共有持分【法律・税金】

公租公課とは?共有持分との関わりを徹底解説

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共有持分不動産の所有者が複数いる場合、固定資産税などの公租公課の支払いをめぐってさまざまな問題が発生することがあります。例えば、支払いの負担割合で意見が対立したり、一部の共有者が支払いを拒否したりするケースが存在します。

このような状況で重要となるのが、公租公課に関する正確な知識です。公租公課とは、国や地方公共団体に納める税金や負担金の総称で、共有持分不動産では特に固定資産税が問題になりやすいです。

本記事では、共有持分不動産における公租公課の基礎知識、よくあるトラブルとその対処法、負担軽減の方法などについて詳しく解説します。

公租公課とは

公租公課は、国や地方公共団体に納める金銭的負担の総称です。公租公課は「公租」「公課」の2つの要素から構成されています。

公租は主に税金を指し、所得税や法人税、固定資産税などが該当します。一方、公課は税金以外の公的負担金を意味し、健康保険料や各種証明書の発行費用などが含まれます。

共有持分における公租公課の特徴

共有持分不動産の公租公課には、いくつかの特徴があります。

最も重要なのは「共有者全員に納税義務があること」です。これは、不動産の所有形態が共有であっても、公租公課の負担は個々の共有者に及ぶということを意味します。

例えば、固定資産税の場合、共有者それぞれの持分に応じて税金を負担する必要があります。しかし、実務上は代表者が一括して納付し、後で他の共有者と精算するケースが多くみられます。

この方式には、納税の効率化というメリットがある一方で、共有者間のトラブルの種にもなり得るという側面があります。

また、共有持分不動産の公租公課には「連帯納付」という特殊な性質があります。これは、ある共有者が支払いを怠った場合、他の共有者がその分も含めて全額を支払う義務を負うという制度です。

この仕組みは、税収の確保という観点からは有効ですが、共有者にとってはリスクとなる可能性があります。

共有持分の固定資産税に関する基礎知識

共有持分不動産に関する公租公課の中で、最も一般的なものが固定資産税です。この税金は、土地や建物などの固定資産の所有者に課される地方税の一種。

共有持分不動産の場合、固定資産税の取り扱いには特有の注意点がありますので、詳しくみていきましょう

固定資産税の納税義務者は誰?

共有持分不動産の固定資産税における納税義務者は、原則として共有者全員です。

しかし、実際の納税通知書は代表者宛てに送付されるのが一般的。通常、代表者は共有者間の協議によって決定されますが、協議が整わない場合は自治体が指定することもあります。

代表者に選ばれた共有者は、納税通知書の受け取りや支払いの窓口となる重要な役割を担います。ただし、代表者であることが即座に全額の支払い義務を負うわけではありません。あくまでも各共有者の持分に応じた負担が原則となります。

代表者以外の共有者も、自身の持分に相当する税額を把握し、適切に負担する責任があります。そのため、共有者全員で納税通知書の内容を確認し、各自の負担額を明確にしておくことが望ましいでしょう。

固定資産税の計算方法と納付時期は?

固定資産税の計算方法は、固定資産の評価額に税率を乗じるという比較的シンプルな方式です。具体的には、以下の計算式に基づいて算出されます。

  • 固定資産税額 = 固定資産の評価額(課税標準額)× 1.4%(標準税率)

ここで注意すべきは、固定資産の評価額は3年ごとに見直されるという点です。地価の変動や建物の経年劣化などにより、評価額が変わる可能性があります。

納付時期に関しては、多くの自治体で年4回の分割納付方式を採用しています。一般的なスケジュールは次のとおりです。

  • 第1期:6月
  • 第2期:9月
  • 第3期:12月
  • 第4期:翌年2月

ただし、自治体によって多少の違いがあるため、居住地の自治体の規定を確認することが大切です。また、一括納付を選択すれば、第1期の納付期限までに全額を支払うこともできます。

共有持分不動産の場合、これらの納付スケジュールに従って代表者が一括で支払い、後日他の共有者と精算するケースが多くみられます。この方式を採用する場合は、共有者間で明確な取り決めを行い、トラブルを未然に防ぐことが重要です。

共有持分の公租公課に関してよくあるトラブル例

共有持分不動産の公租公課をめぐっては、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。具体的には、以下のようなものです。

  • トラブル①:負担割合の決定方法でもめる
  • トラブル②:代表者の役割と責任が決まらない
  • トラブル③:支払い拒否や滞納が発生する

それぞれ個別にみていきましょう。

トラブル例①:負担割合の決定方法でもめる

公租公課の負担割合をめぐるトラブルは、共有持分不動産において最も一般的な問題の1つです。原則として、各共有者は持分に応じて負担すべきですが、現実にはそう単純にいかないケースも少なくありません。

例えば、ある共有者が不動産を実際に使用していない場合、その共有者が「使っていないのだから支払う必要はない」と主張するケースがあります。しかし、法律上は使用の有無に関わらず、持分に応じた負担が求められます。

また、相続によって共有状態になった場合、被相続人が生前に負担していた割合をそのまま踏襲しようとする共有者と、法定相続分に応じた負担を求める共有者との間で対立が生じることもあります。

このようなトラブルを防ぐためには、共有者間で事前に明確な取り決めを行うことが重要です。可能であれば、書面で合意内容を残しておくことをおすすめします。

それでも合意に至らない場合は、弁護士などの専門家に相談し、適切な解決策を見出すことが望ましいでしょう。

トラブル例②:代表者の役割と責任が決まらない

共有持分不動産の公租公課に関する手続きでは、通常、共有者の中から代表者を選出します。しかし、この代表者の選出や役割分担をめぐってトラブルが発生することがあります。

代表者の主な役割は、納税通知書の受け取りや支払いの窓口となることです。

しかし、これらの業務には一定の負担が伴うため、誰も代表者になりたがらないという状況が生じかねません。特に、共有者間の関係が良好でない場合、この問題は深刻化する傾向にあります。

また、代表者に選ばれた共有者が、その立場を利用して独断で判断を下すケースも見られます。

例えば、他の共有者に相談せずに固定資産税の減額申請を行ったり、支払いスケジュールを変更したりするなどです。こうした行動は、他の共有者との信頼関係を損なう原因となります。

これらのトラブルを回避するためには、代表者の役割と権限を明確に定義し、全共有者の合意を得ておくことが重要です。また、定期的に代表者を交代する仕組みを設けるのも一案です。こうすることで、特定の共有者に負担が集中することを防ぎ、公平性を保つことができます。

トラブル例③:支払い拒否や滞納が発生する

公租公課の支払い拒否や滞納は、共有持分不動産において最も深刻なトラブルの1つです。これは単に金銭的な問題にとどまらず、法的なリスクや不動産の権利関係にも影響を及ぼす可能性があります。

支払い拒否の背景には、さまざまな理由があります。例えば、経済的な困難に直面している共有者や、不動産の利用状況に不満を持つ共有者が支払いを拒否するケースがあります。また、共有者間の対立が激化し、相手への嫌がらせとして支払いを拒否するという事態も起こり得ます。

滞納が続くと、延滞金が発生するだけでなく、最悪の場合、不動産の差し押さえにつながる可能性もあります。特に注意すべきは、共有持分不動産の場合、一部の共有者の滞納が他の共有者にも影響を及ぼす点です。これは「連帯納付」の原則に基づいています。

このようなトラブルを防ぐためには、まず共有者間で定期的に情報を共有し、支払い状況を確認し合うことが大切です。また、経済的な困難を抱える共有者がいる場合は、一時的な立て替え払いや分割払いの提案など、柔軟な対応を検討することも有効でしょう。

支払い拒否や滞納が長期化する場合は、法的な対応を検討する必要があります。具体的には、支払いを拒否する共有者に対して支払いを求める訴訟を起こしたり、最終的には共有物分割請求を行ったりすることも選択肢となります。

ただし、これらの法的手段は共有者間の関係を決定的に悪化させる可能性があるため、慎重に判断する必要があります。

共有持分の公租公課を軽減する方法

共有持分不動産の公租公課、特に固定資産税は所有者にとって大きな負担となることがあります。

しかし、適切な対策を講じることで、この負担を軽減できる可能性があります。ここでは、固定資産税の軽減措置の活用と、共有持分の売却や買取について詳しく解説します。

固定資産税の軽減措置を活用する

固定資産税には、一定の条件を満たした場合に適用される軽減措置があります。これらの制度を上手く活用することで、共有持分不動産の税負担を軽くすることができます。

代表的な軽減措置の1つに、住宅用地に対する課税標準の特例があります。この特例では、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)については、固定資産税評価額の6分の1を課税標準とします。

一般住宅用地(200㎡を超える部分)については、3分の1を課税標準とします。つまり、実質的に税額が大幅に軽減されるのです。

また、新築住宅に対する軽減措置もあります。一定の条件を満たす新築住宅では、新築後3年間(マンションの場合は5年間)、固定資産税が2分の1に減額されます。この措置は、共有持分不動産が新築の場合に特に有効です。

さらに、バリアフリー改修や省エネ改修を行った場合にも、一定期間固定資産税が減額される制度があります。共有者間で合意の上、このような改修を行うことで、税負担の軽減と同時に不動産の価値向上も図ることができます。

これらの軽減措置を適用するためには、適切な申請手続きが必要。申請の期限や必要書類は自治体によって異なる場合があるため、事前に確認することが重要です。

共有持分の売却や買取を実施する

公租公課の負担に耐えられない場合や、共有関係を解消したい場合は、共有持分の売却や買取を検討する価値があります。

共有持分の売却とは、自身の持分を第三者に売却することです。これにより、所有者としての地位から離れ、以後の公租公課の負担から解放されます。ただし、共有持分の売却は一般の不動産売却と比べて難しい面があります。

買主にとっては、他の共有者との関係や将来的な権利関係の不確実性などのリスクがあるためです。

一方、共有持分の買取とは、他の共有者が売却を希望する持分を購入することです。これにより、自身の持分を増やし、将来的に単独所有に近づけることができます。

特に、2人での共有状態の場合、一方が他方の持分を買い取ることで完全な単独所有となり、意思決定や管理が容易になります。

共有持分の売却や買取を検討する際は、不動産の評価額や将来的な利用計画、税金面での影響などを総合的に検討する必要があります。また、他の共有者との関係性も考慮に入れなければなりません。

共有持分の公租公課に関する法的諸問題

共有持分不動産の公租公課をめぐっては、さまざまな法的問題が生じる可能性があります。これらの問題は、共有者間の関係性だけでなく、第三者との関係にも影響を及ぼすケースも存在します。

1つの重要な法的問題は、共有者の1人が破産した場合の公租公課の扱いです。破産した共有者の持分は破産財団に組み込まれますが、その持分に対応する公租公課の支払い義務はどうなるのでしょうか。

破産法の規定により、破産管財人が破産財団の管理として公租公課を支払う場合もありますが、実際には他の共有者が負担せざるを得ないケースも少なくありません。

また、相続時の未払い公租公課の処理も複雑な問題となり得ます。被相続人が支払っていなかった公租公課は、原則として相続人が引き継ぐことになります。しかし、複数の相続人がいる場合、その負担をどのように分配するかで争いが生じることがあります。

さらに、共有持分の差押えや競売に関する問題も懸念されます。共有者の一人に債務があり、その持分が差し押さえられた場合、公租公課の支払いはどうなるのでしょうか。

また、差押えられた持分が競売にかけられた場合、新たな共有者との関係をどのように構築していくかも課題となります。

共有持分の公租公課に関するQ&A

共有持分不動産の公租公課に関しては、多くの疑問が寄せられます。ここでは、特に頻繁に聞かれる質問とその回答を紹介します。これらの情報は、共有持分不動産の所有者が直面する可能性のある問題への理解を深め、適切な対応を考える上で役立つでしょう。

共有名義不動産の固定資産税は誰が払うの?

共有名義不動産の固定資産税は、原則として共有者全員で支払う必要があります。各共有者は、自身の持分に応じた金額を負担することになります。

ただし、実務上は代表者を決めて一括で支払い、後日精算するケースが多く見られます。この方法には、納税手続きの簡素化というメリットがありますが、代表者の負担が大きくなる可能性も考えられます。

重要なのは、固定資産税の納税義務は持分の有無に関わらず、共有者全員にあるという点です。つまり、たとえ使用していない共有者であっても、その人の持分に応じた税金を支払う義務があります。

また、「連帯納付」の原則により、一部の共有者が支払いを怠った場合でも、他の共有者が全額を支払う義務を負う可能性があります。このため、共有者間で支払いに関する明確な取り決めを行い、定期的に支払い状況を確認し合うことが重要です。

共有者の一人が支払いを拒否した場合はどうすればいい?

共有者の一人が固定資産税の支払いを拒否するケースは珍しくありません。

このような状況に直面した場合、まず支払いを拒否している共有者と対話を試みることが大切です。拒否の理由を聞き、状況に応じて柔軟な対応を検討しましょう。例えば、一時的な経済的困難が原因であれば、分割払いを提案するなどの対応が考えられます。

対話で解決しない場合は、内容証明郵便で支払いを求める通知を送ることも1つの手段です。これにより、法的な手続きに移行する可能性があることを相手に認識させることができます。

それでも解決しない場合は、法的な手段を検討する必要があります。具体的には、支払いを求める訴訟を起こすことが考えられます。ただし、訴訟には時間とコストがかかるため、慎重に判断しなければなりません。

最終的な手段として、共有物分割請求を行うことも選択肢の1つです。これにより共有関係を解消し、問題のある共有者との関係を断ち切ることができます。ただし、この方法は他の共有者との関係も大きく変化させる可能性があるため、十分な検討が必要です。

公租公課の滞納によるリスクにはどのようなものがある?

公租公課、特に固定資産税の滞納は、さまざまなリスクを伴います。

まず、滞納が続くと延滞金が発生します。延滞金は日数に応じて増加していくため、長期間滞納すると本税以上の金額に膨れ上がることも珍しくありません。この延滞金も、共有者全員で負担しなければならない事態に陥る可能性が高いでしょう。

次に、滞納処分のリスクを考慮しなければなりません。滞納が一定期間続くと、自治体は財産の差し押さえに踏み切る場合があります。差し押さえの対象は不動産に限らず、預金や給与なども含まれます。

共有持分不動産の場合、一部の共有者の滞納であっても、不動産全体が差し押さえの対象となってしまうケースもあるのです。

また、滞納情報は信用情報として記録される傾向にあります。その結果、将来的に住宅ローンの審査や他の金融取引に悪影響を及ぼす恐れが懸念されます。

滞納が続くと、最終的には不動産の公売(競売)に至ることもあります。公売になれば不動産を失うだけでなく、売却金額が滞納額に満たない場合は、その差額を別途支払わなければならない事態に直面する可能性も否定できません。

まとめ

共有持分不動産の公租公課に関する問題は、適切な知識と対策があれば多くの場合回避できます。まず、共有者間で明確な取り決めを行い、定期的に情報を共有することが重要です。

また、固定資産税の軽減措置を積極的に活用したり、必要に応じて共有持分の売却や買取を検討したりすることで、負担を軽減できる可能性があります。

しかし、複雑な法的問題が絡む場合や、共有者間の対立が深刻化した場合は、個人で解決するのは困難です。

そのような状況では、弁護士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、適切な解決策を見出し、トラブルを最小限に抑えられるでしょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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