滅失登記は、火災や自然災害、解体などにより建物が物理的に存在しなくなったことを正式に記録するために行われる手続きです。これにより、登記簿から建物の記録を削除し、正確な不動産の状態を反映させられます。
今回の記事では、滅失登記の概要や手続きの流れ、必要な書類、費用について詳しく説明します。滅失登記について包括的に理解したいとお考えの方は、ぜひお役立てください。
目次
滅失登記とは
住宅や店舗などの建物に関しては、その構造や所有者情報をはじめとする詳細が客観的に分かるように法的な手続きを経て登記されています。
この登記制度のなかで、建物が解体や自然災害などにより物理的に存在しなくなった際、その状況を正式に記録する登記のことを「滅失登記」といいます。
不動産登記は主に二つの部分に分かれています。ひとつは表題部登記で、ここには建物の構造、面積、建築年などの物理的特徴が記載されます。もう一方は権利部登記で、ここには建物の所有者の情報や抵当権などの権利関係が記録されています。
通常、建物はこのように登記されているため、その状況に変更が生じた際(例えば建物の滅失)は、その変更を登記記録に反映させる必要があります。
滅失登記の期限
建物の所有者や登記名義人は、建物が滅失した日から1ヶ月以内に滅失登記を申請する義務があります。
この義務を怠った場合、10万円以下の過料に処されることが法律で定められています。この短い期間内に申請する必要があり、さらに罰則が存在するため、建物の滅失を受けて迅速な対応が求められます。
滅失登記の申請を行う人
滅失登記の申請は、建物の所有者が行います。建物が複数人で共有されている場合でも、共有者の一人が単独で申請することが可能です。
さらに、解体時点で所有者がすでに亡くなっている場合は、相続人の中から一人が代表して滅失登記の申請を行えます。
滅失登記を行なっていないとどうなる?
滅失登記を怠ると、複数のリスクに直面する可能性があります。これには、過料の支払い、固定資産税の継続的な課税、土地の売却や再建築の障害などが含まれます。
たとえ建物がすでに取り壊されていても、その事実が地方自治体に知られなければ、固定資産税は引き続き課され続けます。
土地を売却しようとする際に、登記簿上に建物の記録が残っていると、売却プロセスに支障を来す可能性がある点には留意しましょう。
滅失登記の必要書類
滅失登記の際には、次の書類が必要になってきます。
- 建物滅失登記申請書
- 建物滅失証明書(取り壊し証明書)
- 解体業者の資格証明書
- その他
以下より、個別にみていきましょう。
建物滅失登記申請書
建物滅失登記申請書は、建物が火災、自然災害、解体などの理由で物理的に存在しなくなった際に使用される公的書類です。この申請は、法務局において建物の登記記録を削除する目的で行われ、登記簿から建物が存在しないことを公式に記録するために必要です。
この申請書には、以下のような詳細情報が含まれます。
- 建物の所在地:建物が存在していた正確な場所。
- 建物の種類と構造:例えば、木造、鉄骨造、コンクリート造など。
- 建物の所有者:登記簿に記載されている所有者の名前。
- 滅失の原因と日付:建物が無くなった原因とその日付。
- 申請者の情報:申請者の名前、住所、連絡先。
- 添付書類:建物滅失を証明する書類、例えば解体業者の証明書や火災の消防署報告書など。
建物滅失証明書(取り壊し証明書)
建物滅失証明書、あるいは取り壊し証明書は、建物が実際に解体されたことを証明する文書です。
この書類は、解体工事を行った業者によって発行されます。解体から時間が経過し、工事業者の情報が不明確である場合や、証明書を紛失した場合の対応方法については、後に詳細を解説します。
解体業者の資格証明書
解体工事を行った請負人が法人の場合、法人代表者の資格を示す書面と印鑑証明書を添付する必要があります。個人が請負人である場合には、その人の市町村登録の印鑑証明書を添付します。
ただし、解体業者が法人である場合、建物滅失登記申請書に会社法人番号を記載することで、これらの証明書類を省略できることもあります。
その他
建物の所有者の状況に応じて、以下の書類が必要となるケースがあります。
- 住所変更が証明できる書類(住民票や戸籍謄本など)
- 氏名変更が証明できる書類(戸籍謄本や除籍謄本など)
- 代理権限証書(委任状)
- 被相続人(亡くなった人)との相続関係を証明する書類(所有者の戸籍謄本と除籍謄本、申請者の戸籍謄本など)
登記事項証明書の住所・指名が異なる場合、それぞれを示す「住所変更が証明できる書類」「氏名変更が証明できる書類」が必要です。
さらに、所有者(存命)が申請できないなら「代理権限証書(委任状)」。すでに死亡しているケースでは、被相続人(亡くなった人)との相続関係を証明する書類が求められます。
滅失登記の申請手順
滅失登記の申請手順は、大きくは以下の2ステップに分けられます。
- Step1.滅失登記に必要な書類を法務局へ提出する
- Step2.登記完了証を受け取る
それぞれ、個別に解説します。
Step1.滅失登記に必要な書類を法務局へ提出する
滅失登記の手続きには、いくつかの重要な書類が必要です。これには登記申請書、登記済証または権利証、登記識別情報通知、印鑑証明書などが含まれます。
これらの書類は、不動産の所有者またはその代理人が準備し、法務局へ提出する必要があります。
登記申請書には、登記の目的、不動産の所在地、面積、所有者の情報などを正確に記入することが求められます。これらの情報の正確性は手続きの進行において非常に重要。
書類を準備したら、解体された建物の所在地を管轄する法務局に提出します。注意点として、提出先は最寄りの法務局ではなく、対象の建物の所在地を管轄する法務局である必要があります。この点に注意して間違いがないようにしましょう。
書類の提出は郵送でも可能ですが、直接窓口で提出し、その場で書類の確認をしてもらう方が迅速です。ただし、管轄の法務局が遠方にある場合は、簡易書留を使用して書類を郵送することを推奨します。これにより、個人情報を含む大切な書類の受領を確認できます。
提出した書類に不備がある場合、訂正用の印鑑を持参していると、その場で修正し再提出が可能です。
もし後日不備が発覚した場合は、申請書に記載された連絡先に電話がありますので、その指示に従って修正を行いましょう。場合によっては、書類を郵送で再提出する必要があります。
Step2.登記完了証を受け取る
滅失登記の申請が無事に受理され、手続きが完了すると、法務局から1〜2週間程度で「登記完了証」が発行されます。この証明書を受け取ることで、滅失登記の手続きは正式に完了します。
郵送での受け取りを選択した場合、通常は2〜3週間で自宅に登記完了証が届きます。
ただし、法務局の混雑状況によっては、処理に予想以上の時間がかかることもあります。登記完了の通知がない場合や不安がある場合は、滅失登記を申請した法務局に直接問い合わせましょう。
滅失登記に関するQ&A
ここまで滅失登記の基本情報について解説しましたが、ここからは補足として頻繁に疑問点として挙がる以下の質問事項に対する回答を紹介します。
- 滅失登記を自分で行う場合の費用は?
- 土地と建物の所有者が違う場合は?
- 滅失登記の委任状が必要なケースは?
次項より、個別にみていきましょう。
滅失登記を自分で行う場合の費用は?
自分で滅失登記を行う場合、必要となる費用は概ね800円から1000円程度ですが、最大で1500円程度を見積もっておくと安心です。
費用は、登記事項証明書や図面などの書類を取得する際に必要な手数料。書類を郵送で提出する場合には切手代が別途必要ですが、通常は1500円以内で収まることが一般的です。
滅失登記の申請自体には、これら実費以外の費用は発生しません。
土地と建物の所有者が違う場合は?
登記上、自分が所有する土地に他人名義の建物がある場合、土地所有者はその建物に関する滅失登記申請は行えないのが実情です。しかし、表題部登記に関しては、登記官が職権で登記を行うことが可能。
そのため、土地所有者は申し出を行うことで、登記官による職権登記を促せます。
滅失登記の委任状が必要なケースは?
建物の所有者以外が滅失登記の手続きを行う場合、委任状が必要です。これは、土地家屋調査士に手続きを依頼する際にも必須の書類となるため、しっかりと把握しておきましょう。
滅失登記の代行業務は土地家屋調査士に依頼しよう
「土地の売却や再建築を急いでいる」「所有者が既に亡くなっている」場合など、滅失登記を迅速かつ正確に行うためには、土地家屋調査士への相談が推奨されます。
土地家屋調査士は「土地や建物の登記に必要な調査や測量」を専門とするプロフェッショナルで、滅失登記の代行は土地家屋調査士にしか許されていない特殊なケースがあります。
土地家屋調査士に手続きを依頼する際の費用は、一般的な案件であれば3万円から5万円程度に収まるでしょう。ただし、具体的な内容や必要な手続きの複雑さによって、費用は異なることがあるため、事前に確認をとるのが賢明です。
まとめ
滅失登記は、建物がなくなった事実を法的に確定させ、登記簿を正確に保つために不可欠です。滅失登記は、登記簿を正確に保つために不可欠なプロセスであり、適切な手続きを行うことで将来的な問題を避けられます。
ただし、滅失登記の手続きや必要書類の収集・作成には専門的な知識が求められます。不明点がある場合や、より複雑なケースでの対応が必要な場合は、専門家に相談しましょう。
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