共有持分【法律・税金】

共有持分を取得した場合にかかる「取得税」とは?節税対策もセットで解説

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複数人で不動産を取得する共有持分のケースでは、取得税の計算や申告が複雑になり、共有者間で税負担の不公平が生じるといった問題が発生します。

その際に重要となるのが共有持分の取得税に関する正確な知識です。共有持分の取得税とは、共有者がそれぞれの持分に応じて負担する不動産取得税のことです。

適切な理解がないと、過大な税負担や申告漏れのリスクが高まります。そこで本記事では、共有持分の取得税について、知っておくべき知識を網羅的に解説します。

共有持分の取得税とは

共有持分の取得税は、複数の所有者が存在する不動産の一部分を取得した際に課される税金です。

この税金は、通常の不動産取得税と同様に、不動産を取得した者に対して都道府県が課すものです。しかし、共有持分の場合、その課税方法や計算方法に独特の特徴があります。

共有持分を取得する場合、その持分割合に応じて取得税が課されます。例えば、100平米の土地を2人で折半して共有する場合、各自が50㎡分の取得税を負担することになります。

この仕組みにより、取得者は自身の持分に応じた適切な税額を支払うことになります。

共有持分における取得税の特徴

共有持分の取得税には、いくつかの特徴的な点があります。そのなかでも特に重要なのは、居住用と非居住用での取り扱いの違いです。

居住用の不動産を共有持分で取得した場合、住宅取得に関する軽減措置が適用される可能性があります。

この軽減措置は、一定の条件を満たす場合に適用され、取得税の負担を大幅に軽減することができます。例えば、新築住宅や一定の中古住宅を取得した場合、課税標準額から一定額が控除されるなどの特例があります。

一方、非居住用の不動産を共有持分で取得した場合は、通常の取得税率が適用されます。その場合、軽減措置の適用はありませんが、持分割合に応じた課税が行われるため、全体の不動産価値に対する税負担は軽減されます。

このように、共有持分の取得税は、通常の不動産取得税とは異なる特徴を持っています。取得者は、自身の持分割合や不動産の用途に応じて、適切な税額を負担することになります。

共有持分を取得する際は、これらの特徴を十分に理解し、税負担を正確に把握することが重要です。

共有持分取得時の課税方法

共有持分を取得する際の課税方法は、通常の不動産取得とは異なる特徴を持っています。この方法は、取得する持分の割合や不動産の用途によって大きく左右されます。

持分割合に応じた課税が為される

共有持分の取得税は、取得した持分の割合に応じて課税されます。例えば、100平米の土地を3人で共有し、そのうちの1人が3分の1の持分を取得した場合、その人は33.33平米分の取得税を負担することになります。

この仕組みにより、取得者は自身が実際に所有することになる部分に対してのみ税金を支払うことになります。

持分割合に応じた課税方式は、公平性を保つ上で重要な役割を果たしています。取得者は、自身の権利に見合った税負担を負うことになるため、不当な課税を避けられるのです。

居住用・非居住用での違い

共有持分の取得税は、その不動産が居住用か非居住用かによっても課税方法が異なります。居住用不動産の場合、多くの自治体で軽減措置が設けられています

これは、住宅取得を促進し、生活の基盤となる住居の取得を支援する目的があります。

一方、非居住用不動産の場合は、通常の税率が適用されることが多くなっています。ただし、一部の自治体では、特定の条件下で非居住用不動産にも軽減措置を設けている場合があります。

共有持分取得税の計算方法

共有持分の取得税を正確に計算するためには、以下の手順で実行しましょう。

  • Step1:固定資産税評価額を確認する
  • Step2:取得する持分割合を決定する
  • Step3:課税標準額を計算する
  • Step4:適用される税率を確認する
  • Step5:控除額を確認する
  • Step6:税額を計算する

それぞれ個別に解説します。

Step1:固定資産税評価額を確認する

まず、取得する不動産の固定資産税評価額を確認します。この評価額は、通常、市区町村の固定資産税課で確認できます。

不動産の実際の取引価格ではなく、この評価額が課税の基準となるため、正確な金額を把握することが重要です。

Step2:取得する持分割合を決定する

次に、取得する持分の割合を明確にします。例えば、2人で均等に共有する場合は、各自の持分割合は2分の1となります。この割合は、登記簿に記載される情報と一致している必要があります。

Step3:課税標準額を計算する

固定資産税評価額に取得する持分割合を乗じて、課税標準額を算出します。ただし、土地の場合は多くの自治体で課税標準額を評価額の2分の1とする特例措置が設けられているため、注意が必要です。

この特例措置を適用すると、実質的な課税標準額が大幅に軽減されます。

Step4:適用される税率を確認する

不動産取得税の標準税率は4%ですが、景気対策や震災などが発生したタイミングでは税率が軽減されることもありますので、適用される税率を確認しましょう。

また、自治体によっては独自の税率を設定している場合もあるため、必ず最新の情報を確認することが重要です。

Step5:控除額を確認する

住宅取得の場合、さまざまな控除措置が適用される可能性があります。例えば、新築住宅や一定の中古住宅を取得した場合、課税標準額から最大1,200万円が控除されます。適用可能な控除措置を確認し、最大限活用することで、税負担を軽減することができます。

Step6:税額を計算する

最後に、(課税標準額 – 控除額)× 税率 で税額を計算します。この計算結果が、実際に納付すべき取得税額となります。計算の際は、小数点以下の端数処理にも注意が必要です。

これらのステップを順に実行することで、共有持分の取得税を正確に計算することができます。ただし、自治体によって細かい規定が異なる場合があるため、必要に応じて管轄の税務署に確認することをお勧めします。

取得税の「軽減措置」とは?

不動産取得税の軽減措置は、住宅取得を促進し、居住環境の向上を図るために設けられた制度です。この制度により、多くの取得者が税負担を軽減できる恩恵を受けています。

共有持分の取得においても、これらの軽減措置は適用される可能性があります。ただし、その適用条件や軽減額は、通常の不動産取得とは異なる場合があるため、注意が必要です。

住宅取得の軽減制度

住宅取得に関する主な軽減制度には、新築住宅や一定の中古住宅を取得した場合、課税標準額から最大1,200万円が控除されるものがあります。この控除により、多くの場合、実際の税負担は大幅に軽減されます。

また、一定の条件を満たす長期優良住宅を取得した場合、さらなる軽減措置が適用されます。この場合、通常の住宅よりも控除額が大きくなり、最大で1,300万円までの控除が可能です。

共有持分の場合、これらの控除は持分割合に応じて適用されます。例えば、2人で折半して住宅を取得した場合、各自の課税標準額から最大600万円(1,200万円の半額)が控除されることになります。

都道府県による軽減制度の違い

不動産取得税は都道府県税であるため、具体的な軽減制度は各都道府県によって異なる場合があります。例えば、東京都では、一定の条件を満たす新築住宅について、最大で1,300万円の控除を設けています。

一方、大阪府では、新築住宅だけでなく、一定の中古住宅についても同様の控除を適用しています。さらに、被災者が住宅を取得する場合や、特定の地域で住宅を取得する場合などに、追加の軽減措置を設けている自治体もあります。

共有持分の取得者は、該当する都道府県の具体的な軽減制度を事前に確認することが重要です。これにより、最大限の税負担軽減を図れます。

共有持分取得時の注意点

共有持分を取得する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 登記と課税のタイミングを確認する
  • 共有者間の税負担の取り決めを行う

それぞれ詳しく解説します。

登記と課税のタイミングを確認する

不動産取得税は、原則として不動産の所有権を取得した時点で課税されます。ただし、登記の日付と実際の取得日が異なる場合があるため、注意が必要です。

例えば、売買契約を締結した日と所有権移転登記の日が異なる場合、実際の取得日(通常は売買契約日)が課税の基準となります。共有持分の場合も同様で、持分の取得日が課税の基準となります。

このタイミングの違いは、税額計算や納付期限に影響を与える可能性があります。取得者は、実際の取得日と登記日を正確に把握し、適切なタイミングで申告・納付を行うことが求められます。

共有者間の税負担の取り決めを行う

共有持分を取得する際には、共有者間で税負担の取り決めを行うことが重要です。原則として、各共有者は自身の持分に応じた税額を負担しますが、実際の支払い方法や精算方法については、共有者間で事前に合意しておきましょう。

例えば、一人の共有者が全額を立て替えて支払い、後日他の共有者から精算を受けるという方法や、各自が自身の持分に応じた税額を個別に納付するという方法などが考えられます。

これらの取り決めを明確にしておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。また、共有者間の良好な関係を維持する上でも、税負担に関する透明性の確保は重要な要素となります。

共有持分を「放棄」した際の取得税の取り扱いはどうなる?

共有持分の放棄は、共有者の1人がその権利を手放す行為です。この場合、放棄された持分は他の共有者に帰属することになりますが、これに伴い取得税が発生しかねません。

放棄された持分を取得した共有者は、その持分について不動産取得税を納付する義務が生じます。ただし、この取り扱いは都道府県によって異なる場合があります。例えば、東京都では、共有者の一人が持分を放棄した場合、他の共有者が新たに持分を取得したとみなし、取得税が課されます。

一方で、相続や遺贈による取得の場合は、多くの自治体で非課税とされています。このため、相続による共有持分の取得と放棄による取得では、税務上の取り扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

共有持分取得税の申告と納付について

共有持分の取得税に関する申告と納付は、取得者自身が行う必要があります。この手続きを適切に行うことで、不要なペナルティを避け、円滑な取得を実現できます。

申告手続きの流れ

不動産取得税の申告は、通常、取得した日から60日以内に行う必要があります。共有持分の場合も同様です。申告の際には、以下の書類を準備しましょう。

  • 不動産取得税申告書
  • 登記事項証明書の写し
  • 売買契約書の写し(売買の場合)
  • 共有持分割合を示す書類

これらの書類を揃えて、不動産が所在する都道府県の税務署に提出します。なお、一部の都道府県では、不動産登記の際に法務局から自動的に情報が税務署に通知されるシステムを採用しています。この場合、取得者による申告が不要となる場合もあります。

納付方法と期限

不動産取得税の納付は、都道府県から送付される納税通知書に基づいて行います。納付期限は、通常、納税通知書の発行日から30日以内とされています。

納付方法には、金融機関の窓口での支払い、口座振替、コンビニエンスストアでの支払いなど、複数の選択肢があります。近年では、クレジットカードやスマートフォン決済アプリを利用した納付も可能になっている自治体も増えてきました。

なお、納付期限を過ぎると延滞金が発生するため、期限内の納付が重要です。また、一定の条件を満たす場合は、分割納付や納付の猶予を申請できる制度もあります。

共有持分取得税の節税対策

共有持分の取得税を適切に管理し、可能な限り節税するためには、以下のような戦略が考えられます。

  • 適切な持分割合を設定する
  • 軽減制度を活用する
  • 市区町村独自の支援制度も確認する

それぞれ詳しく解説します。

適切な持分割合を設定する

共有持分の割合を適切に設定することで、取得税の負担を最適化できる可能性があります。

例えば、居住用不動産を取得する場合、実際に居住する予定の共有者の持分割合を大きくすることで、住宅取得に関する軽減措置をより効果的に利用できるかもしれません。

ただし、持分割合の設定に当たっては、将来の相続や売却なども考慮に入れる必要があります。また、不自然な持分割合の設定は税務上の問題を引き起こす可能性があるため、慎重な検討が求められます。

軽減制度を活用する

共有持分の取得においても、さまざまな軽減制度を活用することができます。例えば、「認定長期優良住宅に関する特例措置」「住宅借入金等特別控除」などを利用することで、より大きな節税効果を得られる可能性があります。

また、取得のタイミングを調整することで、より有利な軽減措置を受けられる場合も考えられます。例えば、年度をまたいで取得することで、複数年度の軽減措置を利用できる可能性があります。

これらの節税対策を検討する際は、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。

市区町村独自の支援制度も確認する

共有持分の取得税に関しては、都道府県レベルの制度だけでなく、市区町村が独自に設けている支援制度にも注目する必要があります

これらの制度は地域の特性や政策目標に応じて設計されており、取得税の実質的な負担を軽減できる可能性が高まるでしょう。

例えば、一部の自治体では、空き家対策の一環として、特定の条件下で共有持分を取得する場合に補助金を支給する制度を設けています。

また、地域活性化を目的として、移住者が共有持分を取得する際に税負担を軽減する施策を実施している自治体もあります。

これらの支援制度は、共有持分の取得税そのものを直接軽減するものではありませんが、総合的な費用負担を考えると大きな影響を与えかねません。

そのため、不動産の所在地となる市区町村の窓口や公式Webサイトで、関連する支援制度の有無を確認しましょう。

共有持分を取得すると発生する取得税以外の税金

共有持分を取得する際には、不動産取得税だけでなく、他の税金についても理解しておく必要があります。

特に重要なのは登録免許税と固定資産税です。これらの税金は、取得時や所有期間中に発生し、共有者の財政的負担に大きな影響を与える可能性があるのです。

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転登記を行う際に課される国税です。共有持分を取得した場合も、この税金の納付が必要となります。登録免許税の計算方法は以下のとおりです。

  • 登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 税率

税率は取得する不動産の種類や取引の形態によって異なりますが、一般的な売買による所有権移転の場合、以下のようになります。

内容税率
所有権の保存0.4%
売買または競売による所有権の移転2%
相続または法人の合併による所有権の移転0.4%
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等)2%

ただし、住宅用家屋の所有権移転登記については、令和6年3月31日までの特例措置として、一定の条件を満たせば税率が0.3%に軽減されます。

共有持分の場合、取得する持分割合に応じて登録免許税が課されます。例えば、固定資産税評価額1,000万円の不動産の2分の1の共有持分を取得する場合、登録免許税は以下のように計算されます。

  • 1,000万円 × 1/2 × 2% = 10万円

なお、登録免許税は原則として登記申請時に納付する必要があります。

固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している者に課される地方税です。共有持分を取得した場合、その持分に応じて固定資産税を負担することになります。

固定資産税の計算方法は以下のとおりです。

  • 固定資産税額 = 固定資産税評価額 × 税率(標準税率1.4%)

共有持分の場合、各共有者がその持分割合に応じて税額を負担します。例えば、固定資産税評価額1,000万円の不動産を2人で均等に共有している場合、各共有者の固定資産税額は以下のように計算されます。

  • 1,000万円 × 1/2 × 1.4% = 7万円

ただし、実際の納税については、多くの自治体で代表者が一括して納付し、後日共有者間で精算する方式が採用されています。この場合、共有者間で事前に税負担の取り決めを行っておくことが重要です。

また、固定資産税には「連帯納付義務」があります。これは、共有者の一人が納税を怠った場合、他の共有者がその分も含めて全額を納付する義務があることを意味します。この点は、共有持分を取得する際に十分注意が必要です。

税金については税理士に相談しよう

共有持分の取得に関わる税金は複雑で、頻繁に制度が変更されるため、税理士への相談が有効です。税理士は正確な税額計算、最適な取得方法の提案、軽減措置の適用、将来の税負担の試算、申告手続きのサポートなど、多岐にわたるサービスを提供します。

専門家のアドバイスを受けることで、潜在的なリスクを回避し、税務面で最適な決断を下すことができます。特に高額な不動産や複雑な共有関係がある場合は、税理士への相談が大きなメリットをもたらす可能性があります。

まとめ

共有持分の取得税は、一見複雑に思えますが、正しい知識を持てば適切に対応することができます。

重要なのは、持分割合に応じた課税の仕組みを理解し、利用可能な軽減措置を最大限活用することです。また、共有者間で税負担の取り決めを明確にし、申告・納付を適切に行うことも欠かせません。

共有持分の取得に際しては、個々の状況に応じた最適な対応が求められます。税法は頻繁に改正されるため、最新の情報を常に把握しておくことも重要です。

不明点がある場合や、より効果的な節税策を検討したい場合は、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、適切な判断を下し、トラブルを回避しつつ、税負担を最小限に抑えることができるでしょう。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

佐藤 丈太郎(税理士)

税理士の職域に留まらず、クライアントファーストで多岐に渡る業務に従事。
大規模な相続対策や節税コンサルティングを得意としている。

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