不動産投資や事業拡大のために大型の融資を受けたい場合、単独の不動産では担保価値が不足するケースがあります。その際に有効な手段となるのが共同担保です。共同担保とは、1つの債権に対して複数の不動産を担保として設定する方法です。
これにより、融資額の増加や条件の改善が期待できますが、同時に複数の不動産が拘束されるリスクも伴います。
そこで本記事では、共同担保について、一般の方であっても知っておく必要がある知識について幅広く解説します。
目次
共同担保とは
共同担保とは、1つの債権に対して複数の不動産を担保として設定する方法です。例えば、住宅ローンを組む際に、購入する家だけでなく、すでに所有している別の不動産も一緒に担保として提供することがこれにあたります。
この仕組みでは、複数の不動産が法的に結びつけられ、1つの大きな担保として機能します。債務者が返済不能に陥った場合、債権者はこれらの不動産全てに対して権利を主張できます。つまり、単一の債務に対して、複数の不動産が「保証」の役割を果たすのです。
この方法により、借り手は単独の不動産では得られない融資額や条件を引き出せる可能性がある一方で、複数の資産が同時にリスクにさらされることになります。
一般的な担保との違い
一般的な担保では、「1つの債権に対して1つの不動産を担保」として設定します。例えば、住宅ローンを組む際に、購入する家のみを担保とするケースがこれに当たります。
これに対し、共同担保では複数の不動産が1つの債権に対する担保となり、通常の担保とは大きな違いがあります。
まず、担保の価値が増加します。複数の不動産を合わせることで、単独の不動産よりも高い担保価値を提供できます。
共有不動産の担保は、リスクの分散も図れます。特定の不動産の価値が下落しても、他の不動産でカバーできる可能性があります。
しかし、同時に全ての担保不動産が債権の対象となるため、債務不履行時のリスクも大きくなる点には留意が必要です。また、個別の不動産の処分が制限されるなど、柔軟性の面では一般的な担保よりも制約が多くなる傾向があります。
共同担保が必要となるケース
共同担保はさまざまな状況で活用されますが、特に以下のようなケースで必要性が高まります。
- ケース①:単独の不動産では担保価値が不足する場合
- ケース②:より有利な融資条件を得たい場合
- ケース③:複数の不動産を一括で活用したい場合
- ケース④:事業拡大のための大型融資を受ける場合
それぞれのケースについて、具体的な例を交えながら解説していきます。
ケース①:単独の不動産では担保価値が不足する場合
不動産投資や事業拡大など、大型の資金調達を行う際に、単独の不動産では希望する融資額に対して担保価値が不足することがあります。このような場合、共同担保の設定が有効な解決策となります。
例えば、5,000万円の融資を希望しているが、所有している不動産の評価額が3,000万円しかない場合を考えてみましょう。この状況で、別に所有している2,000万円相当の不動産を追加で担保として提供することで、希望額に近い融資を受けられる可能性が高まります。
ただし、この方法を選択する際は、複数の不動産が同時にリスクにさらされることを十分に理解し、慎重に検討する必要があります。
ケース②:より有利な融資条件を得たい場合
共同担保は、より有利な融資条件を引き出すための戦略としても活用されます。金融機関にとっては、複数の不動産が担保として提供されることでリスクが分散され、より安全な融資と判断される可能性が高まります。
これにより、借り手側は金利の引き下げや返済期間の延長など、より好ましい条件での融資を受けられる可能性が出てきます。
例えば、単独の不動産での融資では年利2.5%だったものが、共同担保を設定することで2.0%に引き下げられるといったケースがあります。
ただし、有利な条件と引き換えに複数の不動産が拘束されるリスクも考慮しなければなりません。長期的な資産運用計画を踏まえた上で判断することが重要です。
ケース③:複数の不動産を一括で活用したい場合
複数の不動産を所有している場合、「それらを効率的に活用して資金調達を行いたい」と考えるケースがあります。共同担保はこのような場合に適した方法の1つです。
例えば、都心に所有するマンションと郊外の一戸建てを同時に担保として設定することで、それぞれの不動産の特性を生かした融資が可能になります。
都心のマンションの高い資産価値と、郊外の一戸建ての安定性を組み合わせることで、より魅力的な担保として評価される可能性があります。
この方法により、個々の不動産では得られない規模の融資や、より柔軟な資金調達が可能になります。ただし、複数の不動産を同時に活用することのリスクも十分に理解した上で判断する必要があります。
ケース④:事業拡大のための大型融資を受ける場合
事業を大きく拡大する際や、大規模な設備投資を行う場合など、通常以上の大型融資が必要になることがあります。
例えば、製造業を営む企業が新工場の建設を計画している場合を考えてみましょう。既存の工場や事務所に加えて、オーナーが個人で所有する不動産も担保として提供することで、新工場建設に必要な大型融資を受けやすくなります。
共同担保を活用することで、事業用資産と個人資産を組み合わせた総合的な担保力を示すことができ、金融機関からより前向きな融資判断を引き出せる可能性が高まります。
ただし、事業の成否が個人資産にも影響を与える可能性があるため、慎重な検討が必要です。
共同担保のメリット
共同担保には、融資を受ける側にとって大きなメリットがあります。ここでは、主な3つのメリットについて詳しく説明します。
- 融資額の増加が可能である
- 金利条件の改善が期待できる
- 複数の資産を効率的に活用できる
それぞれ個別にみていきましょう。
融資額の増加が可能である
共同担保の最大のメリットは、融資額を大幅に増やせる可能性がある点です。
単独の不動産では担保価値が不足し、希望する融資額を得られない場合でも、複数の不動産を組み合わせることで総合的な担保力が向上します。
例えば、3,000万円の価値がある不動産Aと2,000万円の価値がある不動産Bを共同担保として設定すれば、理論上は5,000万円までの融資が可能になります。これにより、大規模な投資や事業拡大など、より大きな資金需要に対応できるようになります。
ただし、融資額の増加は同時にリスクの増大も意味します。返済計画は慎重に立てる必要があり、過度な借り入れは避けるべきです。
金利条件の改善が期待できる
共同担保を設定することで、金利条件の改善が期待できます。これは、金融機関にとってリスクが分散されるためです。
複数の不動産が担保として提供されることで、債務不履行時の回収可能性が高まり、金融機関はより安心して融資を行えるようになります。
この結果、借り手は通常よりも低い金利での融資を受けられる可能性が出てきます。例えば、通常であれば年利2.5%の融資が、共同担保の設定により2.0%に引き下げられるといったケースがあります。
長期的な視点で見ると、金利の低下は総返済額の大幅な削減につながる可能性があります。
複数の資産を効率的に活用できる
共同担保を利用することで、複数の不動産を効率的に活用することができます。これは特に、個々の不動産では十分な担保価値を持たない場合に有効です。
例えば、都心の小型マンションと郊外の一戸建てを所有している場合、それぞれ単独では大型の融資を受けるのが難しいかもしれません。
しかし、これらを共同担保として設定することで、双方の特性(都心物件の高い資産価値と郊外物件の安定性)を生かした魅力的な担保として評価される可能性が高まります。
この方法により、それぞれの不動産の価値を最大限に引き出し、より柔軟な資金調達が可能になります。
ただし、複数の不動産を同時に活用しづらくなるリスクも十分に理解した上で判断する必要があります。
共同担保のデメリット
メリットがある一方で、共同担保にはいくつかの重要なデメリットも存在します。ここでは、主な3つのデメリットについて詳細に解説します。
- 複数の不動産が同時に拘束される
- 個別の不動産の処分が制限される
- エリア制限により活用できない場合がある
次項より、詳しく解説します。
複数の不動産が同時に拘束される
共同担保の最大のデメリットは、複数の不動産が同時に拘束されることです。これは、融資を受ける際に便利な一方で、大きなリスクも伴います。
債務不履行に陥った場合、共同担保に設定されたすべての不動産が差し押さえの対象となる可能性があります。つまり、1つの債務のために複数の資産を失う可能性があるのです。
例えば、事業用の不動産と自宅を共同担保に入れた場合、事業の失敗により返済が滞ると、最悪の場合、事業用不動産だけでなく自宅まで失う可能性があります。このリスクを十分に理解し、慎重に判断することが重要です。
個別の不動産の処分が制限される
共同担保に設定された不動産は、個別に処分することが難しくなります。これは、複数の不動産が法的に1つの担保として扱われるためです。
例えば、共同担保に入れた複数の不動産のうち、1つだけを売却したいと思っても、簡単にはいきません。売却するためには、まず金融機関の承諾を得て、その不動産の担保を解除する必要があります。
場合によっては、残りの不動産で十分な担保価値があることを証明したり、追加の担保を提供したりする必要があるかもしれません。
このように、共同担保は資産の流動性を低下させる可能性があります。長期的な資産運用計画を立てる際には、この点を十分に考慮する必要があります。
エリア制限により活用できない場合がある
共同担保を設定する際、金融機関によってはエリア制限が設けられているケースが存在します。これは、金融機関が担保物件を適切に管理・評価するための措置です。
例えば、東京に本店がある地方銀行が、北海道にある不動産を担保として受け入れることは難しいかもしれません。また、都市部の金融機関が遠隔地の農地や山林を担保として評価することも困難です。
このエリア制限により、所有している不動産のすべてを効果的に活用できない場合があります。特に、複数の地域に不動産を所有している場合は注意が必要です。共同担保の設定を検討する際は、事前に利用を検討している金融機関のエリア制限について確認することが重要です。
共同担保の設定手順
共同担保を設定する際には、大きく分けて以下4つの手順が必要です。
- 手順①:担保物件の選定と評価
- 手順②:金融機関との交渉と条件確認
- 手順③:必要書類の準備と提出
- 手順④:登記手続きの実施
次項より、個別にみていきましょう。
手順①:担保物件の選定と評価
共同担保の設定において、まず重要なのは適切な担保物件の選定です。この段階では、所有している不動産の中から、融資額に見合う価値を持つ物件を選び出します。
選定の際は、以下の点に注意が必要です。
- 物件の市場価値
- 物件の将来的な価値変動の可能性
- 物件の立地や状態
選定後は、専門の不動産鑑定士による評価が必要となります。この評価額が、金融機関との交渉の基礎となるため、正確な評価を受けることが重要です。
なお、共同担保として複数の物件を選定する場合は、リスク分散の観点から、異なる地域や用途の物件を組み合わせることも検討しましょう。
手順②:金融機関との交渉と条件確認
物件の評価が完了したら、次は金融機関との交渉です。この段階では、融資額、金利、返済期間などの条件について話し合います。
交渉のポイントは以下のとおり。
- 希望する融資額と担保評価額のバランス
- 金利条件(固定金利か変動金利か、金利の水準)
- 返済期間と返済方法
- 担保設定の範囲(全部なのか一部なのか)
また、金融機関によって共同担保に対する姿勢が異なる場合があるため、複数の金融機関と交渉し、最も有利な条件を引き出すことが大切です。
交渉の結果、条件が合意に達したら、金融機関から融資の内定を得ることになります。
手順③:必要書類の準備と提出
融資の内定が得られたら、次は必要書類の準備です。一般的に求められる書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 所得証明書(源泉徴収票、確定申告書など)
- 担保物件の登記簿謄本
- 担保物件の評価書
- 事業計画書(事業資金の場合)
これらの書類を揃え、金融機関に提出します。書類に不備があると融資手続きが遅れる可能性があるため、漏れがないよう注意深く準備することが重要です。
また、共同担保の場合、複数の物件に関する書類が必要となるため、準備に時間がかかることも念頭に置いておきましょう。
手順④:登記手続きの実施
最後の手順は、共同担保の登記手続きです。この手続きは通常、司法書士に依頼して行います。
登記手続きの主な流れは以下の4ステップです。
- 手順①:金融機関から抵当権設定書類を受け取る
- 手順②:司法書士に登記申請を依頼
- 手順③:法務局で登記申請
- 手順④:登記完了証の受け取り
共同担保の場合、複数の物件について同時に登記を行う必要があります。また、共同担保目録の作成も必要となります。
登記が完了すると、いよいよ融資金の受け取りとなります。ただし、登記完了後も、定期的に担保物件の状況を金融機関に報告する必要がある場合もありますので、注意が必要です。
共同担保目録について
共同担保を設定する際、重要な役割を果たすのが共同担保目録です。この目録は、共同担保の内容を正確に記録し、法的な効力を持たせる重要な文書のこと。
ここからは、共同担保目録の意味と役割、そしてその取得方法について詳しく解説します。
共同担保目録の意味と役割
共同担保目録とは、1つの債権に対して複数の不動産に設定された抵当権(共同担保)を一括して記載したものです。この目録は、登記事項証明書(いわゆる「登記簿謄本」)の最後に記載されます。
共同担保目録の主な役割は以下のものが挙げられます。
- 担保物件の明確化:共同担保の対象となる全ての不動産を明確に示す。
- 法的効力の付与:目録に記載されることで、共同担保が法的に有効となる。
- 第三者への公示:登記簿に記載されることで、第三者に対しても共同担保の存在を公示する。
- 抵当権の順位の明示:複数の抵当権が設定されている場合、その順位を明確にする。
例えば、Aさんが1億円の融資を受けるために、自宅マンションと投資用アパートを共同担保として設定した場合、共同担保目録にはこれら2つの物件の詳細(所在地、種類、面積など)が記載されます。
これにより、どの物件が共同担保の対象となっているかが明確になります。
また、共同担保目録は不動産売却時にも重要な役割を果たします。売却予定の不動産が共同担保の対象となっているかどうかを確認し、必要に応じて抹消手続きを行うための基礎資料となります。
共同担保目録の取得方法
共同担保目録は、登記事項証明書の一部として取得します。取得方法は以下のとおりです。
法務局での取得 | 最寄りの法務局(登記所)に行き、登記事項証明書交付申請書に必要事項を記入する。その際、「共同担保目録」が必要である旨を明記するか、窓口で伝える。 |
オンラインでの取得 | 法務局が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して、インターネット経由で申請することも可能。申請の際、「共同担保目録」を含む旨を選択する。 |
司法書士への依頼 | 登記手続きに不慣れな場合は、司法書士に依頼するのも1つの方法。専門家が正確に必要な書類を取得してくれる。 |
取得にかかる費用は、1通あたり数百円程度となっています。ただし、共同担保目録が含まれる場合は通常の登記事項証明書よりも枚数が多くなるため、若干高くなる可能性があります。
共同担保目録を取得する際の注意点として、単に「登記簿謄本が欲しい」と言うだけでは共同担保目録が含まれない場合があるため留意が必要です。
必ず「共同担保目録を含む登記事項証明書」が必要であることを明確に伝えましょう。
共同担保と抵当権の関係
抵当権は、債務者が債務を履行しない場合に、担保として設定された不動産を売却して債権を回収する権利です。主に住宅ローンや事業融資などで利用されます。
抵当権の特徴として、以下が挙げられます。
- 担保物件の占有は債務者に残される
- 債務不履行時に優先的に債権を回収できる
- 登記により第三者にも対抗できる
例えば、住宅ローンを組む際、購入する家に抵当権が設定されますが、住宅の所有権と使用権は借り手にあります。ただし、返済が滞った場合、金融機関はその家を売却して債権を回収する権利を持ちます。
共同抵当権の特徴
共同抵当権は、1つの債権に対して複数の不動産に設定される抵当権のことです。共同担保における法的な権利の形態といえます。
共同抵当権の主な特徴は以下のとおりです。
- 複数の不動産が一体として扱われる
- 債権額全体に対して各不動産が担保となる
- 一部の不動産だけで債権を回収することも可能
例えば、1億円の融資に対して、5,000万円の価値がある不動産Aと6,000万円の価値がある不動産Bに共同抵当権が設定された場合、両方の不動産が1億円全額の担保となります。債務不履行時には、金融機関は必要に応じてAかB、もしくは両方を売却して債権を回収することができます。
この仕組みにより、借り手は融資額を増やしたり条件を改善したりできる一方で、複数の不動産が同時にリスクに晒されることになります。
共同担保の解除と抹消について
共同担保を設定するなら、「どのようにして解除や抹消を行うのか」もセットで把握しておく必要があります。
ここでは、一部抹消の可能性や条件、全部抹消の方法、そして困難な状況での解決策としての任意売却について詳しく解説します。
一部抹消の可能性と条件
共同担保の一部抹消とは、複数の担保不動産のうち、一部の不動産だけを担保から外すことです。しかし、これは通常簡単ではありません。
一部抹消が可能となる主な条件は以下のとおりです。
- 残りの担保で十分な価値がある場合
- 借入金の一部を返済して担保価値を下げられる場合
- 金融機関が一部抹消に同意する場合
例えば、1億円の融資に対して2つの不動産(各7,000万円相当)を共同担保としている場合、融資残高が6,000万円まで減少し、金融機関が1つの不動産だけでも十分と判断すれば、一部抹消が認められる可能性があります。
ただし、金融機関は通常、リスク管理の観点から一部抹消に慎重な姿勢をとることでしょう。
一部抹消を希望する場合は、早い段階で金融機関と相談し、条件について交渉することが重要です。
全部抹消の方法
共同担保の全部抹消は、通常、債務を完済した時点で行われます。手順は以下のとおりです。
- 債務の完済
- 金融機関への抹消申請
- 抵当権抹消登記の申請
債務を完済したら、金融機関に抹消証明書の発行を依頼します。この証明書を持って法務局に行き、抵当権抹消登記を申請します。この手続きは通常、司法書士に依頼することが多々あります。
注意点として、債務を完済しても自動的に抹消されるわけではありません。必ず抹消手続きを行う必要があります。
また、共同担保の場合、複数の不動産全てについて同時に抹消手続きを行わなければなりません。
任意売却による解決方法
任意売却は、債務返済が困難になった場合の解決策の1つです。
これは、債権者(金融機関)の同意を得て、債務者自身が不動産を売却し、その売却代金で債務の一部または全部を返済する方法。
任意売却のメリットは以下のものが挙げられます。
- 競売よりも高値で売却できる可能性が高い
- 債務者の信用情報に傷がつきにくい
- 売却後の居住延長などの交渉が可能
例えば、共同担保に入れた複数の不動産のうち、一部を任意売却することで残りの債務を軽減し、他の不動産の担保を維持できる可能性があります。
ただし、任意売却は金融機関との綿密な交渉が必要です。専門家(弁護士や司法書士)に相談しながら進めることが望ましいでしょう。
共同担保のリスクと対策
最後に、共同担保に伴うリスクとその対策について論考します。特に「返済不能時のリスク」「資産価値の変動リスク」は重要な要素です。
これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、共同担保をより安全に活用できますので、しっかりと把握しておきましょう。
返済不能時のリスク
共同担保の最大のリスクは、返済不能に陥った場合に複数の不動産を同時に失う可能性があることです。
例えば、事業用の不動産と自宅を共同担保にしている場合、事業の失敗により返済が滞ると、最悪の場合、事業用不動産だけでなく自宅まで失うリスクがあります。
このリスクへの対策として、以下が挙げられます。
- 無理のない返済計画を立て、定期的に見直す
- 数ヶ月分の返済金を常に準備しておく
- 団体信用生命保険などで万が一の事態に備える
また、返済が困難になりそうな場合は、早めに金融機関に相談することが大切です。条件変更や一部繰り上げ返済など、状況に応じた対応が可能な場合があります。
資産価値の変動リスク
不動産の価値は経済状況や地域の発展状況などにより変動します。共同担保の場合、複数の不動産の価値が同時に下落するリスクがあります。
例えば、リーマンショック時のように不動産市場全体が低迷した場合、共同担保に入れた複数の不動産の価値が一斉に下落する可能性があります。
これにより、当初の想定よりも担保価値が低下し、追加担保を要求されたり、最悪の場合は期限の利益を喪失したりするリスクがあります。
このリスクへの対策として、次のものが考えられます。
- 異なる地域の不動産を組み合わせる
- 住宅、商業施設、オフィスなど異なる用途の不動産を組み合わせる
- 不動産の価値を定期的に評価し、必要に応じて対策を講じる
また、借入額を物件価値の7割程度に抑えるなど、余裕を持った担保設定も有効です。これにより、多少の価値下落があっても追加担保などを要求されるリスクを軽減できます。
まとめ
共同担保は、融資額の増加や条件改善など大きなメリットがある一方で、複数の不動産が同時に拘束されるリスクも伴います。
共同担保を検討する際は、自身の財務状況や将来の資産活用計画を十分に考慮し、慎重に判断することが重要です。
特に、返済不能時のリスクや資産価値の変動リスクには注意が必要。これらのリスクを軽減するためには、無理のない返済計画の立案、緊急時の資金準備、資産の分散などの対策が求められます。
加えて、共同担保の設定や解除、抹消の際には複雑な手続きが必要となります。そのため、共同担保の活用を検討する際は、不動産や金融の専門家に相談することをおすすめします。