共有持分【離婚】

離婚で財産分与をする際、不動産の評価はどのようにすべき?

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離婚に伴う財産分与の際、不動産の評価をめぐって夫婦間で意見が食い違うケースがよくあります。

このような場合、公平な分割が難しくなり、離婚協議が長引いたり、将来的なトラブルの種になったりする問題が発生します。その際に重要となるのが、財産分与における適切な不動産評価です。

財産分与における不動産評価とは、離婚時に夫婦の共有財産である不動産の価値を、公平かつ正確に算定することです。

これにより、双方が納得できる形で財産を分割し、円滑な離婚手続きを進めることができます。そこで本記事では、財産分与における不動産評価の方法や注意点について詳しく解説します。

財産分与における不動産評価の重要性とは

離婚に伴う財産分与において、不動産の評価は極めて重要な要素です。

特に、家やマンションなどの不動産は多くの夫婦にとって最大の資産であり、その評価額が財産分与の全体像を大きく左右します。

逆に、適切な評価を行わないと、一方が不当に有利になったり、後々のトラブルの種になったりする可能性があります。

そのため、不動産評価の重要性を理解し適切な方法で評価を行うことが、公平で円滑な財産分与の実現に繋がるのです。

財産分与とは何か

財産分与とは、離婚に際して夫婦の共有財産を公平に分割する手続きです。結婚生活中に協力して築いた財産を、離婚後の新生活のために適切に分けることが目的。

対象となる財産には、預貯金、株式、車両などの動産から、家やマンションなどの不動産まで幅広く含まれます。

財産分与は、夫婦の協議によって決めることができますが、話し合いがつかない場合は家庭裁判所での調停や審判によって決定されることもあります。

原則として、共有財産を1/2ずつ分けることが基本ですが、婚姻期間や各々の貢献度、養育費の支払いなどの要素も考慮されます。公平で納得のいく財産分与を行うためには、まず全ての財産を正確に把握し、適切に評価することが重要です。

不動産評価が財産分与に与える影響

不動産評価は財産分与の結果に大きな影響を与えます。例えば、時価2,000万円の家を3,000万円と過大評価すると、「その家を取得する側は実際よりも多くの財産を得た」とみなされ、ほかの財産で1,500万円を相手に渡す必要が生じます。

逆に1,000万円と過小評価すれば、取得する側は500万円しか相手に渡さなくてよくなります。

このように、評価額の違いによって財産分与の内容が大きく変わるため、公平で正確な評価が不可欠です。また、評価額は売却や代償分与(一方が不動産を取得し、相手にその価値の半分を現金等で支払う方法)を検討する際の基準にもなります。

正確な評価は、双方が納得できる解決策を見出し、将来的なトラブルを防ぐ上で極めて重要な役割を果たすのです。

不動産評価の主な方法

不動産の評価方法にはさまざまなものがありますが、財産分与においては主に以下の3つの方法が用いられます。

  • 方法①:実勢価格(時価)による評価
  • 方法②:公示地価による評価
  • 方法③:路線価による評価
  • 方法④:固定資産税評価額による評価

次項より、詳しく解説します。

方法①:実勢価格(時価)による評価

実勢価格は、その不動産を実際に売却した場合に得られるであろう価格を指します。不動産会社による査定や不動産鑑定士による鑑定評価によって算出されます。

周辺の取引事例や市場動向を考慮するため、現在の市場価値を最も正確に反映する方法といえます。財産分与では、この方法が最も一般的に用いられます。

方法②:公示地価による評価

公示地価は、国土交通省が毎年公表する標準地の価格です。土地の評価基準として広く利用されていますが、建物の価値は含まれていません。財産分与では、公示地価を参考にしつつ、実際の取引価格との乖離を考慮して調整を加えることが一般的です。

方法③:路線価による評価

路線価は、相続税や贈与税の算定基準として国税庁が定める、道路に面した土地の1平方メートル当たりの評価額です。公示地価の約80%程度に設定されており、相続や贈与の際の不動産評価によく用いられますが、財産分与では補助的な指標として参考にされることが多々あります。

方法④:固定資産税評価額による評価

固定資産税評価額は、固定資産税の課税基準として市町村が決定する価格です。一般的に実勢価格よりも低く設定されており、土地と建物両方の評価額が含まれます。財産分与では、この評価額をそのまま用いることは少なく、実勢価格との比較対象として参考にされることが多々あります。

財産分与のための不動産評価のプロセス

ここからは、一般的な不動産評価のプロセスを詳しく説明していきます。

  • STEP①:不動産会社による査定
  • STEP②:不動産鑑定士による鑑定評価
  • STEP③:複数の評価方法の比較と選択

それぞれ個別にみていきましょう。

STEP①:不動産会社による査定

不動産評価を行う際には、まずは地域の不動産事情に精通した不動産会社による査定を受けることが推奨されます。

多くの不動産会社は無料で査定サービスを提供しており、気軽に利用できます。

査定では、不動産の立地、面積、築年数、設備の状態などの基本情報に加え、周辺の取引事例や市場動向を考慮して評価額が算出されます。

複数の不動産会社に査定を依頼することで、より客観的な価格帯を把握することが可能です。

STEP②:不動産鑑定士による鑑定評価

より正確で公平な評価を求める場合や、高額な不動産の場合は、不動産鑑定士による専門的な鑑定評価を受けることが有効です。

不動産鑑定士は国家資格を持つ専門家で、科学的・客観的な手法を用いて不動産の価値を算定します。

鑑定評価では、不動産の個別的要因(建物の構造、設備の状態など)と一般的要因(経済情勢、法規制など)を総合的に分析し、正確な評価額を算出します。

鑑定評価書は裁判所でも証拠として認められる信頼性の高い資料となりますが、費用がかかることがデメリットです。

STEP③:複数の評価方法の比較と選択

最終的な評価額を決定する際は、「不動産会社の査定結果」「不動産鑑定士の鑑定評価」「公示地価や固定資産税評価額」なども参考にしながら、総合的に判断することが重要です。

それぞれの評価方法には長所と短所があるため、単一の方法に頼るのではなく、複数の視点から不動産の価値を検討します。

例えば、査定額と鑑定評価額の平均値を取るなど、バランスの取れた評価額を導き出すことが望ましいでしょう。最終的には、夫婦間で協議し、双方が納得できる評価額を選択することが、円滑な財産分与に繋がります。

財産分与における不動産評価の注意点

不動産評価を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。これらの点に気をつけることで、より正確で公平な評価を行うことができ、円滑な財産分与を実施できます。

具体例を挙げると、次の3つです。

  • 評価時期を適切に選択する
  • 建物と土地を個別に評価する
  • 市場動向を考慮する

以下より、詳しく解説します。

評価時期を適切に選択する

不動産の価値は時間とともに変動するため、評価時期の選択は非常に重要です。一般的には、離婚の合意が成立した時点、または財産分与の協議が始まった時点での評価が適切とされています。

ただし、不動産市場の急激な変動や、財産分与の協議が長期化する場合は、評価時期の選択に慎重になる必要があります。

建物と土地を個別に評価する

建物と土地は別々に評価することが大切です。建物は経年劣化により価値が減少する一方、土地は立地条件によっては価値が上昇することもあることが理由です。

建物の評価では「築年数」「構造」「改修履歴」「現在の物件の状態」などを考慮します。

対する土地の評価では「土地面積」「形状」「接道状況」「用途地域」「周辺環境」などが重要な要素となります。

市場動向を考慮する

不動産評価において、現在の市場動向を適切に反映させることは非常に重要です。地域の再開発計画や大企業の撤退など、地域特有の動向が不動産価値に大きな影響を与える可能性があります。

また、全国的な不動産市況のトレンドや金利動向、政府の住宅政策なども考慮に入れることで、より現実的で正確な評価が可能になります。

不動産の財産分与に関する税金問題

財産分与で不動産を取得する際、税金の問題は避けて通れません。適切な理解と対応を怠ると、思わぬ税負担が生じる可能性があります。

ここでは、特に注意が必要な不動産取得税と贈与税、そして譲渡所得税について詳しく説明します。

不動産取得税と贈与の関連性について

通常、財産分与による不動産の取得は、夫婦間で築いた財産の清算という性質上、贈与とはみなされず、不動産取得税や贈与税の課税対象とはなりません。

しかし、財産分与の範囲を超えて不動産を取得した場合、その超過分については贈与と見なされ、税金が課される可能性があります。

例えば、夫婦の共有財産が5,000万円で、そのうち4,000万円相当の不動産を一方が取得した場合、公平な分割額である2,500万円を超える1,500万円分が贈与と見なされる可能性があります。

このような場合、不動産取得税や贈与税の課税リスクが生じるため、財産分与の内容が公平であることを証明できるよう、評価額の根拠や分割の理由を明確にしておく必要があります。

譲渡所得税の可能性について

財産分与で不動産を譲渡する側にも、税金の問題が生じる可能性があります。通常、財産分与による不動産の譲渡は、譲渡所得税の課税対象とはなりません。

しかし、財産分与の対象となる不動産の取得価額よりも評価額が高い場合、その差額分が譲渡所得として課税されるケースも存在します。

特に、長期間所有していた不動産や、値上がりした不動産を財産分与する場合は注意が必要です。

ただし、実際には不動産の価値が下がっていることも多く、譲渡所得が発生するケースは比較的稀といえます。

それでも、高額な不動産や特殊な事情がある場合は、税理士などの専門家に相談し、税金面のリスクを事前に把握しておくことが賢明です。

住宅ローンがある場合の財産分与における留意事項

住宅ローンが残っている不動産の財産分与は、単純な資産分割以上に複雑な問題を含んでいるため、慎重に検討すべき点が多くあります。具体的には、以下のとおり。

  • 住宅ローン残債を確認する
  • 所有権とローン債務の関係を理解する
  • ローン名義変更の可能性を検討する
  • 売却による解決策を考慮する

次項より、詳しく解説します。

住宅ローン残債を確認する

まず、現在の住宅ローン残債を正確に把握することが重要です。金融機関に問い合わせて、最新の残債額、金利条件、返済期間などの詳細情報を入手しましょう。

この情報は、不動産の実質的な価値を算出する上で不可欠です。例えば、時価3,000万円の家に2,000万円のローンが残っている場合、実質的な資産価値は1,000万円となります。

また、ローンの種類(固定金利か変動金利か)や、繰り上げ返済の可能性なども確認しておくと、今後の返済計画を立てる際に役立ちます。

所有権とローン債務の関係を理解する

住宅ローンが残っている不動産の所有権を移転する場合、ローン債務との関係を正しく理解することが求められます。

所有権の移転とローン債務の移転は別物であり、所有権だけを移転してもローン債務は自動的には移転しません。例えば、夫名義の住宅を妻に財産分与で渡しても、ローン債務は依然として夫にあります。

この状態で夫がローンを滞納すると、妻が所有者であっても家を差し押さえられるリスクがあります。そのため、所有権の移転を行う際は、同時にローン債務の処理も検討しましょう。

ローン名義変更の可能性を検討する

理想的には、不動産の所有権移転と同時にローンの名義も変更することですが、これには金融機関の承諾が必要です。

金融機関は、新たなローン名義人の返済能力を厳しく審査します。収入や勤務状況、ほかの債務の有無などが重要な判断材料となります。

ローン名義の変更が認められない場合、元の債務者が連帯保証人として残るケースもあります。ローンの名義変更が困難な場合は、ほかの解決策を模索することも重要です。

売却による解決策を考慮する

住宅ローンが残っている不動産の財産分与で最もクリーンな解決策は、不動産を売却してローンを完済し、残額を分配することです。この方法には、以下のようなメリットがあります。

  • ローン債務に関するリスクを完全に解消できる
  • 明確な金額で財産分与ができ、後々のトラブルを防げる
  • 双方が新生活をスタートしやすい

ただし、売却には時間がかかる場合もあるため、離婚協議の進行状況と併せて検討する必要があります。

なお、不動産市況によっては希望額で売却できない可能性もあるため、事前に複数の不動産会社に相談し、現実的な売却価格を把握しておきましょう。

公平な財産分与のための交渉のポイント

公平な財産分与を実現するための交渉では、まずはすべての財産を正確に把握し、リストアップすることから始めましょう。預貯金や有価証券、不動産、車両など、価値のあるものはすべて対象になります。

次に、専門家の助言を積極的に求めることをおすすめします。弁護士や税理士、不動産鑑定士など、それぞれの分野の専門家のアドバイスは、公平で合理的な分与案を作成する上では必須といえます。

特に、不動産や事業用資産など、評価が難しい財産がある場合は、専門家の意見が不可欠です。

なお、合意内容は必ず書面化しておきましょう。口頭の約束だけでは後々トラブルの原因になる可能性があるためです。財産分与の詳細を記載した公正証書を作成するなど、法的な効力のある形で合意内容を残しておきましょう。

まとめ

財産分与における不動産評価は、公平で円滑な離婚手続きを行う上では必須の作業です。

適切な評価方法の選択、評価時期の考慮、建物と土地の個別評価、市場動向の反映など、多角的な視点で不動産を評価することが求められます。

また、税金問題や住宅ローンの取り扱いにも注意が必要。これらの事項を適切に処理することで、将来的なトラブルを回避し、双方が納得できる財産分与を行えます。

ただし、不動産評価は専門的な知識と経験が必要な複雑な作業です。適切な評価を行うためには、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。プロのアドバイスを受けることで、より公平で確実な財産分与を実現できるでしょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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