共有持分【基礎知識】

共有持分は勝手に建て替えてはダメ!?建て替えの手順や方法を解説

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共有持分の建て替えるためには、複数の所有者が権利を持つ不動産を新しく建て直すという手順が必要です。

共有者全員の同意を得ずに建て替えを行うと、損害賠償請求や刑事責任を問われるリスクがあります。そのため、建て替えの手順や注意点について正しく理解しておかなければなりません

そこで今回は、共有持分の建て替えに関する重要なポイントを詳しく解説します。共有者間の合意形成から費用負担、法的手続きまで、建て替えを成功させるために必要な知識を網羅的にお伝えします。

共有持分の建て替え・取り壊しには共有者全員の同意が必要

共有名義不動産の建て替えや取り壊しを行う際には、共有者全員の同意が必要不可欠です。これは民法第251条に規定されており、共有物に変更を加える際には他の共有者の同意を得なければならないとされています。

建て替えや取り壊しは、不動産の形状や効用を大きく変える「変更行為」に該当するため、共有者全員の合意が必要となります。たとえ一部の共有者が建物に居住していなくても、この原則は適用されます。

共有者の中に同意しない人がいる場合、建て替えや取り壊しを強行すると損害賠償請求や建造物損壊罪に問われる可能性があります。

ただし、建物が倒壊の危険性が高い場合など、緊急性が認められる状況では、例外的に全員の同意なしで取り壊しが可能な場合があります。しかし、このような判断は慎重に行う必要があり、専門家への相談が推奨されます。

共有持分の建て替えの手順

共有持分の建て替えは、以下の手順で行われます。

  • 手順①:共有者全員から同意を得る
  • 手順②:費用負担の割合を決める
  • 手順③: 解体業者・建設業者の選定と工事の実施
  • 手順④:建物滅失登記と新築建物の登記手続き

各手順について、詳しく解説します。

手順①:共有者全員から同意を得る

共有名義不動産の建て替えを始める最初のステップは、共有者全員から同意を得ることです。これは単なる形式的な手続きではなく、後のトラブルを防ぐために極めて重要となります。

同意を得る際には、建て替えの必要性、新しい建物の設計案、予算、工期などの具体的な計画を共有者全員に提示し、十分な説明を行うことが大切です。共有者の中には遠方に住んでいる人や、連絡が取りにくい人もいるかもしれません。

そのような場合でも、書面や電子メールなどで確実に連絡を取り、同意を文書で得ておくことが望ましいといえます。また、共有者が亡くなっている場合は、その相続人から同意を得る必要があります。

共有者が行方不明の場合は、不在者財産管理人の選任が求められます。すべての共有者から同意が得られない場合は、建て替えを進めることができないため、粘り強い交渉や専門家のアドバイスが必要になる場合があります。

手順②:費用負担の割合を決める

次に、費用負担の割合を決めていきます。一般的には、各共有者の持分割合に応じて費用を負担することが多いですが、これは絶対的なルールではありません。

共有者間で話し合いを行い、各自の経済状況や不動産の利用状況などを考慮して、公平で納得のいく負担割合を決定することが大切です。

例えば、ある共有者が建物を主に使用している場合、その人がより多くの費用を負担するという合意がなされることもあります。また、建て替え後の持分割合を変更する場合は、費用負担の割合もそれに応じて調整しなければなりません。

ただし、持分割合と大きく異なる費用負担をする場合、税務上、贈与とみなされる可能性があるので注意が必要です。

費用負担の割合は「建て替えの総費用」「各共有者の財政状況」「建物の使用状況」「将来の相続計画」などを総合的に考慮して決定すべきです。合意した内容は必ず書面化し、後のトラブルを防ぐことが重要です。

手順③: 解体業者・建設業者の選定と工事の実施

共有名義不動産の建て替えにおいて、信頼できる解体業者と建設業者の選定は非常に重要です。まず、複数の業者から見積もりを取り、価格だけでなく、実績、評判、保証内容なども比較検討します。

特に解体業者は、適切な許可を持っているか確認することが重要です。業者選定後は、工事内容、期間、価格、支払い条件などを明確にした契約書を交わします。工事の実施段階では、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて共有者全員に報告することが大切です。

手順④:建物滅失登記と新築建物の登記手続き

共有名義不動産の建て替えの最終段階として、法務局での登記手続きがあります。まず、古い建物を取り壊した後、1ヶ月以内に「建物滅失登記」を行う必要があります。この手続きは、共有者の一人が単独で行うことができます。

次に、新築建物が完成したら「表題登記」「所有権保存登記」も必要です。これらの登記手続きは複雑で、専門知識が必要なため、司法書士に依頼することが一般的です。

新築建物の登記の際、共有者間で持分割合を変更する場合は特に注意が必要です。持分割合の変更は贈与とみなされる可能性があり、税金面での影響も考慮しなければなりません。

また、住宅ローンを利用している場合は、金融機関への報告と必要に応じて抵当権設定登記も行います。これらの手続きを適切に行うことで、法的に新しい建物の所有関係が明確になり、将来のトラブルを防ぐことができます。

共有持分の建て替え・取り壊しにおける注意点

共有持分となっている不動産の建て替えや取り壊しを行う際には、以下の点に留意しましょう。

  • 住宅ローンが残っている場合の対応を確認する
  • 固定資産税への影響を考慮する
  • 共有者が亡くなっている・行方不明の場合の対処法を把握する

次項より、詳しく解説します。

住宅ローンが残っている場合の対応を確認する

共有名義不動産に住宅ローンが残っている場合、建て替えや取り壊しを行う前に金融機関との調整が必要です。多くの場合、住宅ローンには抵当権が設定されているため、建物を取り壊すことは担保物件の価値を損なうことになります。

そのため、金融機関の承諾なしに建物を取り壊すと、住宅ローン契約違反となる可能性があります。

対応としては、まず金融機関に建て替えや取り壊しの計画を説明し、承諾を得る必要があります。場合によっては、残債の一括返済を求められることもあるため、資金計画を立てる際にはこの点も考慮しましょう。

また、建て替えの場合は、新しい建物にも抵当権を設定し直す必要があります。金融機関によっては、建て替え期間中の返済猶予や、新たな融資の提案などもあるかもしれません。

いずれにせよ、早い段階で金融機関と相談し、建て替えや取り壊しのスケジュールに合わせた対応を検討することが重要です。状況によっては、住宅ローンの借り換えや、別の金融機関からの新規融資を検討する必要も出てくるかもしれません。

固定資産税への影響を考慮する

共有名義不動産の建て替えや取り壊しは、固定資産税に大きな影響を与える可能性があります。特に注意が必要なのは、建物を取り壊した後の土地に対してかかってくる税金です。

通常、居住用の建物が建っている土地には「住宅用地特例」という軽減措置が適用されています。しかし、建物を取り壊して更地にすると、この特例が適用されなくなり、固定資産税が大幅に上昇する可能性があります。

具体的には、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)の場合、固定資産税が最大6倍に、都市計画税が最大3倍になることがあります。このため、取り壊しのタイミングを慎重に検討する必要があります。

固定資産税の評価額は毎年1月1日時点の状況で決定されるため、例えば12月31日に取り壊すのと1月2日に取り壊すのでは、1年間の税額に大きな差が出ることがあります。

また、建て替えの場合は、新しい建物の評価額に基づいて課税されるため、建築費用や建物の規模によっては税負担が増える可能性があります。

ただし、新築住宅の場合、一定期間固定資産税が減額される特例もあるので、これらの制度も含めて総合的に検討することが大切です。

共有者が亡くなっている・行方不明の場合の対処法を把握する

共有名義不動産の建て替えや取り壊しを進める際、共有者が亡くなっていたり行方不明だったりする場合、適切な対処が必要です。共有者が亡くなっている場合、その相続人が新たな共有者となります。

この場合、相続人全員の同意を得る必要があります。相続人が確定していない場合は、相続人調査を行い、法定相続人を特定する必要があります。

一方、共有者が行方不明の場合は、「不在者財産管理人」の選任を検討します。これは、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が選任した管理人が不在者の財産を管理する制度です。

不在者財産管理人が選任されれば、その管理人から建て替えや取り壊しの同意を得ることができます。ただし、この手続きには時間とコストがかかるため、早めの対応が重要です。

また、2023年の民法改正により、所在等不明共有者がいる場合、他の共有者が裁判所に申し立てて、その持分を取得できる制度も創設されました。

共有者全員の同意が得られない場合の対処法

では、他の共有者から同意が得られない場合はどのように対処したらよいのでしょうか。具体的な方法としては、次のとおりです。

  • 共有物分割請求による解決を図る
  • 持分の買取交渉を行う
  • 弁護士に相談する

以下より、個別にみていきましょう。

共有物分割請求による解決を図る

共有物分割請求は、共有関係を解消するための法的手段の1つです。民法第256条に基づき、各共有者は他の共有者に対して共有物の分割を請求する権利を有しています。この方法は、話し合いによる解決が難しい場合に有効です。

共有物分割請求の手順は通常、当事者間の協議から始まり、それがまとまらな買った場合は調停や訴訟へと進みます。裁判所は、現物分割、価格賠償、競売分割などの方法から、最も適切な分割方法を判断します。

例えば、建物の建て替えを希望する共有者が、他の共有者の持分を買い取る形で解決することもあります。ただし、この方法は時間とコストがかかる可能性があり、共有者間の関係を悪化させるリスクもあります。

また、裁判所の判断は必ずしも希望通りにならない可能性もあるため、できる限り当事者間での合意形成を目指すことが望ましいでしょう。

持分の買取交渉を行う

持分の買取交渉は、建て替えや取り壊しに同意しない共有者の持分を、それを希望する共有者が買い取る方法です。この方法は、共有物分割請求よりも友好的で、時間とコストを節約できる可能性があります。

買取交渉を行う際は、まず不動産の適正な評価額を把握することが重要です。専門の不動産鑑定士に依頼して、客観的な評価額を得ることで、公平な交渉の基礎を作ることができます。交渉の際は、建て替えや取り壊しの必要性を丁寧に説明し、相手の立場や事情も考慮しながら進めることが大切です。

場合によっては、買取価格以外の条件、例えば新しく建てる建物の一部を使用する権利を与えるなど、柔軟な提案を行うことも有効かもしれません。

ただし、相手が売却を望まない場合や、価格面で折り合いがつかない場合もあるため、粘り強い交渉が必要です。また、買取が成立した場合は、適切な契約書の作成と登記手続きを確実に行うことが重要です。

弁護士に相談する

共有名義不動産の建て替えや取り壊しに関する問題は、法律的に複雑で専門的な知識が必要となることが多いため、弁護士への相談は非常に有用な選択肢です。

不動産問題に精通した弁護士は、個々の状況に応じた最適な解決策を提案することができます。弁護士は、共有物分割請求の手続きや持分買取交渉のサポート、さらには調停や訴訟の代理人として活動することもできます。

また、共有者間の対立が深刻な場合、中立的な立場から調整役を務めることも可能です。弁護士に相談することで、法的リスクを最小限に抑え、より確実に目的を達成することができます。

さらに、税金や登記など関連する専門分野についても、適切なアドバイスを受けることができるでしょう。弁護士を選ぶ際は、不動産問題の経験が豊富で、共有持分に関する専門知識を持つ弁護士を探すことが重要です。初回相談は無料で行っている弁護士も多いので、まずは相談してみることをおすすめします。

共有持分の建て替えにかかる費用はどのくらい?

共有持分の建て替えにかかる費用は、建物の規模、構造、地域、使用する材料などによって大きく異なります。主な費用は、「既存建物の取り壊し費用」「新しい建物の建築費用」に分けられます。

これらの費用を事前に把握し、共有者間で適切に分担することが重要です。また、設計費、許認可申請費用、登記費用なども考慮する必要があります。建て替えの際は、将来の維持管理コストや省エネ性能なども考慮し、長期的な視点で費用対効果を検討することが賢明です。

さらに、建て替え期間中の仮住まい費用や、家財の移動・保管費用なども忘れずに計上しましょう。以下、主要な費用である取り壊し費用と建て替え費用の相場について詳しくみていきます。

建物の取り壊し費用の相場

建物の取り壊し費用は、建物の構造、規模、立地条件などによって変動します。一般的な木造住宅の場合、坪単価で4〜5万円程度が相場となります。例えば、30坪の木造住宅であれば、120〜150万円程度の費用がかかると予想されます。

一方、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は、より高額になり、坪単価で6〜8万円程度かかることもあります。また、アスベストなどの有害物質が含まれている場合は、特殊な処理が必要となるため、さらに費用が上乗せされます。

解体費用には、建物の解体作業自体の費用だけでなく、廃棄物の処理費用も含まれます。さらに、建物の立地条件によっては、重機の搬入が困難で人力での解体が必要になるなど、追加の費用が発生する場合もあります。

解体業者を選ぶ際は、複数の業者から見積もりを取り、内訳を詳細に確認することが重要です。また、自治体によっては空き家の解体に対する補助金制度を設けている場合もあるので、確認してみるとよいでしょう。

建て替え費用の相場

建て替え費用の相場は、建物の規模、構造、グレード、地域によって大きく異なります。一般的な木造戸建て住宅の場合、坪単価で50〜70万円程度が相場となります。例えば、30坪の住宅であれば、1,500〜2,100万円程度の費用がかかると予想されます。

ただし、これはあくまで建築工事費の目安であり、設計費、申請費用、外構工事費などは別途必要になります。

高級住宅や特殊な構造の場合、坪単価が100万円を超えることもあります。また、都市部と地方では単価に差があり、都市部の方が高くなる傾向があります。

建て替え費用を抑えるには、ハウスメーカーの規格住宅を選択したり、建材をグレードダウンしたりする方法がありますが、長期的な耐久性や快適性とのバランスを考慮することが重要です。

さらに、省エネ住宅や耐震性の高い住宅を選択すると、初期費用は高くなりますが、長期的には光熱費の節約や補助金の活用ができる可能性があります。

建て替えを検討する際は、現在の生活スタイルだけでなく、将来の家族構成の変化なども考慮し、適切な規模と仕様を選択することが大切です。

まとめ

共有持分の建て替えは、複雑な法的手続きと慎重な合意形成が必要な作業です。本記事で解説したように、共有者全員の同意を得ることが最も重要なポイントです。

同意が得られない場合は、共有物分割請求や持分の買取交渉など、適切な対処法を検討する必要があります。また、建て替えにかかる費用や税金の影響、登記手続きなども十分に理解しておくことが大切です。

これらの事項を正しく把握し、計画的に進めることで、スムーズな建て替えが可能となります。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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