共有持分【売却・買取】

共有名義不動産の売却価格の決まり方とは?基準についてわかりやすく解説

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不動産を購入する際、「夫婦でペアローンを使って不動産を共有し」「相続で兄弟姉妹間で不動産を共有する」といったケースもあります。しかし、何かしらのトラブルで共有不動産を売却したいとなった時に「どれくらいで売れるのか」も、同時に気になるのではないでしょうか。

今回は、共有名義の不動産の評価方法と実際の売却価格について紹介します。共有不動産の処遇について不安をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

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共有名義の不動産の評価方法は?

不動産の価値を評価するといっても、さまざまな不動産評価基準があり「絶対的な価格基準はない」といえます。

例えば、固定資産税を課税するためには、「固定資産税評価証明書」に記載されている評価額が基準。

しかし、相続税などに使われる「路線価(相続税路線価)」や、売却価格の基準となる「市場価格(不動産業者が物件の立地や条件をもとに査定した金額)」などを用いるケースもあります。

遺産分割の際にどの価格を使うかについては、法律上の定めはなく「法定相続人(民法の範囲内の相続人)全員が納得する基準であればよい」と認識しましょう。

しかし、明確な基準がないからこそ、紛争のポイントになりやすいのも事実。遺産分割が裁判になった場合、評価方法を決めるまでに多くの時間を要することになります。

特に、不動産が共有名義の場合、評価方法は単純ではありません。

「不動産の価格 × 共有持分の割合」であれば、比較的スムーズに手続きが進むでしょう。しかし、実際に共有持分だけを市場で売買しようとすると、それよりもずっと低い価格になると考えなければならないのです。

実際の価格は「土地の立地条件」「広さ」「形状」など、さまざまな要素に左右されます。

共有不動産は資産価値が極端に低い

結論をいえば、共有不動産の価値は「極点に低い」のが実情です。共有不動産の資産価値が低くなってしまう具体的な理由は以下のとおり。

  • 共有者が占有している場合は住めない
  • 勝手に不動産を売却することができない
  • 勝手に不動産を貸せない
  • 税金を支払わないといけない

次項から、それぞれについて解説します。

共有者が占有している場合は住めない

不動産が共有状態にある場合、共有者全員がそれぞれの持分に応じて不動産全体を使用・享受する権利を有しています。

ただし、持分の比率によって、以下のように行使できる権利の範囲が異なります。

  • 保存行為:単独で可能
  • 変更(処分):行為単独では不可能
  • 管理行為」:共有持分割合の過半数の合意が必要

当該不動産に実施する行為が重要であればあるほど、それを決めるためにはより多くの共有者の同意が必要。共有持分は、物理的に「この部分を誰が所有しているか」という問題ではなく、「全員が全体の権利を持っている」という特徴を持っているためです。

とはいえ、現実には「共有者のうち一人だけがその不動産に住んでいる」といった状況も多々あることでしょう。

そうなると、他の人が占有することは事実上不可能ですし、自分の持分に見合った賃料を要求しても払ってもらえないケースも存在します。

このように、共有不動産は「買っても扱いづらい」という特徴から、資産価値が低くなってしまうのです。

勝手に不動産を売却することができない

前述のとおり、「変更(処分)行為」は共有者全員が同意しなければ実行できません。「不動産全体の売却」は、変更(処分)行為になるため、一般的な不動産に比べて非常に手間がかかってしまうのです。

不動産の売却や抵当権設定は、不動産を処分する最も重大な行為であり、他の共有者の意向を無視して強引に行うことは許されません。その意味で、共有者の当事者になることは非常にリスクが高いといえるでしょう。

勝手に不動産を貸せない

共有不動産は、第三者の貸し出しに関しても制限があります。不動産を賃貸することは前述の管理行為にあたり、持分の過半数の同意が必要。

さらに、長期間の賃貸借契約の場合は、変更(処分)行為となり、共有者全員の同意が求められます。

税金を支払わないといけない

評価額が一定額以上の不動産を所有している場合、毎年「固定資産税」を支払わなければなりません。これは、不動産を占有している人だけでなく、共有者全員に課せられた義務です。

もちろん、誰が支払うかは共有者同士で決めることができますが、買い手側からしたら面倒に感じるケースもあるでしょう。

不動産の評価基準と売却方法

では、共有不動産はどのように評価されるのでしょうか。以下より、2つのケースに分けて論考していきます。

ケース①:共有者へ売却したい

実務的には、共有物件の自分の持分だけを売却するケースでは、共有者の一人に売却する。あるいは、親族に売却するのが一般的です。

個人売買であれば、合意があればもちろん好きな価格を設定可能。しかし、相場よりもはるかに低い価格を設定した場合「みなし贈与」とみなされて贈与税が課税されてしまうので注意が必要です。

つまり、親族間で売却するにしても、ある程度客観的な基準を知っておかなければならないといえます。 不動産の価格基準としては、以下のとおりです。

決定者目的概要
市場価格(実勢価格)
  • 不動産業者
  • 売買当事者

など

  • 売買
相続税路線価
  • 国税局
  • 相続税
  • 贈与税の計算
固定資産税評価額
  • 市町村
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税の計算

上記の内、「市場価格 = 100」とすると、「相続税路線価 = 市場価格の80%程度」「固定資産税評価額 = 市場価格の70%程度」となります。共有持分については、さらに持分割合を乗じた金額になるのが一般的。

以上のように、主に市場価格を参考にして価格を決めれば、相場と大きく乖離することはないといえます。

ケース②:第三者に売却したい

次に、第三者に売却する場合を考えてみましょう。前述のとおり、「処分行為」としての売却には共有者全員の同意が必要ですが、これはあくまでも不動産全体を売却する場合。

「自分の持分だけを売りたい」というのであれば、自己判断で売却可能です。

しかし「そもそも共有状態の不動産が売れるかどうか」はまた別の話になるでしょう。本来であれば、このような物件は身内以外には購入される可能性は低いので、売却は諦めるべきといえます。

しかし、共有名義の不動産など、訳あり物件を専門的に購入する不動産業者が存在します。

専門業者は、購入後に他の共有者と話し合い、最終的に単独所有にするために、共有持分を購入しています。

他の共有者が自分の持分を買ってくれそうにない場合は、第三者に売却できれば将来的な負担を減らしていけるでしょう。

共有持分を買い取ってくれる専門業者や、高額で売却するためのポイントについては、以下の記事でも解説しています。こちらもご参照ください。

関連記事:共有持分の買取業者を得意ジャンル別に9社紹介|買取依頼のメリットや選び方も解説

関連記事:共有持分の高額買取業者の選び方とは? 買取相場や価格査定のポイントも解説

結論:共有不動産はいくらで売却できるのか?

では、共有不動産はいくらで売却できるのでしょうか。市場価格が3,000万円の家を兄弟で1/2ずつ所有している場合で考えていきます。 前述したとおり、共有不動産は市場価値が著しく低くなってしまいます。

そのため、単純に3,000万円の不動産の持分を1/2所有していたとしても、1,500万円で売れることは稀でしょう。

それは「他の共有者の状況」「占有している人はいるのか」「住宅ローンが残っているかどうか」など、さまざまな状況によって価格が変動するため。一概には言えませんが、市場価格の持分割合から、40〜60%ほどの掛け目が入った金額になるでしょう。

例)市場価格3,000万円 持分1/2の売却査定の計算式

  • 1,500万円 × 60% = 900万円

このように、市場価格よりも低い金額で売却することにはなるのが実際のところです。しかし「自分だけが税金を払わされている」「共有者から正当な利益が支払われていない」という場合は、売却して共有状態を解消するのは有用な選択肢になるといえます。

家族の場合、話がしにくいからといって未解決のままにしておくと、子どもの世代にまで負担を強いることになるかもしれません。

相続に関わる人が多ければ多いほど、当事者同士の話し合いは難しくなります。共有不動産の処分について悩んでいる方は、早い段階での共有状態の解消を目指しましょう。

まとめ

不動産の価格を評価する方法には、市場価格、路線価、固定資産税評価額などがあり、計算目的に応じて使い分けることができます。

共有持分だけを売買することは理論的には可能。しかし、共有不動産の処分や利用には制限があるため、不動産全体で売却した場合よりも、自分の持分だけの売却はかなり低い価格になると考えた方がよいでしょう。

とはいえ、共有持分を所有し続けることにもリスクがありますので、早い段階での売却も選択肢の1つ。外部専門家にも相談しつつ、売却を検討するのも賢明といえます。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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