共有持分【基礎知識】

共有持分の「換価分割」とは?メリット・デメリット、選択すべきケースを紹介

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不動産の共有状態が長期化すると、管理や処分をめぐって共有者間で深刻な対立が生じることがあります。その際に有効な解決策となり得るのが共有持分の換価分割です。

換価分割とは、共有不動産を売却し、その売却代金を各共有者の持分に応じて分配する方法です。この方法により、共有関係を完全に解消し、公平な分配を実現できる可能性があります。

しかし、換価分割にもさまざまな課題やリスクが存在します。そこで本記事では、共有持分の換価分割について、メリットやデメリット、具体的な手続き方法、よくあるトラブル例などを詳しく解説します。

共有持分の換価分割とは

共有持分の換価分割は、複数の所有者が持つ不動産を売却し、その売却代金を各所有者の持分に応じて分配する方法です。

不動産の共有状態を解消する際、所有者間での話し合いがまとまらないケースは少なくありません。そのような場合、換価分割が選択されるケースが存在します。

この方法の最大の特徴は、不動産そのものではなく、その金銭的価値を分配する点にあります。

そのほかの共有持分の分割方法

換価分割以外にも、共有持分を分割する方法は「現物分割」「代償分割」が存在します。

現物分割は、共有不動産を物理的に分割して各所有者に割り当てる方法です。例えば、広い土地を複数の区画に分けて、それぞれの所有者に与えるといったケースが該当します。

この方法は、不動産の形状や立地条件が適している場合に選択されます。ただし、建物の分割は技術的に困難なことが多く、主に土地の分割に用いられます。

一方、代償分割は、ある所有者が不動産全体を取得し、他の所有者に金銭で補償する方法です。例えば、3人で共有していた不動産を一人が取得し、残りの2人にそれぞれの持分相当額を支払うといった形です。

この方法は、特定の所有者が不動産の保有を強く希望し、かつ他の所有者への代償金支払いが可能な場合に適しています。

これらの方法と比較すると、換価分割は不動産を売却して現金化するため、より公平な分配が可能となる利点があります。しかし、各所有者の意向や不動産の性質によって最適な分割方法は異なるため、状況に応じた選択が求められます。

換価分割のメリット

換価分割は、共有不動産の問題を解決する上で、以下のようなメリットを持っています。

  • 公平な分配を行える
  • 共有関係が完全に解消される

それぞれ個別にみていきましょう。

公平な分配を行える

換価分割の最大の強みは、不動産の価値を金銭に換算して分配できる点です。これにより、各所有者の持分に応じた厳密な分配が可能となります。

例えば、ある不動産を3人で共有しており、持分比率が「5:3:2」だった場合、売却代金をその比率で分けることで、公平性を保つことができます。

この方法は、不動産の一部を物理的に分割することが難しい場合や、所有者間で不動産の利用方法について意見が分かれている場合に特に有効です。

金銭での分配により、各所有者は自由に資金を使用できるため、新たな投資や生活設計の幅が広がります。

共有関係が完全に解消される

換価分割のもう1つの大きなメリットは、共有関係を完全に解消できることです。不動産を売却し、その代金を分配することで、所有者間の権利関係が明確に終了します。これにより、将来的なトラブルの芽を摘むことができます。

共有関係が継続すると、不動産の管理や処分に関する意思決定が複雑になりがちです。例えば、修繕や改築、賃貸、売却などの判断において、所有者全員の合意が必要となることがあります。

換価分割によってこうした関係を解消することで、各所有者は独立した判断で自身の資産を管理できるようになります

換価分割のデメリット

換価分割には多くの利点がある一方で、注意すべきデメリットも存在します。具体的には、以下のとおり。

  • 不動産が喪失する
  • 市場価値以下での売却リスクがある

それぞれ個別に解説します。

不動産が喪失する

換価分割の最も明白なデメリットは、共有者全員が当該不動産を失うことです。長年住み慣れた家や先祖代々の土地など、思い入れのある不動産の場合、この喪失感は特に大きくなります。

例えば、幼少期から育った実家を売却する場合、金銭的な価値以上の精神的な損失を感じる人も少なくありません。

また、将来的な値上がりが期待できる不動産や、立地条件の良い物件を手放すことになれば、長期的な資産価値の観点からも不利益を被る可能性があります

市場価値以下での売却リスクがある

換価分割において、不動産が適正価格で売却されないリスクがあります。特に、裁判所の競売による売却の場合、市場価値を下回る価格で取引されるリスクが高まります。

通常の不動産取引では、売主は時間をかけて最適な買主を探すことができます。しかし、競売の場合、短期間で売却を完了させる必要があるため、十分な価格交渉の余地がありません。

また、競売物件には心理的な抵抗感を持つ買主も多いため、需要が限られがちです。

このような状況下では、本来の市場価値よりも大幅に安い価格で売却せざるを得ないケースも考えられます。

結果として、各所有者が得られる金額が期待を下回る可能性があり、財産的な損失につながる恐れがあるのです。

換価分割の2つの手続き方法

換価分割を実施する際、主に以下2つの手続き方法があります。

  • 方法①:任意売却
  • 方法②:競売

それぞれに特徴があり、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。共有者間の関係性や不動産の性質、市場の状況などを総合的に判断し、最適な方法を選びましょう。

方法①:任意売却

任意売却は、共有者全員の合意のもと、通常の不動産取引と同様の方法で物件を売却する方法です。この方法の最大の利点は、市場価格での売却が期待できることです。

具体的な流れとしては、まず不動産業者に依頼して物件の査定を行います。その後、広告を出して買主を募り、条件の良い買主と交渉を進めます。

売買契約が成立したら、所有権移転登記を行い、売却代金を受け取ります。最後に、その代金を共有者間で分配します。

任意売却なら、時間をかけて良い条件の買主を探すことができるため、競売に比べて高値での売却が可能です。また、売却にかかる費用も抑えられるため、共有者全員にとって有利な選択肢となることが多いでしょう。

方法②:競売

競売は、裁判所の介入のもと、公的機関によって不動産を売却する方法です。この方法は、共有者間で任意売却の合意が得られない場合や、迅速な売却が必要な場合に選択されます。

競売の手続きは、まず裁判所に競売の申立てを行うことから始まります。裁判所が競売開始決定を出すと、物件の評価が行われ、入札の公告がなされます。

入札では、最高価格で応札した人が買主となります。落札後、代金が納付されると所有権が移転し、その代金が共有者間で分配されます。

競売の特徴は、手続きが法的に保証されているため確実に売却できる点です。しかし、一般的に市場価格よりも低い価格で売却されるケースが多く、また手続きにかかる費用も高額になりがちです。

換価分割を選択すべきケース

換価分割は万能の解決策ではありません。状況に応じて、その適否を慎重に判断する必要があります。ここからは、換価分割を選択すべきケースとそうでないケースについてみていきましょう。

換価分割が適しているケース

換価分割が特に有効なのは、共有者間の関係が悪化しており、話し合いによる解決が困難な場合です。例えば、相続で受け継いだ不動産を巡って兄弟間で対立が続いているような状況が該当します。

また、不動産の物理的な分割が難しい場合も換価分割が適しています。マンションの一室や小規模な土地など、分割すると価値が著しく低下する物件がこれに当たります。

さらに、共有者の中に資金需要の高い人がいる場合、換価分割によって現金化することで問題解決につながることがあります。

換価分割が適していないケース

一方で、換価分割が適さないケースもあります。例えば、不動産に特別な思い入れがある場合です。

先祖代々受け継がれてきた土地や、長年住み慣れた家などを売却することに強い抵抗感がある場合、別の解決方法を検討すべきでしょう。

また、不動産市況が低迷している時期も、換価分割は得策ではありません。売却価格が本来の価値を大きく下回る可能性があるためです。さらに、共有者の中に現在その不動産に居住している人がいる場合、その人の生活基盤を奪うことになるため、慎重な判断が求められます。

換価分割に関してよくあるトラブル例

換価分割は、共有不動産の問題を解決する有効な手段ですが、しばしば新たなトラブルの源となることもあります。代表的なものとしては、以下が挙げられます。

  • トラブル例①:売却価格で揉める
  • トラブル例②:売却のタイミングで対立する
  • トラブル例③:売却後の税金問題で混乱する
  • トラブル例④:売却手続きの進め方で衝突する
  • トラブル例⑤:売却代金の分配方法で争う

次項より、詳しく解説します。

トラブル例①:売却価格で揉める

不動産の適正価格をめぐる意見の相違は、共有持分においては多く発生します。例えば「ある共有者は高値での売却を望み、別の共有者は迅速な売却を優先したいと考える」といったケースです。

このような場合、複数の不動産業者による査定を取り寄せ、客観的な市場価値を把握することが重要です。

また、それぞれの共有者の事情を考慮しつつ、中立的な第三者(例えば弁護士)を交えて話し合いを進めることで、合意形成がスムーズになる可能性があります。

トラブル例②:売却のタイミングで対立する

不動産市況の変動や個人的な事情により、売却のタイミングをめぐって意見が分かれることがあります。

例えば、今すぐに資金が必要な共有者と、将来の値上がりを期待して売却を先延ばしにしたい共有者の間で対立が生じかねません。

この問題に対しては、不動産専門家による市場分析や将来予測を参考にしつつ、各共有者の事情を考慮した妥協点を探ることが大切です。場合によっては、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取るなどの柔軟な解決策も検討に値するでしょう。

トラブル例③:売却後の税金問題で混乱する

不動産の売却に伴う税金の問題は、重要な検討事項です。特に、譲渡所得税住民税の取り扱いについて、共有者間で認識の相違があると、後々のトラブルにつながる可能性があります。

このトラブルを回避するため、売却前に税理士などの専門家に相談し、各共有者の税負担を明確にしておきましょう。また、売却代金の分配時に、必要な税金を事前に控除しておくなどの対策も有効です。

トラブル例④:売却手続きの進め方で衝突する

売却方法や仲介業者の選定、契約条件の詳細など、売却手続きの細かな点で意見が対立することがあります。

例えば、ある共有者は知り合いの不動産業者に依頼したいと考え、別の共有者は大手不動産会社を希望するといった具合です。

こうした対立を防ぐには、売却手続きの各段階で、全ての共有者が納得できる意思決定プロセスを事前に決めておくことが大切です。また、中立的な立場の専門家(例えば弁護士)を介して進めることで、より公平で円滑な手続きが可能になります。

トラブル例⑤:売却代金の分配方法で争う

売却代金の分配方法をめぐるトラブルも少なくありません。共有持分の割合が明確でない場合や、過去の固定資産税の支払いに差があるなど、単純な持分比率での分配が適切でないケースがあります。

この問題を解決するには、まず共有持分の割合を明確にすることが重要です。また、過去の経緯や各共有者の貢献度なども考慮に入れ、公平な分配方法を検討する必要があります。

場合によっては、専門家の助言を得ながら、詳細な分配計画を立てることも有効でしょう。

共有持分を素早く手放したいなら共有持分の買取専門業者にも相談しよう

以上のとおり、換価分割の手続きには時間がかかり、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。そのため「迅速に問題を解決したい」「他の共有者との交渉が難しい」には、共有持分の買取専門業者への相談も1つの選択肢となります。

訳あり物件に特化した専門業者は、複雑な権利関係や法的手続きに精通しており、迅速な対応が可能です。また、市場価値よりも低い価格での買取りとなる可能性はありますが、煩雑な手続きや他の共有者との交渉を避けられるメリットが存在します。

ただし、業者選びには慎重を期す必要があります。実績や評判を十分に調査し、複数の業者から見積もりを取るなどして、適切な判断をすることが大切です。また、売却前に法律の専門家に相談し、自身の権利を守りつつ取引を進めることをおすすめします。

共有持分の問題は複雑で、一筋縄ではいかないケースが多いものです。状況に応じて、専門家のアドバイスを受けながら、最適な解決方法を選択しましょう。

まとめ

共有持分の換価分割は、不動産の共有関係を解消する有効な手段の1つですが、その実行には慎重な検討が必要です。換価分割には公平な分配や共有関係の完全解消というメリットがある一方で、不動産の喪失や市場価値以下での売却リスクといったデメリットも存在します。

また、売却価格や手続きの進め方、代金の分配方法などをめぐって新たなトラブルが発生する可能性もあります。

そのため、換価分割を選択する際は、共有者全員の事情や不動産の特性、市場状況などを総合的に考慮することが重要です。

さらに、法律や税務の専門知識が必要となる場面も多いため、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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