。共有持分も財産の一種であるため、不在者財産管理人は、共有持分を管理し、必要に応じて売却するために任命できます。
売却には裁判所の許可が必要
不在者財産管理人は、「本人(不在者)の利益」のために財産を管理しますので、管理人が勝手に財産を処分することはできません。
無償の贈与は本人に損害を与えるので当然認められませんし、売却が本人の利益にならない場合も実行不可能です。
不在者管理人が共有持分を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要です。
ただし、不在者管理人に対して分割訴訟を提起し、裁判所に価格賠償の判決を出してもらうことで、家庭裁判所の許可を得ずに共有持分を買い取れます。
まずは不在者財産管理人と共有持分の買い取りについて話し合ったうえで、「合意が得られない」「家庭裁判所の許可が得られない」という場合は、共有物分割訴訟を提起する流れがいいでしょう。
不在者財産管理人を選任するための手続き
不在者財産管理人を選任するためには、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任申立書」を提出する必要があります。管轄裁判所は、行方不明の共有者の最後の住所地の家庭裁判所です。
手続きの手順は下記を参照してください。裁判所 – Courts in Japanのホームページで閲覧できる「不在者財産管理人選任」のページもあわせて参照しましょう。
申立書を提出してから選任されるまでには2~3ヶ月かかります。
その後、不動産を売却するために家庭裁判所の許可を取得しなければなりませんので、実際に共有持分を購入できるタイミングはさらに遅くなる点には留意しましょう。
誰が不在者財産管理人になれるのか?
不在者財産管理人は、親族を含む一般人であれば、誰でも任命可能です。申立時に候補者を指名できますので、候補にしたい人がいれば、その旨を裁判所に伝えましょう。
ただし、共有持分を買いたい人が不在者財産管理人になってしまうと、「利益相反」となり、取引ができなくなりますので、他の人を指名する必要があります。
「候補者がいない」「候補者が不適切と判断された」といったケースでは、弁護士などの専門家が指名されます。弁護士を不在者財産管理人の候補者として指名してもらい、共有財産の購入を進めることは可能。
ただし、弁護士に手続きを依頼した場合には手数料がかかる点には留意が必要です。申立手続きだけであれば、10~30万円程度で済みますが、その後、管理を続ける限り、月々数万円の費用がかかり続けます。
相続財産管理人とは?
共有者が亡くなると、その相続人が共有持分を相続することになりますが、通常は相続人と共有持分の購入を協議することができます。 しかし、共有者に「相続人がいない」というケースも有り得るでしょう。
このような場合に、共有者が故人の共有持分を取得するためには、「相続財産管理人」を選任する必要があります。
相続財産管理人とは、相続人がいない場合に、相続した財産を管理する人のこと。
「債権者や受遺者への支払い」「相続人の捜索」「内縁の親族など、特別な親族への財産の分配」などを行います。相続人がいないことが確定すると、残った財産を国に帰属させてその役割を終えます。
民法では、不動産の共有者が死亡して相続人がいない場合、その共有持分は他の共有者に移転します。
ただし、死亡時に権利が自然に移転されるわけではなく、相続財産管理人が選任され、財産が清算された後に移転される点は把握しておきましょう。
そのため、不動産の共有者が死亡し、相続人がいない場合は、早急に相続財産管理人の選任を依頼する必要があります。
相続財産管理人の任命方法
相続財産管理人の選任は、被相続人の最後の居住地の家庭裁判所に申請します。手続きの方法については、裁判所 – Courts in Japanの「相続財産管理人の選任」のページも参照しましょう。
なお、相続財産管理人選任の申立てから選任されるまで、約2~3ヶ月かかります。その後、清算手続きを行う必要があるため、遺産の分配を取得するまでに1年程度かかることも珍しくありません。
遺産管理人を任命するには、多くの書類作成と時間がかかります。スムーズに手続きを進めるためには、弁護士への依頼も必要でしょう。
まとめ
共有者から持分を取得したい場合は、まず共有者と話し合うことから始める必要があります。その後、共有関係を解消したい場合は、贈与か売ってもらう。もしくは共有者と協力して不動産を売却するという選択肢があります。
合意に至らない場合は、分割訴訟することもできます。しかし、手続きが面倒な場合は、自分の持分を売却してしまうことで、面倒な共有関係を解消することも可能。意義のある判断をするためにも、一度共有持分の専門家に相談してみましょう。
本ブログで情報発信を行っている当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり物件の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供しています。
共有持分であっても最短1日の買取が可能で、法的な手続きについては丸投げしていただけます。共有持分にお悩みの方は、ぜひ下記よりご相談ください。