借金を支払えなくなった場合、「自己破産」をすると所有している不動産はどうなるのでしょうか。自分一人の名義ではなく、もし「共有名義の不動産の場合は他の共有者へ影響もされるため、しっかりと影響範囲を把握しておく必要があります。
今回は、自己破産した際に「共有名義の不動産がどのようになるのか」「またどのように対処するべきなのか」について紹介します。
目次
自己破産とは?
自己破産とは、債務の返済ができなくなった際に、裁判所に自分で申し立て、財産をお金に換え、債権者に分配することで負債を帳消しにする手続きのことです。「破産法」という法律で定められた正式な救済措置であり、生活を再生させるための制度(※1)。
自己破産が検討されるケースの一例としては、以下のとおりです。
【自己破産を検討するケース一例】
- 多重債務により支払いきれない
- 給与などが差し押さえられた
- 利息の支払いしかできない
このような状態が続いてしまうと、自己破産を考えることになるでしょう。
自己破産のメリット
ここからは、自己破産のメリットをご紹介します。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 借金がなくなる
- 取り立てがなくなり精神的負担が減る
- 自己破産後に得た財産は没収されない
次項より、それぞれについて解説します。
借金がなくなる
借金がゼロの状態になることが、最大のメリットです。自己破産には借金の限度額はないため、裁判所で「免責決定」の判断が行われたらすべての返済が不要になります。
対象となる負債は下記のとおりです。
【対象となる負債一例】
- 消費者金融からの借り入れ
- 住宅ローン
- 車のローン
- クレジットカード滞納金
- リボ払い
- 連帯保証債務
- 携帯電話料金(未払い分)
- 家賃(未払い分)
など
取り立てがなくなり精神的負担が減る
債務者からの請求や取り立てがなくなったり、給料などを差し押さえられる強制執行を止められます。「借金に追われている」という精神的ストレスから解放されることもメリットといえるでしょう。
自己破産後に得た財産は没収されない
自己破産をすると価値ある財産は失われます。しかし、自己破産後に得た財産は没収されません。財産もすべて失うわけではないため、最低限生活するための現金や衣類・家電などは残すことが可能です。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリットとしては、以下のとおりです。
- 所有している資産がほぼなくなる
- ローンを組めなくなる
- 仕事が制限されることも
- 連帯保証人が借金返済をすることになる
ここからは、それぞれについて解説します。
所有している資産がほぼなくなる
預貯金や価値のある財産はほとんど失われてしまいます。没収されるものは下記のとおりです。
【没収されるもの一例】
- 不動産(家・土地)
- 売却をして20万円を超える車や宝石、保険など
- 99万円を超える現金
車やバイクなどは、古くなっていれば20万円を超えないため没収を免れる可能性があります。しかし、家や土地などの不動産は没収を避けることができないでしょう。
ローンを組めなくなる
「個人信用情報」に、自己破産したことが事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリストに載る」状態になってしまうため、「お金を貸しても返されない」と判断され、ローンが通らなくなってしまいます。事故情報が登録される期間は5〜10年ほどで、この期間は家や車を買うことが難しくなってしまうのです。
さらに、ローン同様、個人信用情報に自己破産の記録が残っている間はクレジットカードを作ることもできません。そのため、買い物などで不便さを感じることがあるでしょう。
仕事が制限されることも
自己破産の手続き中、いくつかの業種は一時的に仕事ができなくなる場合があります。しかし、自己破産を理由に会社を解雇されることはなく、資格も剥奪されることはありません。
仕事が制限される期間は、破産手続き開始決定後から免責決定が確定するまでであり、2〜6ヶ月程度かかることもあります。
制限される職種については、以下のとおりです。
【制限される業種】
- 弁護士、税理士、司法書士、公認会計士などの士業
- 貸金業者、生命保険外交員などの金融関連業
- 公正取引委員会、教育委員会、公証人などの一部公務員
- 警備員
- 旅行業者
- 宅建業
- 調理師
など
連帯保証人が借金返済をすることになる
自己破産による免責は申し立てをした本人が受けるため、保証人や連帯保証人がいる場合は、その人に支払い義務が移行してしまいかねません。配偶者が連帯保証人になっている場合、家族で自己破産になるというケースもあります。
自己破産をすると共有持分はどうなる?
自己破産をすると不動産は失われると上述しました。それでは配偶者や他人と共有している不動産を持っている場合はどうなるのでしょうか。具体的には、以下のような点が懸念されます。
- 共有持分を失う
- 破産管財人によって処分される
- 競売が行われる
それぞれ、個別に解説します。
共有持分を失う
破産者が持っている共有持分は、自己破産をすることによって失われてしまいます。共有持分とは、1つの不動産を2人以上で所有している際にそれぞれが持っている所有権の割合のこと。つまり、共有持分を失うということは不動産の所有権がなくなるため、そこに住む権利や管理・売却などを行う権利がなくなるということを意味します。
破産管財人によって売却される
破産者の財産を預かり、債権者へ配当する「破産管財人」によって、共有持分は売却されます。破産管財人は共有持分の任意売却を進めたり、他の共有者へ買い取りを持ちかけたりします。
共有持分の任意売却が難しい場合、破産管財人は共有物分割請求を行うことがあります。共有物分割請求とは、裁判所を通して分割方法などを決めることで、その方法は下記のとおりです。
【分割方法】
- 現物分割…不動産を物理的に分ける方法。建築物が建っていない土地のみの場合に適用されることがほとんど。
- 価格賠償(代償分割)…共有者の誰か1人がすべての持分を買い取り、他の共有者に代償金を支払う方法。
- 換価分割…第三者に売却して、経費を差し引いて残ったお金を共有持分に応じて共有者全員に分配する方法。
競売が行われる
住宅ローンが残っており、不動産全体に抵当権が設定されている場合、競売になることがあります。しかし、共有持分にしか抵当権が設定されていない状態であれば不動産全体を競売にかけることはできません。
共有者が自己破産した場合の影響
配偶者や他人と不動産を共有している状態で、その人が自己破産をして共有持分を失った場合、自分の持分はどうなるのでしょうか。考えられるのは、以下のような事柄です。
- 自分の持分を失うことはない
- 第三者との共有状態になる
- 管理や売却などが自由にできなくなる
それぞれについて、以下より解説します。
自分の持分を失うことはない
自分以外の共有者が自己破産をして不動産の所有権を失ったとしても、自分自身が自己破産をしていなければ、共有持分を失うことはありません。たとえ破産者が配偶者であっても同様。
しかし、配偶者の場合、自分が「連帯保証人」になっていればその債務が自分に移行するため注意が必要です。
第三者との共有状態になる
破産者の共有持分は、他の人のものとなります。例えば、夫婦名義の不動産で、夫の自己破産により夫が持っていた共有持分が失われた場合、妻の所有権は失われないためそのまま住み続けることはできますが、知らない人や不動産会社と共有している状態になってしまいます。管理や売却などが自由にできなくなる
知らない人や不動産会社と共有状態になってしまうと、不動産の管理や売却が自由にできなくなってしまいます。「古くなったので家を改築したい」「人に家を貸したい」などと思ったとしても、共有者が合意しなければ成立しません。
コミュニケーションが取りづらい他人との共有状態は、管理や売却がスムーズにいかずストレスを感じる場合があるでしょう。
共有者が自己破産したときの対処法①:任意売却
他の共有者が自己破産をして共有持分を失った場合、上記のような影響が出る可能性があります。知らない人と共有状態になると、管理や売却の問題以外にもトラブルを招くことがあるため「任意売却」検討されます。
任意売却とは、債務者・金融機関とで協議を行い、自主的に不動産を売却する方法。共有者が自己破産をした場合、破産管財人と協力して、任意売却を行います。
通常、ローンが残っていると勝手に家を売ることができないのですが、任意売却であれば可能になります。競売よりも高額で売れる可能性があるため、残ローンを減らすことができるでしょう。自宅を失うことにはなりますが、他人との共有状態を避けられます
2人以上で共有している不動産を任意売却するためには、共有者全員の合意が必要となります。「自己破産することを知られたくない」という場合でも、素直に話さなければ合意を得られないかもしれません。上述した「共有者が自己破産した場合の影響」を伝え、任意売却をすることのメリットを理解してもらいましょう。
任意売却を行うメリット
自己破産前に任意売却をすることのメリットとしては、次のとおりです。
- ①:借金返済にあてられる
- ②:他の共有者へ迷惑をかけずにすむ
- ③:競売を避けることができる
それぞれ、個別にみていきましょう。
①:借金返済にあてられる
任意売却は競売よりも高額で売れる場合があるため、ローンなどの借金返済にあてることができます。自己破産を避けることができるかもしれません。
②:他の共有者へ迷惑をかけずにすむ
上述したとおり、自己破産をして共有持分を失うと、他の共有者は知らない人や不動産会社と共有状態になってしまいます。そうなると迷惑やストレスを与えてしまうことになるばかりでなく、破産者本人にクレームが来る可能性もあります。
自己破産の前に任意売却をしておくことで、このようなトラブルを回避できるでしょう。
③:競売を避けることができる
競売になると、その情報が全国に公開されるため、あらゆる人が不動産を見に来る場合があります。そうなるとプライバシーを侵害されることもあるでしょう。
任意売却であれば、通常の不動産売買と同様、自分たちの意向で売却可能。周囲の人にも「借金があるから競売になった」などと知られることなく、売ることができます。
「同時廃止」になる可能性には注意
自己破産には「管財事件」「同時廃止」の2種類がありますが、同時廃止には留意するようにしましょう。
管財事件とは、一定以上の財産がある場合に選択されるもので、高額な管財予納金を支払う必要があります。家などの不動産を持っていると「一定以上の財産がある」とみなされて「管財事件」を選択される可能性があります。
【同時廃止の条件】
財産額が33万円未満
【管財事件の条件(※下記のいずれかに該当した場合)】
- 財産額が33万円以上
- 法人代表者や個人事業主
- 債務額が5000万円以上
- 免責不許可事由がある、または調査の必要性がある
任意売却により不動産を手放しておけば「財産がない」と判断され、「同時廃止」が選択される可能性があります。同時廃止は管財予納金を支払う必要がなくなるほか、破産管財人の選任もないため、「管財事件」と比べて手続きが簡単になることもメリットです。
共有者が自己破産したときの対処法②:持分の買い取り
自己破産前に共有持分を処分する方法としては、「持分を誰かに買い取ってもらう」という選択肢もあります。具体的には、以下の2パターンです。
- 他の共有者に持分を買い取ってもらう
- 自分の持分を業者に買い取ってもらう
ここからは、それぞれについて解説します。
他の共有者に持分を買い取ってもらう
破産管財人や、破産者の共有持分を買い取った業者などから「持分を買い取らないか」といった連絡が来るケースがあります。自分に資産があるのであれば、共有持分を買い取り、単有状態にするのもよいでしょう。
他人との共有状態を避けることができ、不動産の売却・管理などが自分1人の判断できるため、メリットは多く存在します。
買い取り価格は通常、不動産価格から共有持分割合を算出した額になりますが、相手との交渉で自由に決めることが可能
他の共有者が任意売却を拒否する場合、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうことも検討しましょう。
自分の持分を業者に買い取ってもらう
他の共有者が任意売却や持分の買い取りに積極的ではない場合、専門の業者に持分のみを売却できます。持分を失うことでその家に住むことはできなくなりますが、買い取ってくれた金額によっては、自己破産を免れることができるかもしれません。
まとめ
共有持分を持っている状態で自己破産手続きをしてしまうと「管財事件」となり、費用や手間がかかる可能性があります。
そもそも自己破産にはデメリットも多いため、自身で解決できるのであれば回避したいものです。任意売却や持分売却によって自己破産を回避できるかもしれないため、手続きをする前に不動産業者などのプロに相談してみましょう。
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