相続に関わる法律や手続きには数多くの留意点が存在します。特に、共有持分の相続放棄は、不動産や財産の扱いに関して特別な注意が必要とされます。
共有持分はただでさえ取り扱いの難しい不動産ですので、損をしないために把握しておくべきことはさまざまなものが存在します。
今回の記事では、共有持分の相続放棄に際して知っておくべき基礎知識を解説していきます。共有持分の相続放棄を円滑に進めたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
共有持分の概要
不動産の共有名義とは、複数の人々が1つの不動産を共有する状態であり、法務局では「共同所有者」として登記されます。例えば、兄弟が一緒に不動産を所有する場合、その不動産は兄と弟の名義となります。
各共有者が持つ不動産の権利の割合を「共有持分」と言います。この持分は「〇分の〇」のような形で示され、例えば兄が2/3、弟が1/3の持分を有することが考えられます。
関連記事:共有持分とは?不動産を共有し続けるリスクや共有状態の解消方法を解説
相続放棄とは?
相続放棄は、財産の正負を問わず、すべての相続資格を放棄することを指します。基本的に、相続には良い遺産のみならず、借金やローンなどの負の遺産も含まれます。
したがって、もしマイナスの遺産しか存在しない場合、多くの人々はその相続を避けたいと感じるでしょう。このようなシチュエーションで相続放棄は特に有効となります。放棄を行った際、その人は最初から相続資格がなかったものと扱われます。
共有持分を相続放棄するとどうなる?
単独での「共有持分のみの相続放棄」は認められません。しかし、相続した全ての共有持分を放棄することは可能。
相続人が共有持分を放棄した場合、その人は元々相続資格がなかったとみなされ、共有持分の相続ができなくなります。
放棄した場合、他の遺産に関しても相続の権利がなくなるのです。例として、被相続人が持っていた借金の返済義務や賃貸物件の未払い家賃の請求を回避可能。
しかし、このようにして避けることができる義務と同時に、被相続人の資産についても相続の権利がなくなるため、利益となる遺産を得られなくなります。
では、相続放棄した場合の共有持分はどうなるのでしょうか。
放棄した場合、次に優先される相続人へと相続の権利が移行し、放棄した相続人に子供がいたとしても、代襲相続は適用されません。
代襲相続とは、ある相続人が被相続人よりも先に亡くなった場合、その相続人の子供が代わりに相続資格を持つことを指します。しかし、相続放棄の場合、代襲相続も発動せず、例えば孫が相続することも認められません。
さらにいえば、相続資格を持つ全員が相続を放棄した場合、その共有持分は他の持分権者の手に移ります。
共有持分を相続放棄するメリット・デメリット
ここからは、共有持分を相続放棄するメリットとデメリットについてみていきましょう。
相続放棄のメリット
共有持分の相続放棄は家庭裁判所への申立てを通じて行えます。この放棄により、共有名義がクリアされ、法定相続人間の相続トラブルを未然に防ぐことが期待できます。
加えて、管理や税金の義務しかなく、簡単には売却も難しいような不動産を放棄することは、1つの大きなメリットと捉えられるでしょう。
相続放棄のデメリット
単に不動産の共有持分だけを放棄するという制度は存在しないため、全てを放棄する形となります。これは、相続人としての資格が初めからなかったものと見なされることを意味します。結果として、預貯金や家具・家電などの他の財産の相続も行えなくなるということです。
しかし、放棄することで負の遺産、例えば負債も継承しなくて済むため、全てが欠点とは言えません。
相続放棄の是非を決める際には、被相続人の財産の全体像を正確に理解した上で判断することが大切。預貯金や負債、家財、不動産の評価や価格、共有持分の比率、相続手続きの手間、相続順位など、多岐にわたる要因を検討する必要があります。
相続放棄の熟慮期間内に全ての情報を集めるのが困難な場合もあるでしょう。そのような時は、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。専門家に全ての調査を委託するのも1つの選択肢といえるでしょう。
共有持分の相続放棄の手続き
相続放棄の申立は、基本的に相続人ごとに個別に行われます。複数の相続人が存在する場合でも、一括しての申し立ては許されていません。
まず、必要な書類をそろえた上で、被相続人の最後の居住地に所在する家庭裁判所へ相続放棄の申立を行います。
具体的には、申述書とその他の必要書類を、郵送方法あるいは直接窓口へと持参し、提出します。申述書については、オンラインでのダウンロードや家庭裁判所からの取り寄せといった方法が考えられます。
申述書を提出した後、家庭裁判所から照会書が送られてくることが一般的です。
この照会書には、相続放棄の背景や理由、相続の事実を知った経緯など、詳しい情報を求める項目が設けられています。必要な回答を丁寧に記入した後、所定の方法で家庭裁判所へ返送してください。
共有持分を相続放棄する際の注意点
共有持分を相続放棄する際には、次のような事柄に注意が必要です。
- 相続放棄が可能な期限がある
- 他の相続人の相続内容が変化する
それぞれについて、個別に解説します。
相続放棄が可能な期限がある
相続放棄には期限が設けられています。具体的には、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。この期間を過ぎると、自動的に相続を承認したものとみなされ、その後の放棄手続きは認められません。
したがって、相続放棄を考えている場合は、その期間内に速やかに手続きを行うことが必要です。
他の相続人の相続内容が変化する
相続放棄をすると、これによって他の法定相続人の相続分や順位が変わることがあります。例えば、被相続人の家族構成が「配偶者」と「子供2人」の場合、通常、配偶者は財産の1/2を相続し、残りを子供たちが等分するのが基本です。
しかし、1人の子供が相続を放棄すると、相続分は変動します。放棄しなかった子供は残った相続分1/2を全て受け取ることになります。このように、結果的に配偶者と放棄しなかった子供がそれぞれ1/2の相続分を持つことに。
したがって、相続放棄を検討する際は、他の相続人との協議や相談を行うことが重要です。
まとめ
相続放棄の期間や他の相続人への影響は、事前にしっかりと認識しておくことで、将来的なトラブルの低減に繋がります。しかし、相続に関する問題は複雑であり、完全に理解するのは難しいもの。
そのため、具体的なケースや疑問については、専門家の意見やアドバイスを求めることを強く推奨します。相続のプロセスは家族の未来を左右するものですので、適切な知識を持つ専門人材と連携をとりましょう。
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