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法定地上権とは?成立条件や成立後の取り扱いについて解説

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不動産に関わる法規制や慣例は多く存在し、一般の方にとっては難解なものも少なくありません。抵当権や競売などの複雑な事情から生じる権利として「法定地上権」というものがあります。法定地上権は、不動産の競売により土地と建物の所有者が異なる場合に発生する特殊な権利です。

本記事では、法定地上権の概要や発生する4つの条件に加え、発生した後の取り扱い方法について具体的に説明しますので、ぜひお役立てください。

法定地上権とは

土地と建物が一緒にあったのに、抵当権の行使で持ち主が変わるとき、生まれるのが地上権です。

仮に法定地上権が存在しなければ、建物だけの所有者はその建物を使えません。何故なら、建物の下にある土地を所有していないからです。

しかし、建物を所有するだけで意味がないとしたら、所有者にとっては問題といえます。ここで登場するのが「法定地上権」です。

法定地上権とは、端的に説明すると、法定所有権とは土地の所有者ではない人でも、その土地を利用できる権利のこと。法定地上権があるからこそ、建物だけを所有する人も、その建物に住んだり、貸し出したり、使い道を見つけることが可能になります。

法定地上権と地上権の違い

地上権が適用されるのは、土地・建物それぞれの所有者が合意し、地上権の契約を結んだときです。勝手に建物を建ててしまうと、それはただの不法占拠なので、地上権は認められます。

対して、法定地上権は競売が行われると自動的に発生します。つまり、当事者の意志に関係なく、合意なしに生じるのです

土地や建物を抵当にするときは、将来的に競売が起きた際に、法定地上権が自動的に成立することを頭に入れておきましょう。

法定地上権と賃借権の違い

「地上権」「賃借権」は、両方とも借地権の1種です。「借地権」とは、他の誰かから土地を借りられるという権利を指しますので、広い意味合いを持つ言葉だといえるでしょう。

地上権は、上述したように土地所有者の許諾がなくても、原則的には貸し出しや売却、担保の設定を行うことが可能です。

一方、賃借権は他人が所有している土地を使う権利という意味では同じものの、土地所有者の許諾を得ないと原則的には建て替えや建物の売却はできません。

つまり、地上権が物権的な権利で、賃借権が債権的な権利といえます。

 

法定地上権の成立条件

法定地上権が成立するためには、以下の条件が満たされていなければなりません。

  • ①:抵当権設定タイミングで建物があったかどうか
  • ②:土地と建物の所有者が同じであったか
  • ③:土地・建物の双方、いずれかに抵当権が設定された
  • ④:競売後に土地と建物の所有者が異なる状況になった

上記について、詳細を解説します。

①:抵当権設定タイミングで建物があったかどうか

抵当権が設定された時点で、すでに建物が土地の上に存在していなければなりません。抵当権を設定した後に建物を構築する場合、法定地上権は生じないと認識しましょう。

その際、土地の所有者が変わると、建物を取り壊して土地を返却することが求められます。

②:土地と建物の所有者が同じであったか

法定地上権が認められるためには、抵当権を設定したタイミングで「土地の所有者 =建物の所有者」であることが必要です。

仮に、土地と建物で所有者が異なる場合、その時点までは地上権(あるいは賃借権)が認められるため、法定地上権は生じません。

③:土地・建物の双方、いずれかに抵当権が設定された

担保不動産競売に至る流れとなるためには、土地や建物に抵当権が設定されていることが必要となります。強制競売や公売の場合、抵当権が設定されていない状態でも、法定地上権が認められるケースもあります。

④:競売後に土地と建物の所有者が異なる状況になった

不動産の競売や強制競売が実行された後で、「土地と建物の所有者が別々」になることも、法定地上権の成立条件の1つです。

なぜなら、所有者が同一の状態であれば、権利を認めずとも「家屋の撤去」「土地の明け渡し」などを請求されるリスクがないためです。

 

法定地上権の成立後の扱いとは?

法定地上権が成立した後は、以下の点に留意しましょう。

  • 地代決定には土地・建物所有者同士の合意が必須
  • 原則30年は明け渡し請求できない

上記について、個別に解説します。

地代決定には土地・建物所有者同士の合意が必須

法定地上権が成立した後、土地と建物の所有者間で地代を協定することが必要です。「地上権の設定」だけが法律により自動的に認められます。

したがって、地代は所有者間で協議し、合意に至らなければ「地代確定請求訴訟」を起こすことで裁判所が地代を定めます。

原則30年は明け渡し請求できない

法定地上権が成立した場合、原則として最低30年間は、建物の所有者に対して「土地の明け渡し」「建物撤去」の請求はできません。

さらに、法定地上権が成立してから30年が経過しても、正当な理由がなければ借地権は自動更新されます。自動更新の期間については、初回のみ20年間、そのあとは10年間ずつとなっています。

例外的に、以下の条件を満たしている場合は、明け渡し請求が可能ですので、しっかりと把握しておきましょう。

  • 長期間の地代滞納
  • 法定地上権の解除合意
  • 法定地上権期間満了・更新なし
  • 建物の老朽化・滅失

 

一括競売・優先弁済権とは?

法定地上権と合わせて、セットで把握しておきたい用語として「一括競売」「優先弁済権」が挙げられます。以下より、それぞれ個別に解説します。

一括競売とは?

抵当権を設定した土地(更地)に建物が構築された場合、抵当権者は土地と建物を一括で競売にかけることが可能です。ただし、優先弁済権は土地代金のみに適用されます。

優先弁済権とは?

優先弁済権とは、他の抵当権者や債務者に先駆けて債務の弁済を受けられる権利のことです。土地にのみ抵当権が設定され、その後建物が建てられた場合、抵当権者は土地と建物を一緒に競売にかけることが可能ですが、債務の弁済については土地についてのみ優先的に行われます。

 

まとめ

法定地上権は、不動産の所有者が競売などの結果、土地と建物の所有者が異なる場合に発生します。その成立条件には「抵当権設定時に建物が存在する」「土地と建物の所有者が同一である」「抵当権が存在する」「競売後に土地と建物の所有者が異なる」ことが必要。ま

法定地上権発生後の地代は、土地・建物所有者間で協定することが求められ、原則30年間は土地の明け渡しや建物の撤去の請求が不可とされています。

法定地上権に関する知識は難解ですが、専門家に相談することで、より深い理解と適切な対応が可能になります。不安な要素がある場合は、外部専門家に相談しましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

松本 大介(司法書士)

得意分野:相続全般、遺言書作成、不動産売却
お客様に「君にまかせてよかった」「君だから依頼したんだよ」そう言っていただけることを目標に、この仕事に誇りを持って取り組んでおり、お客様の立場に寄り添い考えるよう心がけています。

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