共有持分【基礎知識】

共有持分が競売にかけられた場合の対処法は?未然に防ぐ方法はある?

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「共有持分の競売」とは、共有不動産の一部の持分が強制的に売却される法的手続きです。共有状態で不動産を所有していると、他の共有者の経済状況の悪化による競売のリスクにさらされています。

共有持分が競売にかけられると、見知らぬ第三者と共有状態になったり、共有物分割請求訴訟を提起されたりする可能性があります。そのため、共有持分の競売について正しく理解し、適切な対処法を知っておくことが重要です。

本記事では、共有持分が競売にかけられるケース、そのリスク、競売前後の対処法について詳しく解説します。

不動産の競売(けいばい)とは

不動産の競売とは、裁判所が主導して不動産を強制的に売却する法的手続きです。主に、債務者が借金を返済できなくなった場合に、債権者が債権回収のために行います。競売には「強制競売」と「担保不動産競売」の2種類があります。

強制競売は、一般の債権者が債務名義に基づいて行う競売で、カードローンの滞納などが該当します。一方、担保不動産競売は、抵当権を持つ債権者が行う競売で、住宅ローンの滞納などが該当します。

競売にかけられると、通常の不動産取引よりも安価で売却される傾向があり、市場価格の5〜7割程度で取引されるのが通例。また、競売の申立てから実際に売却されるまでには数か月かかることが一般的です。

共有持分が競売にかけられるケース

共有持分が競売にかけられるのは大きくは次のケースです。

  • ケース①:共有者が自己持分を担保に借入をしていた
  • ケース②:住宅ローンを滞納した

以下より、詳しく解説します。

ケース①:共有者が自己持分を担保に借入をしていた

共有者の一人が自己の持分を担保に借入をしていた場合、その借入の返済が滞ると、担保となっている共有持分が競売にかけられる可能性があります。共有持分を担保にする場合、他の共有者の同意は必要ありません。

そのため、他の共有者が知らないうちに、共有者の一人が自己の持分を担保に借入をしていることもあります。

例えば、夫婦で共有している不動産で、夫が妻に知らせずに自分の持分を担保に借入をし、返済が滞った場合などが該当します。このような事態が発生すると、他の共有者にとっては寝耳に水の状況となり、突然、見知らぬ第三者と共有関係になる可能性が生じます。

そのため、共有者間で定期的に経済状況を確認し合うなど、事前の対策が重要です。

ケース②:住宅ローンを滞納した

住宅ローンを滞納した場合、共有不動産全体が競売にかけられる可能性があります。特に、夫婦で共同名義の不動産を購入し、ペアローンを組んでいる場合に注意が必要です。

ペアローンとは、夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを組む方法で、互いに連帯保証人になるケースが多々あります。

この場合、どちらか一方がローンの返済を滞納すると、その人の持分だけでなく、不動産全体が競売にかけられる恐れがあります。例えば、夫がローンを滞納した場合、妻が自分の分をきちんと返済していても、不動産全体が競売にかけられる可能性があります。

そのため、共有者同士で常に返済状況を確認し合い、一方が返済に困難を感じた場合は早めに対策を講じることが重要です。金融機関との交渉や任意売却の検討など、さまざまな選択肢を考える必要があります。

共有持分が競売にかけられた場合のリスク

では、共有持分が競売にかけられた場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。具体的には、以下のとおりです。

  • 第三者と共有状態になる可能性がある
  • 共有物分割請求訴訟を提起されかねない

次項より、詳しく解説します。

第三者と共有状態になる可能性がある

共有持分が競売にかけられると、その持分を不動産ブローカーなどの第三者が落札する可能性があります。この場合、残された共有者は見知らぬ第三者と不動産を共有することになります。

第三者との共有関係は、これまでの生活や不動産の利用に大きな支障をきたす恐れがあります。例えば、不動産の管理や処分に関する意思決定が困難になったり、新たな共有者から不当な要求をされたりする可能性があるのです。

特に、不動産ブローカーが落札した場合、高額での持分買取りを迫られたり、逆に安価での持分譲渡を要求されたりすることも考えられます。このような状況は、残された共有者にとって非常にストレスフルで、財産的にも不利益を被る可能性が高いでしょう。

共有物分割請求訴訟を提起されかねない

第三者が共有持分を取得した場合、その第三者から共有物分割請求訴訟を提起される可能性があります。共有物分割請求訴訟とは、共有関係の解消を目的とした法的手続きで、裁判所を通じて共有物の分割方法を決定します。

この訴訟が提起されると、残された共有者の意思に関わらず、不動産の分割や売却を強いられる可能性があります。

訴訟の結果、「現物分割」「代償分割」「競売」による換価分割のいずれかが命じられますが、多くの場合、競売による換価分割となります。これにより、不動産全体が競売にかけられ、市場価格よりも低い価格で売却される可能性が高くなります。

また、訴訟にかかる費用や時間的負担も大きいため、残された共有者にとっては大きなリスクとなります。

競売にかけられる前の対処法

ここからは、所有不動産が競売にかけられる前にとっておくべき、以下の対応方法について紹介します。

  • 債務者の債務を返済する
  • 任意売却の手続きをする
  • 自分が競売で落札する

それぞれ詳しく解説します。

債務者の債務を返済する

債務者の債務を返済する方法は、最も直接的で確実な対処法です。残された共有者が資金的に余裕がある場合、債務者の債務を肩代わりして返済することで、競売を回避できます。この方法のメリットは、現状の共有関係を維持できることです。

ただし、債務を肩代わりする際は、必ず書面で合意を交わし、将来的なトラブルを防ぐ必要があります。また、債務者の返済能力や今後の経済状況も十分に考慮する必要があります。

さらに、債権者との交渉により、一括返済ではなく分割払いの可能性を探ることも有効です。債権者にとっても、競売よりも確実に債権回収ができる可能性が高いため、交渉の余地は十分にあります。

任意売却の手続きをする

任意売却とは、債権者の同意を得て、競売にかけられる前に不動産を自主的に売却する方法です。

任意売却のメリットは、競売よりも高値で売却できる可能性が高いことです。前述のとおり、競売では市場価格の5〜7割程度で取引されることが多いですが、任意売却であれば市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。

また、売却までの時間も競売よりも短縮できる場合が多いです。

ただし、任意売却を行うためには、全ての共有者の同意が必要です。また、債権者との交渉も必要となります。任意売却を検討する際は、不動産専門家や弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

専門家のサポートにより、スムーズな売却手続きと、できる限り高値での売却を目指すことができます。

自分が競売で落札する

競売が避けられない場合、残された共有者自身が競売に参加し、対象となる共有持分を落札する方法があります。

この方法のメリットは、見知らぬ第三者との共有状態を避けられることです。また、競売価格は市場価格よりも低いことが多いため、比較的安価で持分を取得できる可能性があります。

ただし、この方法を選択する場合は、十分な資金力が必要です。また、競売は入札制のため、必ずしも落札できるとは限りません。さらに、競売手続きに関する知識や経験も必要となります。

そのため、この方法を検討する際も、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。専門家のアドバイスにより、適切な入札額の設定や手続きの進め方を決定することができます。

競売にかけられた後の対処法

一方で、競売にかけられてしまった場合は以下の対応をとりましょう。

  • 落札者の持分を買い取る
  • 自身の持分を専門業者に売却する
  • 共有物分割請求訴訟に備える

競売後の対応方法についても、詳しく解説します。

落札者の持分を買い取る

落札者の持分を買い取る方法は、元の共有状態を回復するための直接的な対処法です。この方法のメリットは、見知らぬ第三者との共有関係を解消し、不動産の管理や利用に関する自由度を取り戻せることです。

しかし、落札者が売却に応じるかどうかは不確実です。特に、不動産ブローカーが落札した場合、高額での買取りを要求されることがあります。交渉に際しては、不動産の市場価値や共有持分の特殊性を考慮した適正価格を提示することが重要です。

また、資金面での準備も必要となります。金融機関からの借入れや、親族からの援助なども検討するとよいでしょう。交渉が難航する場合は、弁護士を介して進めることで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

自身の持分を専門業者に売却する

自身の持分を専門業者に売却する方法は、共有関係から完全に離脱するための選択肢です。この方法なら、共有に関するトラブルから解放され、売却代金を得られます

共有持分は一般の不動産市場では売却が難しいですが、専門の買取業者であれば、適正価格での売却が可能。ただし、売却価格は通常の不動産よりも低くなる傾向があることに注意が必要です。

売却を検討する際は、複数の業者から査定を受け、条件を比較することをおすすめします。また、売却後の居住権や使用権についても確認が必要です。

特に、その不動産に居住している場合は、売却後の住まいの確保も考慮しなければなりません。売却の際は、税金面でのアドバイスも受けるとよいでしょう。

共有物分割請求訴訟に備える

新たな共有者から共有物分割請求訴訟を提起される可能性がある場合、事前に備えておくことが重要です。まず、不動産の評価額や自身の持分割合、不動産の使用状況などの情報を整理しておきましょう。

また、現物分割の可能性や、代償分割(他の共有者が持分を買い取る)の意思があるかどうかも検討しておく必要があります。訴訟が提起された場合の対応策として、弁護士との相談や依頼も考慮すべきです。

弁護士に依頼することで、法的な観点から最適な戦略を立てることができます。また、訴訟に備えて資金面での準備も必要です。

訴訟費用や、場合によっては不動産を買い取るための資金も考慮に入れておく必要があります。さらに、他の共有者との協力関係を築くことも重要です。共同で対応することで、より有利な立場で訴訟に臨むことができるでしょう。

まとめ

共有持分の競売は、共有者の一人の経済的困窮によって引き起こされる可能性のある深刻な問題です。競売が行われる前に、債務の返済や任意売却などの対策を講じることが重要です。

しかし、すでに競売が行われてしまった場合でも、落札者の持分を買い取ったり、自身の持分を売却したりするなどの対処法があります。これらの対応を適切に行うためには、法律や不動産取引に関する専門的な知識が必要となります。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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