共有持分の不動産は所有しているだけでは各種支出がかさむ厄介な存在であるため、早期売却を目指す方も少なくありません。
一般的に、不動産の売却は、多くの税金の支払いが伴います。それは共有持分でも例外ではなく、さまざまな税金が課税されます。
この記事では、共有持分の売却時に発生する税金の詳細と計算方法、そして税金を軽減するための控除や特例について説明します。売却を検討されている共有持分オーナーの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
共有持分を売却する際の3つの方法
共有持分を売却する際には、以下のような選択肢があります。
- ①:自分の持分のみ売却する
- ②:共有者全員で売却する
- ③:分筆して売却する(※土地の場合のみ)
以下より、それぞれについてみていきましょう。
①:自分の持分のみ売却する
共有持分については、自分だけの共有持分を売却する選択肢が存在します。もし共有持分そのものを売却しようとするなら、自分だけではなく、他の全ての共有者の同意が必須となります。
しかし、自分だけの持分を売却する場合には、他の所有者に確認する必要はありません。
一方で、共有持分の一部を取得しても、不動産全体を自由に扱えるわけではない点には留意が必要。
共有持分を高く買い取ってもらうためには、共有持分専門の買取業者に相談しましょう専門の業者であれば共有持分についての知識が豊富で、高額査定が期待できます。
②:共有者全員で売却する
自分だけの持分だけでなく、共有持分全体を売却する選択肢もあります。すべての共有者が売却に同意し承諾すれば、自分だけの持分に関わらず、通常の不動産と同じように売却できます。
さらに、共有持分の売却後は、各自の共有持分に応じた金額が配分されます。全ての共有者が持分に見合った現金を得るだけでなく、全ての共有者が一緒に取引を行うことで予期せぬトラブルに遭遇するリスクが減少するでしょう。
ただし、この方法の利用は全ての共有者の意見が一致していることが前提となります。共有者が一人でも売却に反対すれば、売却ができない点については、把握しておかなければなりません。
③:分筆して売却する(※土地の場合のみ)
共有持分の場合には、「分筆」して売却する方法も存在します。分筆とは、1つの土地を登記簿上で2つ以上の土地に分ける手法を指します。
この手法を利用すると、分割された土地それぞれに新しい地番が付けられ、各地の独立した土地として登記簿上に登録されます。
その結果、それぞれの土地に1人ずつ代表者(所有者)をつけることが可能となるのです。
共有持分を売却した際に発生する税金とは?
共有持分を売却した場合、次のような税金が発生します。
- 譲渡所得税・住民税
- 登録免許税
- 印紙税
以下より、個別に解説します。
譲渡所得税・住民税
共有持分の売却によって発生する税金は、譲渡所得税と住民税となります。売却した人は、売却した年の翌年に確定申告を行う必要があります。
譲渡所得税は、不動産の所有期間によって税率が変わり、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つがあります。売却した年の1月1日時点での所有期間が基準となるため、注意が必要です。以下にその税率を示します。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
短期譲渡所得(5年以内) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得(5年超) | 15% | 5% | 0.32% | 20.32% |
登録免許税
登録免許税は、登記にかかる手数料のような税金であり、登記申請の際に法務局に支払う必要があります。
金額は「不動産の固定資産税評価額 × 登録免許税率」で算出されます。共有持分移転登記の場合、持分割合も計算に含まれるため、注意が必要。
登録免許税率は下記のとおりです。
相続人による相続の場合 | 4% |
---|---|
贈与の場合 | 2% |
遺贈の場合 | 2% |
離婚による財産分与の場合 | 2% |
印紙税
印紙税は不動産売却に際して使用する売買契約書に課税される税金で、契約書に購入した収入印紙を貼り付けて納税します。印紙税は物件の取引金額によって額が変わることが特徴。
以下にその詳細を示します。
契約金額 | 印紙代 |
1万円未満 | 非課税 |
1〜10万円 | 200円 |
10〜50万円 | 400円 |
50〜100万円 | 1,000円 |
100〜500万円 | 2,000円 |
500〜1,000万円 | 1万円 |
1,000〜5,000万円 | 2万円 |
5,000万〜1億円 | 6万円 |
1億〜5億円 | 10万円 |
5億〜10億円 | 20万円 |
10億〜50億円 | 40万円 |
50億〜 | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
共有持分を売却する際、契約金額が1,000万円を超えるケースは少ないでしょう。したがって、「印紙税はそんなにかからない」と理解しても問題ありません。
共有持分の売却で課税される税金の計算方法
共有持分の売却した場合に課税される税額は、以下の手順で計算しましょう。
- 手順1.譲渡所得額の計算
- 手順2.課税額の算出
- 手順3.控除・特例の適用
各手順について、個別に解説します。
手順1.譲渡所得額の計算
まずは、共有持分を売却したときに発生する譲渡所得を計算します。譲渡所得は、売却によって得られた利益であり、以下の計算式で算出します。
- 譲渡所得=売却金額-(取得費用+売却費用)
取得費用とは、売却した不動産を取得したときにかかったコスト。不動産購入時の契約書などが残っていれば、それをもとに取得費用を計算できます。
一方、相続した不動産や何十年も前に購入した不動産で、購入時の資料が残っていない場合もあるでしょう。
そのような場合には、売却金額の5%を取得費として譲渡所得税を計算できます。取得費が売却代金の5%を下回る場合でも、取得費を売却代金の5%として譲渡所得税を計算可能です。
売却費用は売却時にかかった費用の合計額で、以下の費用が含まれます。
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 売主が負担した印紙税
- 測量費用
- 更地にするための解体費用
なお、抵当権抹消登記にかかる登録免許税は売却に直接関わらないため、売却費用には含めません。
手順2.課税額の算出
譲渡所得を計算したら、不動産の所有期間に応じた税率を掛けて譲渡所得税と住民税を計算します。
譲渡所得税の計算時には、下記の点に注意しましょう。
- 2037年までは復興特別所得税がかかる。
- 不動産の所有期間は、不動産を売却した年の1月1日時点で5年を超えているかどうかで決まる。
- 相続した不動産を売却する際には相続時点ではなく、故人が取得した日が所有期間の起算点になる。
手順3.控除・特例の適用
不動産を売却すると、売却目的や不動産の種類に応じて譲渡所得税の控除や特例が適用される場合があります。具体的には、以下のような控除や特例があります。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 10年以上所有した居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
- 住民税の軽減特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
- 相続空き家の3,000万円特別控除
共有持分を売却する際には、譲渡所得税や住民税を節税するためのこれらの控除や特例を利用できる可能性があります。
各控除や特例にはそれぞれ適用条件が設けられていますので、売却の状況や不動産の種類に応じて適用できる制度を確認しましょう。
共有持分を売却した後の確定申告
共有持分を売却し、譲渡所得税が発生したときには確定申告が必要です。売却時の確定申告は、共有持分の名義者ごとにしなければならないのでご注意ください。
確定申告は誰が行う?
不動産の共有持分売却時には、全共有持分人、つまり譲渡所得税が発生するすべての人が確定申告を行う必要があります。全名義人で不動産を一括売却する場合も同様です。
確定申告には期限はある?
譲渡所得税の確定申告期限は売却年の翌年の2月16日から3月15日までと定められています。申告期限を逃すと延滞税が発生するため、納税期限も同様に3月15日までです。
共有持分の売却時の注意点
共有持分を売却した際には、税金関係で以下のような注意点が存在します。
- 3,000万円特別控除の適用範囲について
- 譲渡してからの売却について
次項より、それぞれについて個別に解説します。
3,000万円特別控除の適用範囲について
共有持分売却時に、最大3,000万円までの譲渡所得から控除できる特例「3,000万円特別控除」が存在します。
これは共有持分者一人ひとりに適用可能。ただし、建物の売却にのみ適用され、土地の所有者には適用できません。
譲渡してからの売却について
共有持分売却は全員の承諾を必要とし、手続きが複雑になることが多々あります。そのため、手間を省くために共有持分を一人に譲渡し、その後売却するという手法が考えられますが、この場合、贈与税の発生が問題となります。
したがって、共有持分売却については専門家の意見を求めるようにしましょう。
まとめ
共有持分を売却するときには、譲渡所得税や印紙税などが発生します。売却の状況や不動産の種類によっては、税金を軽減するための控除や特例を利用できる場合もありますので、合わせて活用することで、手残りの利益を多くできます。
ただし、不動産売却は複雑で、節税策を適用するには専門的な知識が必要。そのため、具体的な売却計画を立てる前に、不動産や税務に詳しい専門家に相談しましょう。
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