日本の相続制度は複雑で、特に土地や不動産の共有に関する問題が増加しています。特に、遺産相続が繰り返された結果などで発生する「土地の共有状態」は、所有者にとって非常に悩ましい問題でしょう。
この記事では、共有状態にある土地が招くトラブルについて、詳しく解説します。共有状態の土地でできることや、解消方法についても紹介しますので、ぜひお役立てください。
目次
土地の共有状態とは?
土地の共有状態とは、一つの土地の所有権を複数の人が共同で持つ状態を指します。この状態では、各共有者はその土地に関する権利を一定の割合で共有しています。
具体的には、共有者Aと共有者Bが存在する場合、「Aが1/3」「Bが2/3」の権利を持つといった具体的な比率でその土地の所有権を持つことが一般的です。
土地売却や質権の設定、更なる開発などの大きな行為を行う際には、全ての共有者の同意が必要となります。
土地から得られる収益や、土地の管理・維持にかかる費用は、共有者の持つ権利の比率に基づいて分担されることが多く、さまざまなトラブルが発生します。
土地の共有ではどんなトラブルが発生する?
では、土地を共有状態で所有しているとどのようなトラブルが発生するのでしょうか。代表的なものとしては、次のようなものがあります。
- 権利関係がどんどん複雑になる
- 売却が難しい
- 土地活用も自由に行いにくい
以下より、それぞれ個別に解説します。
権利関係がどんどん複雑になる
土地が共有状態になると、時間の経過とともに権利関係はより複雑になります。例として、Aさん、Bさん、Cさんの3人が共有している土地を考えてみましょう。もし3人とも亡くなると、それぞれの共有持分は、その相続人に引き継がれることになります。
例えば、Aさんの相続人が2人、Bさんの相続人が2人、Cさんの相続人が3人の場合、この土地に関わる人数は、最終的に7人に増加。さらなる相続が繰り返されれば、関わる人数は増え続けることとなります。多くの所有者が存在する場合、土地の活用や処分が難しくなるリスクが高まるでしょう。
売却が難しい
「この共有土地は必要ない、売りたい」と考えたとしても、共有持分だけを買取ってくれる不動産会社は少ないのが実情です。なぜなら、その持分だけでは土地を有効に活用できないため。一般の人々も、他者との共有を望んで土地を購入することは稀です。
もし売却を希望するなら、他の共有者との協議や交渉が求められます。「共有持分だけ」を購入する希望者が現れた場合、その部分だけの売却は可能ですが、土地全体を第三者へ売却する際は、全共有者からの同意が不可欠です。1人でも反対する者がいれば、売却は難しくなります。
土地活用も自由に行いにくい
共有土地の活用には、通常「過半数の共有者」や「全員の同意」が必要です。さまざまな事業や開発のチャンスがあったとしても、共有者全員の意向が一致しなければ、その活用は難しくなるでしょう。これは、共有土地の大きなデメリットの1つです。
共有状態の土地で行えること
前述のとおり、共有状態にある土地は活用でさまざまな制限を受けます。具体的には、次のとおり。
- 【単独】保存・使用
- 【過半数の同意あり】利用・改良
- 【全員の同意あり】処分
以下より、個別にみていきましょう。
【単独】保存・使用
共有者の一人が土地を保存する行動や、日常的な使用(たとえば耕作や住居など)は、通常、1人の共有者単独の判断で可能です。
ただし、その保存・使用によって他の共有者の利益や権利を害することはできません。例えば、一人の共有者が土地上で不法な行為を行った場合、他の共有者はその行為を停止させる権利があります。
【過半数の同意あり】利用・改良
土地の利用の変更や大きな改良、例えば建物の建築や土地の区画整理などは、共有者の過半数の同意が必要です。
これは、土地の価値や利用状況が大きく変わる可能性があるため、多数の共有者の意向を反映することで、利益や権利の均衡を保つための措置です。
ただし、過半数の同意を得た行為でも、他の共有者の権利を無視して実施することはできません。
【全員の同意あり】処分
土地の売却や寄付などの処分は、全ての共有者の同意が必要です。共有者全員の権利が関わる大きな決定であるため、このような全員の同意が必要とされます。
一人でも反対する共有者がいれば、その土地の処分はできません。
土地の共有状態の解消方法
「トラブル防止のため、土地の共有状態を解消したい」と考えた際には、以下の方法を検討しましょう。
- 分筆・交換
- 売却
- 贈与
- 放棄
それぞれについて、詳しく解説します。
分筆・交換
「分筆」とは、1つの土地を複数の区画に分けて登記することを指します。共有状態の土地を分筆し、それぞれの持ち分に基づいて交換することで、各共有者が単独で土地を所有する形に変更できます。
単独所有になれば、売却や賃貸など、土地の利用方法を自由に選べるようになります。しかし、分筆には注意が必要。道路の接続や土地の形状、既存の建物の位置など、多くの要素を考慮しなければなりません。適切なアドバイスを得るため、専門家との連携が必要です。
売却
土地を共有している全員の同意があれば、売却可能です。この方法は、共有状態を解消し、関係者全員が納得する方法として最もシンプルな手法。
売却に関わる費用や税金は、持分の割合に従って分担するのが一般的です。将来的に相続などで共有者が増加する前に売却を検討すると、手続きがスムーズに進みやすくなります。
贈与
共有持分を買い取る意向のない共有者へ、持分を贈与する方法もあります。この場合、無償で土地の一部を譲渡する形を採ります。
しかし、贈与には贈与税が発生するため、税金の負担やその他の関連費用について、予めよく話し合うことが必要です。贈与を選択する際は、税務アドバイザーや司法書士との相談をおすすめします。
放棄
所有権を単独で持つ場合、その土地や不動産を放棄することは法的に認められていません。ただし、共有者が存在する場合には、放棄が許されています。
放棄すると、その持分の権利は他の共有者に移転します。例えば、3人で共有している土地において、1人が放棄を選択すると、残りの2人がその土地を共有することになります。
放棄は贈与と似ている面がありますが、放棄後の持分の扱いが大きく異なります。贈与の場合、特定の共有者に持分が移転しますが、放棄の場合、全ての共有者が均等に持ち分を増やすことにもなります。
土地の共有状態は将来的に解消される?
土地の共有状態が増加すると、これは社会全体の問題として捉えられるようになり、対策が求められます。その一つの対策として、共有権の解消を容易にする法的措置が考えられます。
実際に、2019年末に法務省法制審議会 民法・不動産登記法部会から提案された「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」は、共有状態の解消を促進する内容が含まれています(※1)。
現行の民法では、遺産分割に時間制限が設けられていないため、相続が発生しても遺産分割が実施されず、土地が長期間共有状態となるケースが多いのです。加えて、相続登記は任意であり、登記が省略されることも少なくありません。
こうした背景から、代替わりが数回続くと、関与する人数が増大し、共有状態の土地における権利関係や持分の計算が非常に複雑になります。この複雑化が問題の解決を一層難しくしているといえます。
民法改正による共有問題の抑制とは
現在は、土地や不動産の所有者不明という課題に対応するため、民法の改正が提案されています。
主な改正点として、遺産が長期間分割されない場合の期限を設定することで、合理的な遺産分割を促進する制度の導入が検討されています。
具体的には、共同相続人が遺産分割の合意や手続きを相続開始から10年間進めなかった場合、明確な相続分の主張ができなくなるという提案があります。この10年という期限を過ぎると、法定相続分に基づいた自動的な遺産分割が行われることに。
しかしながら、具体的な分割の方法については、法制審議会内での意見が分かれています。家庭裁判所での手続きを基盤にするのか、それとも特定の財産ごとに地方裁判所での手続きを前提にするのかという点で議論が続いているのでしょう。
とはいえ、どちらの方法が選ばれるにせよ、遺言の重要性がより一層増す可能性は高いと考えられます。
まとめ
不動産の共有問題は、多くの家庭で深刻な課題となっています。土地や不動産の所有者が不明瞭になることから始まる問題は、時間が経つにつれてより複雑化していくため、なるべく早く対処する必要があるでしょう。
それにあたって、現行法や制度がどのように適用されるのか・それぞれの家庭の状況に合わせた最適な対応を考えるためには、専門家のアドバイスが不可欠です。相続に関する問題や疑問がある方は、早めに専門家に相談しましょう。
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