共有持分【相続】

遺産分割協議の進め方とは?話し合いを綺麗にまとめるための必要知識

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相続が発生した際、遺言書がない場合や相続人間で意見が分かれるケースでは、遺産の分け方をめぐって争いが生じる可能性があります。このような問題を防ぎ、円滑に相続を進めるために重要なのが遺産分割協議です。

遺産分割協議とは、相続人全員で話し合い、被相続人の遺産をどのように分けるかを決定する手続きです。適切に行うことで、相続人間のトラブルを回避し、公平な遺産分割を実現できます。

しかし、その進め方や注意点については意外と知られていません。そこで本記事では、遺産分割協議の具体的な手順を詳しく解説します。

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、被相続人(亡くなった人)の遺産をどのように分けるかを話し合う手続きです。この協議の目的は、相続人間で公平かつ円満に遺産を分割することにあります。

法律で定められた相続分に縛られることなく、相続人全員の合意があれば自由に遺産を分割できるのが特徴です。

例えば、被相続人の子どもたちが相続人の場合、「普段から親の介護をしていた子に多くの遺産を渡す」「経済的に困っている子に配慮して分割する」など、家族の事情に応じた柔軟な対応が可能です。

このように、遺産分割協議は単なる財産の分配だけでなく、家族の絆を深める機会にもなり得るのです。

遺産分割協議が必要となるケース

遺産分割協議が必要となるのは、主に遺言書がない場合や、遺言書の内容が不十分な場合です。遺言書がある場合でも、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる分割も可能です。

具体的には、複数の相続人がいる場合や、相続財産に不動産や預貯金、有価証券などが含まれる場合に遺産分割協議が必要となります。また、被相続人に借金がある場合も、その返済方法について協議する必要があります。

さらに、相続税の申告が必要な場合は、申告期限(被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内)までに遺産分割協議を終えることが望ましいでしょう。このように、遺産分割協議は多くの相続案件で重要な役割を果たすのです。

遺産分割協議の手順

遺産分割協議を円滑に進めるためには、以下の5つの手順を踏みます。

  • 手順①:遺言書の有無の確認
  • 手順②:相続人の確定
  • 手順③:相続財産の調査
  • 手順④:遺産分割協議の実施
  • 手順⑤:遺産分割協議書の作成

それぞれ個別にみていきましょう。

手順①:遺言書の有無の確認

まず、遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合、その内容が遺産分割の基準となるため、この確認から始めます。

遺言書は自宅や銀行の貸金庫、あるいは公証役場に保管されている可能性があります。公正証書遺言の場合は、公証役場で検索することができます。

手順②:相続人の確定

次に、相続人を確定します。戸籍謄本を取得し、法定相続人を特定します。相続人の範囲や順位は民法で定められており、配偶者、子、父母、兄弟姉妹の順で相続権が発生します。相続人の確定は遺産分割協議の基礎となる重要な手順です。

手順③:相続財産の調査

相続財産の調査では、預貯金や不動産、有価証券などの資産だけでなく、借金などの債務も含めて調査を行います。金融機関や不動産登記簿、税務署などで情報を収集しましょう。正確な財産状況を把握することで、公平な分割が可能になります。

手順④:遺産分割協議の実施

相続人全員が集まって話し合いを行います。各相続人の意見を聞き、公平性を保ちつつ個別の事情にも配慮しながら、合意形成を目指します。この段階で専門家のアドバイスを受けると、スムーズな協議進行に役立ちます。

手順⑤:遺産分割協議書の作成

最後に、合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。この書類には相続財産の分割方法や各相続人の取得分を明確に記載し、全員が署名・押印します。遺産分割協議書は後々のトラブル防止や相続手続きの際に重要な書類となります。

遺産分割協議を円滑に進めるためのポイント

遺産分割協議を円滑に進める上では、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • ポイント①:相続人全員の参加と合意形成を徹底する
  • ポイント②:公平性を保ちつつ個別の事情に配慮する
  • ポイント③:専門家のサポートを適切に活用する

それぞれ詳しく解説します。

ポイント①:相続人全員の参加と合意形成を徹底する

遺産分割協議を円滑に進めるためには、相続人全員の参加と合意形成が不可欠です。1人でも欠けると、その協議は無効となってしまいます。

まずは、相続人全員の連絡先を確認し、協議の日程調整を行いましょう。遠方に住んでいる相続人がいる場合は、オンライン会議システムの利用も検討するとよいでしょう。

協議の場では、各相続人の意見をしっかりと聞き、互いの立場を理解し合うことが大切です。感情的になりがちな話し合いですが、冷静に議論を進める必要があります。

また、協議の内容を議事録として残すことで、後々の誤解や行き違いを防ぐことができます。全員の合意を得るまでに時間がかかっても、粘り強く話し合いを続けることが重要です。

ポイント②:公平性を保ちつつ個別の事情に配慮する

遺産分割では、単純に金額や割合で平等に分けるだけでなく、各相続人の事情に配慮することが大切です。

例えば、被相続人の介護をしていた相続人には多めに配分したり、経済的に困窮している相続人に配慮したりするなど、個別の事情を考慮することで、より公平な分割が可能になります。

また、相続財産の中に不動産がある場合は、その管理や維持費用も考慮に入れる必要があります。

相続人のなかで不動産を相続する人には、その分の負担も考慮して他の財産を調整するなど、長期的な視点での公平性を保つことが重要です。

このように、単なる数字上の平等ではなく、各相続人の生活実態や将来の見通しも踏まえた上で、バランスの取れた分割を目指しましょう。

ポイント③:専門家のサポートを適切に活用する

遺産分割協議は法律や税金に関する専門的な知識が必要となるため、弁護士や税理士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。

専門家は、相続に関する法律知識や税務の観点から適切なアドバイスを提供してくれます。また、中立的な立場から協議をサポートしてくれるので、相続人間の感情的な対立を和らげる効果も期待できます。

特に、相続財産に不動産や事業用資産が含まれる場合や、相続税の申告が必要な場合は、専門家の助言が不可欠。

相続税の節税対策や不動産の評価方法など、専門的な知識が必要な場面で適切なアドバイスを受けることで、より円滑な遺産分割が可能になります。専門家への相談費用はかかりますが、長期的に見れば遺産分割を円滑に進める上で大きな助けとなるでしょう。

遺産分割協議で注意すべき点

遺産分割協議を進める上では、以下の点にも留意しましょう。

  • 注意点①:後から遺言書や新たな財産が見つかった場合の対応を考慮する
  • 注意点②:相続税の納付を見据えて協議を進める
  • 注意点③:未成年者や行方不明者がいる場合の特別な対処法を把握する

次項より、個別に解説します。

注意点①:後から遺言書や新たな財産が見つかった場合の対応を考慮する

遺言書が見つかった場合、その内容が優先されるため、すでに行った遺産分割協議の見直しが必要になる可能性があります。

また、新たな財産が発見された場合も、再度協議が必要になります。このようなリスクを軽減するため、事前に十分な調査を行うことが大切です。

注意点②:相続税の納付を見据えて協議を進める

前述したように、相続税の申告期限は相続開始を知った日から10ヶ月以内であり、この期限までに遺産分割を終えることが望ましいといえます。

また、相続税の節税対策も考慮しながら遺産分割を行うことで、相続人全体の税負担を軽減できる可能性があります。

注意点③:未成年者や行方不明者がいる場合の特別な対処法を把握する

未成年者の場合、親権者が代理人となりますが、親権者も相続人である場合は利益相反の問題が生じるため、特別代理人の選任が必要になります。行方不明者がいる場合は、不在者財産管理人の選任が必要になる場合があります。

遺産分割協議がまとまらない場合の対応方法

遺産分割協議が円滑に進まない場合、次の対応方法があります。

  • 対応方法①:調停の申立て
  • 対応方法②:審判の申立て

それぞれ個別に解説します。

対応方法①:調停の申立て

調停は、家庭裁判所に申し立てる比較的柔軟な解決方法です。調停委員が中立的な立場から相続人間の調整を行い、合意形成を支援します。

調停のメリットとしては、費用が比較的安く、非公開で進められるためプライバシーが守られることが挙げられます。また、柔軟な解決策を見出せる可能性が高く、当事者間の関係を壊さずに解決できる可能性も高いです。

調停の進め方は通常、家庭裁判所に申立てを行い、調停期日が設定され、相続人全員が出席します。その後、調停委員のもと話し合いを重ね、合意に至れば調停調書が作成され、これに基づいて遺産分割が行われます。

対応方法②:審判の申立て

調停で合意に至らなかった場合、または当初から調停を経ずに審判を申し立てる場合もあります。

審判では、裁判官が法律に基づいて判断を下します。審判の特徴としては、裁判官の判断に強制力があり、法律に基づいた判断がなされるため公平性が保たれる点です。

ただし、調停よりも時間と費用がかかる可能性があり、当事者の意向よりも法定相続分が重視される傾向があります。

審判の進め方は通常、家庭裁判所に申立てを行い、裁判官による審問が行われます。必要に応じて財産評価などの調査が行われ、最終的に裁判官が審判を下し、これに基づいて遺産分割が行われます。

まとめ

遺産分割協議は、相続人全員の合意形成が不可欠な重要なプロセスです。本記事で解説した手順やポイントを押さえ、注意点に気をつけることで、円滑な遺産分割が可能になります。

しかし、相続財産の評価や税務上の問題、法的な課題など、専門的な知識が必要な場面も多くあります。

特に、相続税の申告が必要な場合や、不動産などの複雑な財産が含まれる場合は、専門家のサポートが不可欠です。遺産分割協議でお悩みの際は、弁護士や税理士などの相続の専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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