共有持分【離婚】

離婚の際に共有不動産がある場合、税金対策はどうすればいい?

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離婚時に共有不動産の扱いを誤ると、将来的なトラブルや予期せぬ税負担といった問題が発生します。その際に重要となるのが離婚時の共有不動産における税金対策です。

これは、財産分与や名義変更、売却などの際に生じるさまざまな税金を最小限に抑えつつ、円滑に共有名義を解消する方法を指します。適切な税金対策を行わないと、不要な税金を支払ったり、将来的な紛争のリスクを抱えたりする可能性があります。

そこで本記事では、離婚時の共有不動産における税金対策について詳しく解説します。

離婚時の共有不動産を巡る基本的な考え方

離婚時の財産分与において、共有不動産の扱いは特に重要な問題となります。多くの夫婦にとって、不動産は最大の資産であり、その分配方法によって離婚後の生活に大きな影響を及ぼす可能性があるためです。

この問題に取り組む際には、法律上の原則と実際的なリスクの両面から考察する必要があります。

財産分与の原則と共有不動産の扱い

財産分与の基本原則は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を公平に分配することです。この観点から、共有不動産は通常、その取得経緯や名義に関わらず、分与の対象となります。

一般的には、不動産の価値を2分の1ずつ分けることが多いですが、これは絶対的なルールではありません。

具体的には、不動産の評価額から住宅ローンの残債を差し引いた純資産価値を算出し、それを基に分割を検討します。

例えば、3,000万円の不動産に1,000万円のローンが残っている場合、純資産価値は2,000万円となり、この半額である1,000万円を基準に分与を考えます。

ただし、実際の分与方法は夫婦の状況によってさまざまです。子どもの養育を担う親が住居を確保できるよう、不動産を譲渡する代わりに他の財産を受け取るケースもあれば、共有のまま継続し、将来的に売却して利益を分配する取り決めをする場合もあります。

重要なのは、双方が納得できる公平な解決策を見出すことです。

共有名義状態を放置するリスク

離婚後も不動産の共有名義状態を放置することには、深刻なリスクが伴います。最も大きな問題は、将来的なトラブルの種を残すことです。

例えば、一方が勝手に不動産を賃貸に出したり、リフォームを行ったりすると、法的な紛争に発展する可能性があります。

また、固定資産税の支払いや修繕費用の負担をめぐって意見が対立するケースも少なくありません。仮に、どちらかが再婚した場合、新たな家族関係が加わることで、不動産の管理や処分に関する意思決定が一層複雑になります。

加えて、将来的な売却や相続の際にも問題が生じやすくなります。共有者の一方が売却を望んでも、他方の同意がなければ実行できません。相続時には、共有者それぞれの相続人に権利が分散し、さらに複雑な権利関係が生まれる可能性もあります。

このような事態を避けるためにも、離婚時には可能な限り共有名義状態を解消し、明確な所有関係を確立するのが望ましいといえます。それが難しい場合でも、将来的な取り扱いについて具体的な取り決めを行い、書面化しておくことが重要です。

離婚時の共有不動産に関わる税金とは?

離婚に伴う共有不動産の処分や名義変更には、さまざまな税金が関係してきます。これらの税金を事前に把握し、適切に対策を立てることで、不要な出費を抑えられる可能性があります。

ここでは、主要な4つの税金について解説します。

  • ①:登録免許税
  • ②:譲渡所得税
  • ③:固定資産税・都市計画税
  • ④:不動産取得税と贈与税(財産分与の特例)

それぞれ個別にみていきましょう。

①:登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転や抵当権設定などの登記を行う際に課される国税です。離婚時の財産分与で共有不動産の名義を変更する場合、この税金が発生します。

税額は、原則として不動産の固定資産税評価額に対して一定の税率を乗じて計算されます。

内容税率
所有権の保存0.4%
売買または競売による所有権の移転2%
相続または法人の合併による所有権の移転0.4%
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等)2%

例えば、所有権移転登記の場合、固定資産税評価額の2%が課税されます。3,000万円の不動産であれば、60万円の登録免許税がかかる計算になります。

ただし、財産分与による所有権移転の場合、通常の売買などと比べて軽減された税率が適用されることがあります。

具体的な税額は、不動産の評価額や移転の態様によって異なるため、事前に税理士や司法書士に相談することをおすすめします。

②:譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却して利益が出た場合にかかる税金です。離婚時に共有不動産を売却する場合や、配偶者の持分を買い取る場合に発生する可能性があります。

課税される譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

 所得税住民税復興特別所得税合計
短期譲渡所得(5年以内)30%9%0.63%39.63%
長期譲渡所得(5年超)15%5%0.32%20.32%

ただし、居住用財産を譲渡する場合、3,000万円の特別控除や軽減税率などの特例措置があります

これらの特例を利用することで、税負担を大幅に軽減できる場合もあるため、適用条件を確認することが重要です。

③:固定資産税・都市計画税

固定資産税と都市計画税は、不動産を所有していること自体に対してかかる地方税です。離婚後も不動産を保有し続ける場合、これらの税金の支払い義務は継続します。

固定資産税は、土地・建物の固定資産税評価額に対して標準税率1.4%で課税されます。都市計画税は、都市計画事業の財源として課される税金で、通常0.3%の税率が適用されます。

離婚時の財産分与で不動産の所有者が変わっても、その年度の固定資産税等は原則として1月1日時点の所有者が納税義務を負います。年の途中で所有者が変わる場合、当事者間で精算する必要があるかもしれません。

④:不動産取得税と贈与税(財産分与の特例)

不動産取得税は、不動産を取得した際にかかる地方税です。通常、固定資産税評価額の3%(住宅の場合)または4%(その他の場合)が課税されます。

一方、贈与税は、財産を無償で譲り受けた場合にかかる税金です。通常、不動産を無償で譲り受けると高額の贈与税が課される可能性があります。

しかし、離婚時の財産分与として不動産を取得する場合、特例により原則として不動産取得税と贈与税は課税されません。この特例は、婚姻期間中の財産形成への寄与を考慮したものです。

ただし、財産分与の額が過大である場合や、離婚を利用した租税回避と判断される場合は、この特例が適用されず課税される可能性があります。そのため、財産分与の内容が適正であることを示す資料を用意しておくことが賢明です。

共有状態を解消する際の税金対策

離婚時に共有名義の不動産を適切に処理することは、将来のトラブルを防ぐ上で極めて重要です。

共有名義を解消する方法には主に三つの選択肢があり、それぞれに税金面での注意点があります。状況に応じて最適な方法を選ぶことが、円滑な離婚手続きと税負担の軽減につながります。

①:単独名義へ変更する場合

共有名義を解消する最も一般的な方法は、一方が他方の持分を買い取って単独名義に変更することです。この場合、登録免許税が発生しますが、財産分与として行う場合は軽減税率が適用される可能性があります。

税金対策としては、できるだけ評価額を低く抑えることが有効です。ただし、あまりに低い評価額で取引すると、贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。適正な評価額の算定には、不動産鑑定士の意見書を活用するのも一案です。

また、譲渡所得税については、居住用財産の3,000万円特別控除や軽減税率の特例といった「マイホームを売ったときの特例」を利用できる可能性があります。これらの特例を適用することで、大幅な税負担の軽減が期待できます。

②:不動産売却をする場合

共有不動産を売却して現金化し、その売却益を分配する方法も選択肢の1つです。この場合、譲渡所得税が主な課税対象となります。

税金対策としては、まず前述の居住用財産の特例を最大限に活用することが重要です。加えて、売却のタイミングを工夫することも効果的です。例えば、売却益を複数年に分散させることで、累進課税の影響を抑えられる可能性があります。

また、売却費用を適切に計上することも忘れずに。仲介手数料や広告費、測量費用なども譲渡費用として認められ、課税所得の計算上控除できます。

③:共有持分の買取を依頼する場合

近年注目されているのが、専門業者による共有持分の買取です。訳あり物件の買取業者への依頼は、相手方との交渉が難しい場合や、迅速な解決が必要な場合に特に有効です。

税金面では、売却した持分に対して譲渡所得税が課税されますが、全体を売却するよりも税負担が小さくなる可能性があります。また、居住用財産の特例も適用できる場合があるため、税理士に相談しながら検討するとよいでしょう。

住宅ローンが残っている場合の税金対策

住宅ローンの残債がある場合、共有名義の解消はより複雑になります。ローンの取り扱いと税金対策を同時に考慮する必要があるため、慎重な対応が求められます。

ローン契約の変更と税金への影響

住宅ローンが残っている状態で共有名義を解消する場合、ローン契約の変更が必要になります。一般的には「単独で債務を引き継ぐ」「ローンを一括返済する」のどちらかを選択することになるでしょう。

ローンを引き継ぐ場合、金融機関の承認が必要です。この際、金利の見直しや保証人の変更が求められることがあります。

税金面では、ローン控除(住宅ローン減税)の継続適用が可能かどうかが重要なポイントです。条件によっては控除が受けられなくなる可能性があるため、事前に確認が必要です。

一括返済する場合は、繰上げ返済手数料などのコストが発生する可能性があります。ただし、これらの費用は譲渡費用として認められる可能性があるため、税負担の軽減につながる場合もあります。

ローン残債を考慮した財産分与の方法

ローン残債がある場合の財産分与では、不動産の評価額からローン残債を差し引いた純資産価値を基準に分割を考えるのが一般的です。例えば、3,000万円の不動産に1,000万円のローンが残っている場合、純資産価値は2,000万円となります。

税金対策としては、この純資産価値を基に財産分与の内容を決定することが重要です。過大な財産分与とならないよう注意しつつ、双方にとって公平な分割方法を探ることが求められます。

また、ローンを引き継ぐ側が将来支払う利子分についても考慮に入れると、より公平な分割が可能になります。この際、将来の利子支払いを現在価値に割り引いて計算するなど、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

住宅ローンが絡む場合の共有名義解消は、金融面と税務面の双方に精通した専門家のサポートを受けることが、スムーズな解決への近道となります。複雑な問題だからこそ、早めの対策と慎重な判断が重要です。

財産分与する際の税金対策

財産分与の方法によって、税金面での影響が大きく異なってきます。適切な方法を選択することで、不要な税負担を避け、双方にとって有利な結果を導き出せる可能性があります。

ここでは、財産分与の種類による税金面での違いと、時期や金額の調整による対策について詳しく解説します。

「清算的財産分与 vs 扶養的財産分与」の税金面での違い

清算的財産分与は、婚姻期間中に形成された財産を公平に分配する方法です。

一方、扶養的財産分与は、離婚後の生活保障を目的とした分与方法です。これらは税金面で異なる取り扱いを受けることがあります。

清算的財産分与の場合、原則として贈与税や譲渡所得税は課税されません。これは、婚姻中の財産形成への寄与を認めた上での分与とみなされるためです。ただし、分与額が過大である場合は、一部が贈与とみなされる可能性があります。

扶養的財産分与の場合、将来にわたる定期的な金銭の支払いなどが含まれるケースが存在し。この場合、支払う側には所得控除が認められる可能性がある一方、受け取る側には一定の所得税が課される可能性があります。

税金面での最適化を図るには、清算的要素と扶養的要素のバランスを考慮し、双方の税負担が最小限になるよう調整することが重要です。

財産分与の時期と金額の調整による税金対策

財産分与の時期や金額を適切に調整することで、税負担の軽減が見込めます。

例えば、高額の財産分与を一度に行うと、贈与税の課税対象となる可能性が高まります。ここで、複数年に分けて行うことで、この問題を回避できるでしょう。

不動産の評価額が変動する可能性がある場合は、評価額が低い時期を選んで財産分与を行うことも効果的です。これにより、登録免許税や不動産取得税の負担を抑えられる場合もあるでしょう。

所得税の観点からは、高所得者が財産を分与する際、所得の少ない年度を選ぶことで全体的な税負担の軽減につながる可能性があります。

ただし、これらの調整は複雑で、さまざまな要因を考慮する必要があります。また、明らかな租税回避と判断されるような極端な調整は避けるべきでしょう。適切な調整を行うためには、税理士や弁護士などの専門家に相談し、綿密な計画を立てることが不可欠です。

離婚時の共有不動産問題はどこに相談すればいい?

離婚時の共有不動産問題は、法律、税金、不動産評価など多岐にわたる専門知識が必要となります。

そのため、1つの専門家に頼るだけでなく、複数の専門家の知見を総合的に活用することが望ましいでしょう。ここでは、主に税理士と弁護士への相談について詳しく見ていきます。

税理士への相談のメリットと費用

税理士は税務に関する専門家です。共有不動産の財産分与に伴うさまざまな税金について、詳細なアドバイスを提供してくれます。税理士に相談することの主なメリットは以下のとおりです。

  • 具体的な税額の試算と最適な分与方法の提案
  • 各種税制優遇措置の適用可能性の検討
  • 将来的な税負担も考慮した長期的な視点からのアドバイス

税理士への相談費用は、案件の複雑さや相談時間によって異なりますが、一般的には1時間あたり1万円から3万円程度です。

ただし、継続的に依頼する場合は、月額制や成功報酬制を採用している税理士もいます。

費用対効果の面では、適切な税務アドバイスにより大幅な税金の節約ができる可能性があるため、十分にペイする場合が多いといえるでしょう。

弁護士との連携による総合的な対策立案

弁護士は、離婚全般に関する法的アドバイスを提供できる専門家です。共有不動産問題に関しては、以下のような面でサポートが期待できます。

  • 財産分与の法的妥当性の確認
  • 交渉や調停、裁判等の手続きの代理
  • 契約書や合意書の作成

特に、税理士と弁護士が連携することで、法的にも税務的にも適切な解決策を見出すことができます。

例えば、弁護士が作成した財産分与の合意内容について、税理士がその税務上の影響を確認し、必要に応じて修正を加えるといった協力体制が可能です。

弁護士への相談費用は、初回相談料が無料の場合もありますが、一般的には30分から1時間で5,000円から1万円程度です。ただし、具体的な作業を依頼する場合は、着手金や報酬金などが別途必要となります。

まとめ

離婚時の共有不動産における税金対策は、単なる節税策ではありません。将来的なトラブルを防ぎ、双方にとって公平で有利な解決策を見出すための重要なプロセスです。

適切な対策を講じることで、不要な税負担を避けるだけでなく、離婚後の新生活をスムーズにスタートさせることができます。ただし、税法や不動産法は複雑で、頻繁に改正されます。

また、個々のケースによって最適な解決策は異なります。したがって、共有不動産の問題に直面した際は、必ず税理士や弁護士などの専門家に相談しましょう

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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