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家族間で相続トラブルに!内容別のアプローチ方法を詳しく紹介

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親が亡くなった後、遺産の分配方法や金額をめぐって兄弟姉妹が対立するようなケースでは、家族関係の崩壊や長期にわたる裁判に発展するような問題が発生します。

その際に重要となるのが相続トラブルへの適切な対応です。相続トラブルとは、遺産相続の際に発生する家族間の争いのことで、どの家族にも起こりうる問題です。

相続トラブルを放置すると、家族関係が修復不可能なほど悪化したり、多額の費用と時間を要する裁判に発展したりするリスクがあります。

そのため、相続トラブルの特徴や発生要因、予防方法、解決ステップについて事前に知っておくことが非常に重要です。

そこで本記事では、相続トラブルの全体像を解説し、トラブルを未然に防ぐための具体的な方法や、万がいちトラブルが発生した場合の効果的な対処法を詳しく説明します。

相続トラブルの特徴と発生要因

相続トラブルは、多くの人が「他人ごと」だと思いがちですが、実際にはどの家族にも起こりうる問題です。

相続トラブルは家族関係を崩壊させる可能性があり、その影響は長期にわたるケースが多々あります。そのため、相続トラブルの特徴と発生要因を理解し、事前に対策を講じることが重要です。

相続トラブルはどの家族にも起こり得る

相続トラブルは、一般的に想像されるよりもずっと身近な問題です。令和3年『司法統計年報』によると、裁判所に持ち込まれた遺産分割の事案のうち、遺産総額が1,000万円以下のケースが全体の約33%を占めています。

さらに、1,000〜5,000万円以下のケースを合わせると、全体の約77%に達します。

これは、決して裕福な家庭だけの問題ではないことを示しています。相続トラブルの原因は、金銭的な問題だけでなく、遺産への思い入れの差や相続人の立場の違いなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。

例えば、遺産となった自宅をめぐって、換金を望む相続人と思い出の詰まった家を守りたい相続人が対立するケースもあります。また、被相続人の介護に尽くした相続人と、あまり関わりを持たなかった相続人との間で不公平感が生じることもあるでしょう。

よくある相続トラブルの10のパターン

相続トラブルにはさまざまなパターンがありますが、特に頻繁に見られる10のパターンを以下に示します。

これらのパターンを理解することで、自分の状況を客観的に把握し、適切な対策を講じられます。

  • 兄弟姉妹間で対立になった
  • 遺産が実家の不動産のみである
  • 遺産に複数の不動産が含まれる
  • 介護の負担が特定の相続人に偏っていた
  • 高額な生前贈与が行われていた
  • 特定の相続人が被相続人の財産を管理していた
  • 不公平な内容の遺言書が残されていた
  • 前婚の子どもや認知された子どもが相続人になっている
  • 被相続人が事業を営んでいた
  • 内縁の配偶者がいる

これらのパターンは、それぞれ固有の問題を抱えており、解決に向けてはケースごとに適切なアプローチが必要となります。

相続トラブルを予防する5つの方法

相続トラブルは、一度発生すると解決に時間と労力がかかり、家族関係を損なう可能性があります。

そのため、事前の予防策を講じることが非常に重要です。ここでは、相続トラブルを予防するための5つの効果的な方法を紹介します。

  • 方法①:家族でしっかり話し合う
  • 方法②:公正証書遺言を作成する
  • 方法③:家族信託を活用する
  • 方法④:成年後見制度を利用する
  • 方法⑤:専門家に早めに相談する

それぞれ個別にみていきましょう。

方法①:家族でしっかり話し合う

相続トラブルを予防する上で基本となるのは、家族でしっかりと話し合うことです。被相続人の意思や希望、遺産の内容、財産の管理方法などについて、オープンに話し合う機会を設ける必要があります。

特に、年末年始などの家族が集まる機会を利用して、相続に関する話題を少しずつ進めていくのがよいでしょう。

ただし、相続の話題は子どもから親に切り出しにくいもの。まずは日常的なコミュニケーションを大切にし、身近な話題から徐々に相続に関する話を進めていくことをおすすめします。

また、親子で一緒に終活や資産運用のセミナーに参加するのも、相続に関する問題意識を共有するきっかけになります。家族間で十分な対話を重ねることで、将来的な相続トラブルのリスクを大きく減らせるでしょう。

方法②:公正証書遺言を作成する

相続トラブルを予防する上で、遺言書の作成は非常に効果的な方法です。特に、公正証書遺言の作成をおすすめします。

公正証書遺言は、公証人の関与のもとで作成されるため、形式的な不備による無効のリスクが低く、遺言の内容を確実に実現できる可能性が高くなります。ただし、遺言書の内容があまりに不公平な場合、遺留分を侵害してトラブルの原因となる可能性があります。

そのため、遺言書の内容を検討する際は、相続人全員の立場を考慮し、できるだけ公平な内容になるよう心がけることが大切です。

また、遺言書の作成後も、定期的に内容を見直し、必要に応じて修正することをおすすめします。家族構成や財産状況の変化に応じて、遺言内容を適切に更新することで、より確実に相続トラブルを予防できるでしょう。

方法③:家族信託を活用する

家族信託(民事信託)は、相続トラブルを予防する新しい方法として注目されています。家族信託を利用すると、被相続人の生前から死後にかけての財産管理方法や、死後の財産帰属先を柔軟に設定することができます。

例えば、認知症になった場合の財産管理や、相続後の財産の管理・処分方法などを事前に決めておくことができます。

これにより、相続発生時のトラブルリスクを大幅に軽減できます。また、家族信託は遺言よりも柔軟な設計が可能で、長期的な視点での財産管理が可能になります。

ただし、家族信託の設定には専門的な知識が必要なため、信頼できる専門家のサポートを受けながら進めましょう。

家族信託は比較的新しい制度のため、その仕組みや効果について十分に理解した上で活用することをおすすめします。

方法④:成年後見制度を利用する

認知症などにより判断能力が低下した場合、適切な財産管理ができなくなる可能性があります。そのような事態に備えて、成年後見制度の利用を検討することをおすすめします。

成年後見制度には、判断能力が低下する前に利用する任意後見制度と、すでに判断能力が低下した後に利用する法定後見制度があります。

特に、任意後見制度は本人の意思を尊重した財産管理が可能なため、相続トラブルの予防に効果的です。成年後見制度を利用することで、認知症などになった場合でも、本人の意思を尊重しつつ適切な財産管理を行えます。

これにより、相続時のトラブルリスクを軽減できるだけでなく、本人の生活の質も守ることができます。ただし、成年後見制度の利用には手続きや費用がかかるため、家族で十分に話し合い、専門家のアドバイスを受けながら進めることが大切です。

方法⑤:専門家に早めに相談する

相続トラブルを予防する上で、専門家に早めに相談することは非常に大切です。相続に詳しい弁護士や税理士、司法書士などの専門家は、各家庭の状況に応じた最適な解決策を提案してくれます。

例えば、遺言書の作成や家族信託の設定、成年後見制度の利用など、具体的なサポートを受けることができます。また、専門家に相談することで、自分たちでは気づかなかった潜在的なリスクを洗い出し、事前に対策を講じることができます。

特に、複雑な家族関係や財産状況がある場合は、専門家のアドバイスが不可欠です。専門家に相談する際は、相続に関する実績や経験が豊富な人を選ぶことが重要です。

また、複数の専門家に相談して比較検討することも有効です。早い段階で専門家に相談することで、将来的な相続トラブルのリスクを大きく軽減することができます。

相続トラブル解決に向けた基本的なステップ

もし、相続トラブルが起きてしまってこれから解決したいと考えるなら、以下の5つのステップで解決を図りましょう。

  • STEP1:冷静に状況を把握する
  • STEP2:法定相続分を確認する
  • STEP3:話し合いの場を設ける
  • STEP4:専門家に相談する
  • STEP5:調停・審判の申し立てを検討する

次項より、詳しく解説します。

STEP1:冷静に状況を把握する

相続トラブルが発生した際、まず最初に行うべきは状況を冷静に把握することです。感情的になりがちですが、できるだけ客観的な視点を持つよう心がけましょう。具体的には、相続財産の内容や金額、相続人の範囲、各相続人の主張や要望などを整理します。

また、被相続人の生前の意思や、遺言書の有無なども確認しましょう。この段階で重要なのは、自分の主張を押し通そうとするのではなく、他の相続人の立場や気持ちも理解しようと努めることも大切です。

状況を正確に把握することで、今後の話し合いの基礎となる情報が得られます。また、この過程で気づかなかった問題点が浮かび上がることもあります。状況把握のために必要な書類や情報を集め、整理することも忘れずに行いましょう。

STEP2:法定相続分を確認する

状況を把握したら、次に法定相続分を確認します。法定相続分とは、法律で定められた相続人ごとの相続割合のことです。

例えば、配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者が2分の1、子どもたちで2分の1を均等に分けることになります。法定相続分を知ることで、各相続人が最低限受け取れる遺産の割合が分かります。

ただし、実際の遺産分割では必ずしも法定相続分通りにならないこともあります。寄与分や特別受益などの要素も考慮する必要があるからです。

しかし、法定相続分を基準として話し合いを進めることで、より公平な遺産分割の方向性を見出しやすくなります。また、法定相続分を確認することで、自分の権利を正しく理解し、過度な要求や譲歩を避けることができます。

STEP3:話し合いの場を設ける

法定相続分を確認したら、次は相続人全員で話し合いの場を設けます。この話し合いは「遺産分割協議」と呼ばれ、相続トラブルを回避する上では非常に重要。

話し合いの際は、中立的な場所を選び、全ての相続人が参加できる日程を調整することが大切です。

話し合いの進行役を決めておくのも良いでしょう。話し合いでは、各相続人の要望や主張を丁寧に聞き、互いの立場を理解し合うことが重要です。感情的にならず、冷静に議論することを心がけましょう。

また、話し合いの内容は必ず記録に残し、後々の確認ができるようにしておきます。一度の話し合いで結論が出ないこともありますので、複数回の話し合いを想定して進めることをおすすめします。

粘り強く話し合いを続けることで、相互理解が深まり、合意に至る可能性が高まります。

STEP4:専門家に相談する

話し合いで解決の糸口が見えない場合や、複雑な問題がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。相続に詳しい弁護士や税理士、司法書士などの専門家は、客観的な立場から適切なアドバイス・対応をしてくれます。

専門家に相談することで、法律的な観点からの解決策や、税金面での最適な方法などを知ることができます。また、専門家が間に入ることで、感情的になりがちな相続人同士の対話を冷静に進められる可能性も高まります。専門家を選ぶ際は、相続問題の解決実績が豊富な人を選ぶことが重要です。

また、複数の専門家に相談して比較検討することも有効です。専門家への相談は費用がかかりますが、長期的に見れば、トラブルの早期解決や適切な遺産分割につながり、結果的にコストを抑えられる可能性があります。

STEP5:調停・審判の申し立てを検討する

話し合いや専門家への相談でも解決に至らない場合は、家庭裁判所での調停や審判の申し立てを検討します。

調停は、裁判所の調停委員を介して話し合いを進める制度です。中立的な第三者が入ることで、より冷静で建設的な話し合いができる可能性があります。調停で合意に至らない場合は審判に移行します。審判では、裁判官が法律に基づいて判断を下します。

調停や審判の申し立ては、相続開始から10年以内であれば可能です。ただし、調停や審判は時間とコストがかかるため、できるだけ当事者間の話し合いでの解決を図りましょう。

調停や審判を検討する際は、弁護士に相談し、手続きや見通しについてアドバイスを受けることをおすすめします。

また、調停や審判の結果に不服がある場合は、さらに訴訟を起こすこともできますが、家族関係の修復が難しくなる可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

トラブルの内容別解決アプローチ

相続トラブルは、その内容によって適切な解決方法が異なります。ここでは、よくある相続トラブルのパターンごとに、効果的な解決アプローチを解説します。

遺産分割で揉めている場合の対処法

遺産分割で揉めている場合、まずは冷静に話し合いの場を設けることが大切です。各相続人の要望や事情をよく聞き、互いの立場を理解し合うことから始めましょう。

話し合いの際は、法定相続分を基準としつつ、各相続人の寄与度や生活状況なども考慮に入れます。

具体的な対処法としては、以下のようなものがあります。

  • 遺産の評価を専門家に依頼し、客観的な価値を把握する
  • 代償分割や換価分割など、柔軟な分割方法を検討する
  • 第三者の仲介者(専門家など)を立てて、中立的な立場から調整を図る

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での調停を検討します。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、より公平な解決策を見出すサポートをしてくれます。

遺言書の有効性を争う場合の対応策

遺言書の有効性を争う場合、まずは遺言書の形式や内容を専門家に確認してもらうことが重要です。遺言書が無効となる主な理由には、遺言能力の欠如、遺言の方式違反、遺留分侵害などがあります。

対応策としては、以下のようなアプローチが考えられます。

  • 遺言書作成時の状況や被相続人の判断能力に関する証拠を収集する
  • 遺留分侵害がある場合は、遺留分減殺請求を検討する
  • 他の相続人と話し合い、遺言の内容を尊重しつつ調整を図る

話し合いで解決できない場合は、「遺言無効確認訴訟」を提起することも選択肢の一つです。ただし、訴訟は時間とコストがかかるため、慎重に検討する必要があります。

寄与分や特別受益が問題になっている場合の解決方法

「寄与分(被相続人の財産維持・増加に貢献した分)」「特別受益(生前贈与や遺贈を受けた分)」が問題になる場合、客観的な事実関係の確認が重要です。

解決方法としては、以下のようなアプローチがあります。

  • 寄与分や特別受益の具体的な内容と金額を明確にする
  • 関係する証拠書類(介護記録、贈与契約書など)を収集する
  • 他の相続人と話し合い、公平性を確保しつつ調整を図る

話し合いで解決できない場合は、「寄与分を定める処分の申立て」や「特別受益の持ち戻し計算」を家庭裁判所に求めることも可能です。

相続人の一部が連絡に応じない場合の対策

相続人の一部が連絡に応じない場合、遺産分割協議を進めることが困難になります。このような状況では、以下の対策を講じることが効果的です。

  • 内容証明郵便で連絡を取り、返答期限を設定する
  • 相続人の所在を調査し、直接訪問して話し合いを試みる
  • 弁護士や司法書士などの専門家に仲介を依頼する

これらの方法で連絡がつかない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討します。調停の呼び出しには法的な効力があるため、応じない相続人に対しても一定の強制力を持ちます。

弁護士に相談するメリットと依頼の進め方

相続問題は法律や税務の専門知識が必要な複雑な問題です。弁護士に相談することで、多くのメリットを得ることができます。ここでは、弁護士に相談するメリットと、相談から依頼までの流れを解説します。

弁護士に相談するメリット

法律の専門家である弁護士は、複雑な相続法を熟知しているため、的確なアドバイスを提供してくれます。

また、感情的になりがちな相続問題を客観的な視点で分析し、問題点を明確にしてくれるでしょう。弁護士が代理人として交渉することで、より有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

煩雑な法的手続きを弁護士が代行することで、自身の負担を大幅に軽減可能です。確かに依頼料はかかりますが、実生活への影響も考えると、懸命な判断といえます。

相続問題に強い弁護士の選び方

相続問題に強い弁護士を選ぶ際は、いくつかのポイントに注目することが重要です。まず、相続案件の取扱い実績が豊富であることが挙げられます。

次に、初回相談が無料か、料金体系が明確であることも大切です。また、コミュニケーション能力が高く、説明がわかりやすい弁護士を選ぶことで、スムーズな問題解決が期待できます。

依頼者の意向を尊重し、柔軟な対応ができる弁護士であることも重要なポイントです。複数の弁護士に相談して比較検討し、実際に会って話をすることで、自分に合った弁護士をみつけられるでしょう。

弁護士への依頼・報酬の支払いの流れ

弁護士への依頼は、まず初回相談で問題の概要を説明し、弁護士のアドバイスを受けることから始まります。この段階で、弁護士の対応や専門性を見極め、依頼するかどうかを慎重に判断します。

依頼を決定した場合は、委任契約を締結します。この際、依頼内容や費用について詳細に合意を交わします。

弁護士費用の相場は案件の複雑さや金額によって異なりますが、一般的に「着手金は20万円から50万円程度」「報酬金は成功報酬として得られた利益の10%から20%程度が目安」となります。

契約締結後、弁護士は具体的な対応を開始し、交渉や手続きを進めていきます。この過程では、定期的な進捗報告と方針相談を通じて、依頼者と弁護士が緊密に連携します。

問題解決後は、最終的な弁護士費用の精算を行い、依頼関係を終了します。円滑な問題解決には、この一連の流れを十分に理解し、弁護士との良好なコミュニケーションを維持することが不可欠です。

信頼関係に基づく協力体制が、結果的に相続問題の解決への近道となるでしょう。

まとめ

相続トラブルは、どの家族にも起こりうる問題です。

しかし、完全に予防することは難しく、実際にトラブルが発生してしまった場合は、冷静に状況を把握し、法定相続分を確認した上で、話し合いの場を設ける必要があります。

それでも解決が難しい場合は、専門家への相談や調停・審判の申し立てを検討しましょう。

相続問題は法律や税金の知識が必要な複雑な問題です。トラブルを予防したい場合も、すでにトラブルが発生している場合も、早めに専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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