共有持分【基礎知識】

共有不動産の管理費用の分担方法とは?費用を払わない共有者がいる場合の対応手段について

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共有不動産では、複数の所有者が共同で不動産を所有する際に発生する費用を、どのように分担するかを定めるルールが存在します。

相続や共同購入で不動産を共有している方は、この費用分担についてお悩みではないでしょうか。

適切な分担方法を定めなければ、共有者間のトラブルや不動産の管理不全といったリスクが生じる可能性があります。そのため、管理費用の分担方法や関連する法律について正しく理解しておくことが重要です。

そこで本記事では、共有不動産の管理費用分担について詳しく解説します。

共有不動産の管理費用はどう分担するべき?

共有不動産とは、複数の人が共同で所有する不動産を指します。この共有関係において、「不動産の維持や管理に必要な費用を誰がどのように負担するか」を取り決めておくことは重要な要素です。

共有不動産における管理費用は、不動産を適切に維持・管理するために必要な全ての費用前半を指します。共有マンションの場合は、管理組合費や修繕積立金なども管理費用に含まれます。

これらの費用は、不動産の価値を維持し、快適な使用を可能にするために不可欠。管理費用の範囲は広範囲にわたるため、共有者間で何が管理費用に該当するかを事前に明確にしておくことが重要です。

民法では、共有物の管理費用や負担について明確な規定を設けています。基本的な原則として、各共有者はその持分に応じて管理費用を支払い、その他の負担を負うことになっています。つまり、所有する割合に応じて費用を分担することになるのです。

この規定は、共有者間の公平性を保ち、不動産の適切な管理を確保するためのもの。ただし、共有者間で特別な取り決めがある場合は、その合意に従うことも可能です。

管理費用の分担方法

管理費用の分担方法は、原則として各共有者の持分割合に応じて行われます

例えば、AさんとBさんが2分の1ずつ共有している不動産があり、100万円の修繕費が必要になった場合、AさんとBさんはそれぞれ50万円ずつ負担することになります。

ただし、実際の支払い方法としては、共有者の代表者が一旦全額を立て替えて支払い、後日他の共有者から各自の負担分を集金するという方法がよく用いられます。

これは、支払いの手続きを簡素化し、期日までに確実に支払いを行うためです。なお、共有者間で特別な合意がある場合は、持分割合によらない分担方法を取ることも可能です。

共有不動産の管理費用の具体例

共有不動産にかかる費用の具体例として、以下のものが挙げられます。

  • 必要費に該当する費用
  • 有益費に該当する費用
  • その他の共有物に関する負担

それぞれ個別にみていきましょう。

必要費に該当する費用

必要費とは、共有不動産を維持・保存するために必要不可欠な費用です。

これらの費用は、不動産の価値を維持し、使用可能な状態を保つために欠かせません。具体的な例としては、建物の老朽化や災害による損傷を修復するための修繕費用が挙げられます。

建物の基本的な設備(電気、水道、ガスなど)の修理や更新にかかる費用も必要費に含まれます。

さらに、火災保険料や地震保険料なども、不動産を保護するために必要な費用として認められます。山林などの場合は、樹木の管理や不法侵入者からの保護のための監守費用も必要費とされることがあります。これらの費用は、共有者全員が持分に応じて負担する必要があります。

有益費に該当する費用

有益費とは、共有不動産の価値や利用価値を高めるために支出される費用を指します。

これらの費用は、必ずしも不動産の維持に不可欠ではありませんが、その価値を向上させる効果があります。具体的な例としては、建物の増改築費用、設備の高機能化や省エネ化のための費用、庭園の造成や改良にかかる費用などが挙げられます。

また、共有マンションの場合、共用部分のグレードアップや新しい設備の導入なども有益費に該当することがあります。

ただし、有益費の負担については、全共有者の合意が必要となる場合が多く、一部の共有者だけの判断で支出することは難しいでしょう。

支出後の価値増加が明確に見込まれる場合に限り、有益費として認められる傾向があります。

その他の共有物に関する負担

共有不動産に関しては、必要費や有益費以外にも様々な負担が発生します。

これらは「その他共有物に関する負担」と呼ばれ、主に公租公課(税金)が該当します。最も典型的なものは固定資産税と都市計画税です。

このような税金は、不動産の所有者として共有者全員が負担しなければなりません。また、共有マンションの場合は、管理組合費や修繕積立金なども共有者が負担すべき費用として考えられます。

これらは不動産の維持管理に不可欠なものとして、必要費に準じる扱いを受けることが一般的です。

さらに、不動産の利用に関連して発生する様々な費用(例:清掃費や警備費)なども、状況に応じて共有者全員で負担する必要があります。これらの負担も、原則として各共有者の持分割合に応じて分担されます。

管理費用の支払い・精算の方法

共有不動産の管理費用の支払い・精算は、共有者間の協力と信頼関係が必須です。

一般的には、共有者の代表者が管理費用を一括で支払い、後日他の共有者と精算する方法が採られます。

この方法なら、支払いの遅延を防ぎ、円滑な不動産管理が可能。ただし、この方法には共有者間の明確な合意と、適切な記録管理が不可欠です。

代表者は、支払った費用の領収書や明細を保管し、他の共有者に対して透明性のある報告を行う必要があります。また、定期的に精算を行うことで、長期間の未精算状態を避けることができます。

代表者による立替払いと費用の精算方法

代表者による立替払いは、共有不動産の管理費用を効率的に支払うための一般的な方法です。

通常、共有者の中から選ばれた代表者が、固定資産税や修繕費用などの管理費用を一括で支払います。

その後、代表者は他の共有者に対して、各自の持分に応じた金額の支払いを請求します。この精算方法は、一般的には以下の手順で行われます。

  • 手順①:代表者が管理費用を立替払いする
  • 手順②:支払い内容と金額を他の共有者に報告する
  • 手順③:各共有者の持分に応じた負担額を計算する
  • 手順④:他の共有者に対して負担額の支払いを請求する
  • 手順⑤:各共有者から支払いを受け取り、精算を完了する

上手順を円滑に進めるためには、共有者間で事前に「立替払いと精算の方法」について合意しておくことが重要です。また、定期的に精算を行うことで、大きな金額の精算を避けることができます。

他の共有者が費用を支払わない場合の対処法

共有者の中に管理費用の支払いを拒否したり、長期間滞納したりする者がいる場合、適切な対処が必要です。まずは、話し合いによる解決を試みることが重要。

支払いが困難な理由を聞き、分割払いなどの柔軟な対応を検討することも一案です。しかし、話し合いで解決できない場合は、法的手段を講じる必要があります。

具体的な対処法としては以下が考えられます。

  • 内容証明郵便で支払いを督促する
  • 調停や裁判所での支払い命令を申し立てる
  • 訴訟を提起し、裁判所の判決を得る
  • 判決に基づいて強制執行を行う

最終的には、民法253条2項に基づく共有持分買取請求権を行使することも選択肢の1つです。これにより、支払いを拒否する共有者の持分を他の共有者が買い取ることができます。

ただし、この方法は共有関係を大きく変更することになるため、慎重に検討する必要があります。

共有持分の買取請求権の行使とは?

共有持分の買取請求権は、共有不動産の管理費用の負担をめぐるトラブルを解決するための法的手段です。

この権利は、民法253条2項に規定されており、管理費用を負担しない共有者がいる場合に、ほかの共有者がその持分を強制的に買い取ることを可能にします。

この権利の行使は、共有関係を解消し、不動産管理の問題を根本的に解決する手段として機能します。ただし、買取には相応の資金が必要となるため、慎重な判断が求められます。

共有持分買取請求権の行使条件と手順

共有持分買取請求権を行使するためには、「共有者の一人が1年以上管理費用の負担を怠っている」「他の共有者が相当の対価を支払う用意がある」という2つの条件を満たす必要があります。

行使の手順は以下のとおり。

  • 手順①:管理費用の不払いが1年以上継続していることを確認する
  • 手順②:買取を希望する共有者が、不払いの共有者に対して買取の意思表示を行う
  • 手順③:適正な買取価格(相当の対価)を算定する
  • 手順④:裁判所に対して共有持分の移転登記手続きを求める訴えを提起する
  • 手順⑤:裁判所の判決に基づいて、持分の移転登記を行う

この手順を進める際は、法律の専門家に相談することが推奨されます。また、買取後の不動産の管理方針についても、事前に十分な検討が必要です。

共有不動産の管理費用に関する特殊なケース

共有不動産の管理費用分担には、特殊な状況が発生することがあります。ここでは、マンションの場合や一部の共有者のみが居住している場合など、特殊なケースにおける管理費用の分担を解説します。

「マンション」における管理費用の分担

マンションの場合、共有部分の管理費用に加えて、管理組合費や修繕積立金などの特有の費用が発生します。

これらの費用は、一般的に各区分所有者の専有部分の床面積比率に応じて分担されます。具体的な費用項目としては、以下のようなものがあります。

  • 管理組合費:日常的な管理運営費用
  • 修繕積立金:将来の大規模修繕のための積立金
  • 共用部分の水道光熱費
  • エレベーターなどの設備の保守点検費

これらの費用は、管理規約に基づいて徴収され、管理組合によって管理されます。各区分所有者は、定められた期日までに自身の負担分を支払う義務があります。

滞納が発生した場合、管理組合は滞納者に対して支払いを請求し、場合によっては法的手段を講じることもあります。

「共有者の一部が居住している」場合の管理費用の分担

共有不動産において、一部の共有者のみが居住している場合、管理費用の分担方法で意見が割れるケースが存在します。

原則として、居住の有無に関わらず各共有者は持分に応じて負担する義務がありますが、実際の運用では柔軟な対応が求められます。

例えば、必要費と有益費を区別し、建物維持に必要な費用は全共有者で分担し、居住者の便益のみに関わる費用は居住者が負担するという方法があります。

また、居住者の使用利益を考慮し、「家賃相当額を管理費用から控除する調整」「特別な合意により居住者がより多くの費用を負担する取り決め」も可能です。

これらの問題を回避するためには、共有者間で事前に明確な取り決めを行い、書面化しておくことが重要です。また、定期的な話し合いの機会を設け、公平性を保つ努力が望ましいでしょう。

共有不動産の管理費用に関するトラブル事例と解決策

共有不動産の管理費用をめぐっては、さまざまなトラブルが発生する可能性があり、共有者間の関係を悪化させ、不動産の適切な管理を妨げる原因となりかねません。

そのため、トラブルの予防と適切な解決策の理解が重要です。ここからはよくあるトラブル例とその対処法についてみていきましょう。

管理費用の滞納が発生した場合

共有不動産の管理費用滞納は深刻な問題を引き起こす可能性があります。

対処法としては、まず滞納者への通知と督促を行い、次に話し合いによる解決を試みる。その上で、分割払いや一時的な減額などの柔軟な対応も検討しましょう。

これらが効果的でない場合は、法的手段や共有持分買取請求権の行使に踏み切るのが有効です。

共有者間で管理方針に意見の相違が生じた場合

共有者間で管理方針に意見の相違が生じた場合、解決に必要なのは効果的なコミュニケーションです。

最もベターなのは、定期的な共有者会議の開催で、全ての共有者が一堂に会し、それぞれの意見や懸念を率直に話し合うこと。意見の相違が生じている問題について、各自の立場や理由を説明し、互いの理解を深められます。

しかし、話し合いだけでは解決が難しい場合もあります。そのような状況では、専門家の意見を聞きつつほかの共有者とコミュニケーションを採っていきましょう。

共有不動産の管理費用分担を避ける方法

共有不動産の管理費用分担に関するトラブルを根本的に解決するためには、共有関係そのものを解消することが一つの選択肢となります。

これには主に2つの方法があります。「共有持分を売却する方法」と「共有関係を完全に解消する方法」です。これらの方法は、共有不動産に関わる様々な問題から解放される可能性がありますが、同時に大きな決断を伴うものでもあります。

共有持分を売却してしまう

共有持分の売却は、管理費用の負担から逃れる一つの方法です。売却方法には主に以下の3つがあります。

  • 他の共有者への売却:最も自然な選択肢だが、相手の購入意思と資金力が必要。
  • 第三者への売却:共有持分の売却に特化した不動産業者を利用するのも一案。
  • 専門の不動産会社への売却:共有持分を積極的に買い取る会社もある。

売却を検討する際は、税金や登記費用などの諸経費も考慮に入れる必要があります。また、適正な価格での売却を心がけ、必要に応じて不動産鑑定士の評価を受けることも検討しましょう。

売却によって管理費用の負担から解放されるメリットがある一方で、不動産の所有権を失うデメリットもあるため、慎重に判断することが重要です。

共有関係を解消する

共有関係の完全な解消は、全ての共有者が合意するか、裁判所の判断を仰ぐことで実現できます。主な方法としては以下の3つがあります。

  • 共有物分割協議:共有者全員の合意により、不動産を分割するか、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る。
  • 共有物分割請求訴訟:協議が整わない場合、裁判所に共有物の分割を請求する。裁判所は現物分割や競売による分割などを判断する。
  • 共有不動産の売却:共有者全員の合意のもと、不動産全体を第三者に売却し、売却益を分配する。

これらの方法には長所と短所があります。

長所としては、「管理費用の問題を含む共有に関するトラブルから完全に解放される」「自由に不動産を処分できるようになる」といった点が挙げられます。

一方、短所としては「共有者全員の合意が必要で調整が困難な場合がある」「裁判所を通じる場合は時間とコストがかかる」「税金や諸経費の負担が発生する」などです。

共有関係の解消を検討する際は、法律の専門家に相談し、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。

まとめ

共有不動産の管理費用分担は、共有者間の良好な関係維持と不動産の適切な管理のために不可欠です。基本的な分担ルールを理解し、具体的な費用の種類や支払い方法を把握することで、多くのトラブルを未然に防げるでしょう。

しかし、意見の相違や滞納などの問題が生じた場合は、早期に対応することが重要です。話し合いや法的手段の活用、場合によっては共有関係の解消も検討しましょう。

共有不動産の管理は複雑で専門的な知識が必要なため、問題が生じたときや解決が難しい場合は、弁護士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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