「共有不動産の所有」とは、多くの場合は「複数の共有者間で利益や責任を共有すること」を意味します。しかし、ときに共有不動産に関する意見の相違やトラブルが発生し、解決が困難になることもあります。
このような状況下では「妨害排除請求」が1つの有効な解決策となり得ます。本記事では、共有持分の妨害排除請求における基本的な考え方について詳細に解説します。
目次
共有持分に基づく妨害排除請求とは
「共有持分権に基づく妨害排除請求」とは、共有不動産の利用を妨害されている場合などに、それを止めるように請求できる権利です。
具体的には、以下のようなケースで行使でき、侵害されている内容に応じた請求が可能。
- 明渡・引渡請求:無権利者が不動産を占有している
- 抹消登記請求:無権利者の登記が存在している
- 第三者異議訴訟の提起:共有不動産が不当に差押えられた
そもそも共有持分とは
共有持分とは、複数人で所有している不動産の所有権の割合のことです。よく聞かれる共有持分権とは、不動産などの財産を複数人で共有している際に、その所有割合とそれに伴う様々な権利を指します。
例えば、相続により家屋を兄弟3人で均等に相続した場合、各相続人の共有持分は「1/3」になります。この権利は、具体的な物の半分を所有しているわけではなく、不動産全体に対する割合の権利という抽象的なものです。
妨害排除請求は共有者単独で実施できる
共有持分権に基づく「妨害排除請求」とは、共有不動産の利用を妨害された場合に、その妨害を止めるよう請求する権利。具体的には、次のようなケースで行使できます。
- 明渡・引渡請求:無権利者が不動産を占有している場合。
- 抹消登記請求:無権利者の登記が存在する場合。
- 第三者異議訴訟の提起:共有不動産が不当に差押えられた場合。
各共有者は共有持分権を持っているため、単独で妨害排除請求を行うことが可能です。共有不動産の売却や賃貸の際には共有者全員の合意が必要ですが、妨害排除請求は個人で行えます。
ただし、共有持分権を持たない第三者に対する請求は通りやすいものの、同じ共有持分権を持つ他の共有者に対しては認められない場合もある点には留意しましょう。
共有持分に基づく妨害排除請求を行える2つのケース
共有持分に基づく妨害排除請求を行えるのは、次の2つのケースです。
- ケース①:無断で共有不動産を処分された
- ケース②:無断で共有不動産を変更された
以下より、個別に解説します。
ケース①:無断で共有不動産を処分された
共有不動産の売却や譲渡などの処分は、共有者全員の同意が必要です。ほかの共有者があなたの同意を得ずに不動産を処分した場合、あなたは妨害排除請求を行えます。
この行為は、共有持分権の侵害にあたります。
ケース②:無断で共有不動産を変更された
共有不動産の建物を解体・建て替えする際も、共有者全員の合意が必要です。許可なく変更行為を行った場合、共有持分権が侵害されるとして、妨害排除請求を実施できます。
共有持分権に基づく妨害排除請求の手順
共有持分権に基づく妨害排除請求は、以下の手順で行いましょう。
- 手順①:弁護士に相談する
- 手順②:内容証明で通知する
- 手順③:訴訟を行う
各手順について、個別に解説します。
手順①:弁護士に相談する
訴訟を起こす前に、法律の専門家である弁護士に相談することが重要です。相談料は5,000円から1万円程度が一般的です。
弁護士のアドバイスを受けた上で訴訟を進める場合、着手金として30~50万円、成功報酬として60~100万円が必要になることがあります。ただし、報酬金は判決後、勝訴した場合にのみ支払うことになります。
手順②:内容証明で通知する
弁護士のアドバイスを受けた後、いきなり訴訟に進む代わりに、内容証明郵便での通知を検討することが推奨されます。突然の訴訟は相手方の態度を硬化させ、問題解決が遅れる可能性があります。内容証明郵便により、先に話し合いの機会を設けることが有効です。
内容証明郵便の費用は次のとおりです。
<内容証明郵便にかかる費用>
- 郵便基本料:84円(25gまで)
- 内容証明料:440円(2枚目以降260円増)
- 一般書留料:435円
- 配達証明料:320円
<追加オプション>
- 本人限定受取:210円
- 速達:260円(250gまで)
弁護士を介して送る場合は、別途3~5万円の費用が発生する可能性があります。
手順③:訴訟を行う
内容証明後にも問題が解決しない場合、訴訟が必要になります。訴状は共有者の住所地を管轄する裁判所に提出します。請求額によって、簡易裁判所・地方裁判所が適切な提出先となります。
訴訟に必要な手数料は以下のとおりです。
- 100万円まで:10万円ごとに1,000円
- 500万円まで:20万円ごとに1,000円
- 1,000万円まで:50万円ごとに2,000円
- 1億円まで:100万円ごとに3,000円
- 50億円まで:500万円ごとに1万円
- 50億円超:1,000万円ごとに1万円
郵便切手代は裁判所ごとに異なりますが、例えば東京地方裁判所では6,000円、追加当事者ごとに2,178円が必要です。
訴訟費用は原則として提起者が負担し、勝訴の場合、相手方に請求することが可能。ただし、弁護士費用は別途自己負担が求められます。
裁判で妨害排除請求が認められると、被告に対して不動産の明け渡しや原状回復が命じられます。しかし、判決に従わないケースもあります。
この場合、強制執行を行うためには債務名義(裁判所が発行する公文書)が必要で、これにより強制執行が可能になります。債務名義には請求権者と被告の間の権利関係が記載されており、判決に従わない共有者に対しても効力を発揮します。
トラブル解決のためには共有持分の売却も検討しよう
共有不動産は、共有者全員の同意が必要で売却が難しい場合がありますが、共有持分は個人の占有物として、持ち主が自由に売却できる性質を持っています。
しかし、共有持分の購入者が共有不動産を自由に扱えるわけではないため、一般市場での需要は限られています。
共有持分は需要が限られており、一般の買主への売却は困難な傾向にあります。一般的な大手不動産業者では需要がないとみなされ、買取を拒否されるか、安値での買取になることも珍しくありません。
このような状況のなか、共有持分を専門に扱う買取業者が存在します。専門業者は、共有持分の特性を理解しており、最短数日で現金化することが可能です。彼らは通常の不動産業者とは異なり、共有持分の買取に特化しています。
共有持分の売却は、不動産市場における一般的な取引と異なる特殊性を持っています。適切な専門知識を持つ業者に相談することで、スムーズかつ安全な取引が期待できるでしょう。
まとめ
共有持分に関する妨害排除請求は、共有不動産におけるトラブル解決の重要な手段です。共有者間で意見が対立した場合、個々の持分に基づく権利行使として妨害排除請求が可能になります。
しかし、裁判で妨害排除請求が認められた場合、必要に応じて強制執行も検討されます。いずれにせよ、トラブル解決のためには、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
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