共有持分【法律・税金】

共有持分に関わる税金とは?所有や取得、譲渡のケース別に解説

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共有持分は所有しているだけではメリットも少ないため、売却を検討する方は多くいらっしゃるでしょう。しかし、不動産の売買は多くの法律や税制に関わることから、専門知識のない方にとっては悩みの種でもあります。

そこで今回は、共有持分の売却で発生する税金関係の知識を包括的に解説します。共有持分の売却を検討されている方は、ぜひお役立てください。

共有持分はどのようなタイミングで税金が発生するのか?

共有持分において税金が発生するタイミングは、「取得→所有→売却(譲渡)」の3フェーズにわけられます。

所有とは、不動産を法的に手に入れ、土地・家屋の利用、収益化の権利を持つということ。それに伴う法的な責任も存在し、所有権は通常公式の記録(登記)によって証明されます。

取得は、購入や相続、寄付、交換などを通じて不動産の所有権を得ることです。具体的には契約交渉、金銭の支払い、所有権の移転(登記)などが含まれます。

最後に売却(あるいは譲渡)は所有者が他人に不動産の所有権を譲渡する行為を指します。売却や贈与、遺産による譲渡などの形があり、売却金の受け取り、所有権の移転(登記)が必要です。

共有持分の「取得」時に発生する税金

では、共有持分を取得した際にはどのような税金が課税されるのでしょうか。詳しくは以下のとおりです。

  • 不動産取得税
  • 贈与税
  • 相続税
  • 登録免許税

次項より、個別にみていきましょう。

不動産取得税

購入や贈与によって共有持分を取得した場合、都道府県から不動産取得税が課されますただし、相続による取得は対象外。

取得後半年から1年半程度で、各都道府県から納税通知が届きます。その後、金融機関にて納税するという流れを採ります。

税額は以下の計算式で算出可能。

  • 土地・建物の税額 = 固定資産税評価額 × 4%(標準税率)

ただし、2024年3月31日までの特例措置で、通常の4%が3%になります。さらに宅地評価の土地は、特例により固定資産税評価額を半額にして計算します。

なお、住宅については、新築ならば1,200万円の控除を受けることが可能です。

贈与税

贈与税は、贈与により財産を無料・低額譲受などで得たときにかかる税金です。不動産の場合、土地や建物を贈与されたり、住宅などの購入資金を援助されたりしたタイミングで対象となります。

贈与税では、毎年1月1日~12月31日まで(1暦年中)合計金額から、基礎控除額である110万円を差し引いた残額に贈与税を課す方式がとられています。これを暦年課税といいます。

平成27年以降の贈与税の税率は、「一般贈与財産」「特例贈与財産」の2つに分けられました。

特例贈与財産は、贈与によって財産を得た人(18歳以上で、贈与を受けた年の1月1日における状況)が、直系尊属(父母や祖父母など)から取得した財産の贈与税を計算する際に使用するための区分です。

各区分の贈与税の税率は、以下のとおり。

<一般贈与財産用(一般税率)>

課税価格範囲(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%
200万円超〜300万円以下15%10万円
300万円超〜400万円以下20%25万円
400万円超〜6,000万円以下30%65万円
6,000万円超〜1,000万円以下40%125万円
1,000万円超〜1,500万円以下45%175万円
1,500万円超〜3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

特例贈与財産用(特例税率)>

課税価格範囲(基礎控除後)税率控除額
200万円以下10%
200万円超〜400万円以下15%10万円
400万円超〜600万円以下20%30万円
600万円超〜1,000万円以下30%90万円
1,000万円超〜1,500万円以下40%190万円
1,500万円超〜3,000万円以下45%265万円
3,000万円超〜4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

なお、2,500万円までの贈与は、贈与者が死亡したときに相続税と合わせて課税・清算する「相続時精算課税」も存在します。

将来の相続が確定的な間柄での贈与に限られますし、他にも一定の条件が存在するものの、あわせて把握しておきましょう。

相続税

相続税は、相続人が相続などで取得する財産に対して課税されます。

相続税は、各相続人が相続によって取得した財産の額に直接税率を適用して計算するのではなく、相続した全財産(正味の遺産)から基礎控除額を引いた後の金額を法定相続分で按分。その金額に税率を適用して計算した金額の合計額(相続税の総額)を相続する財産の割合に応じて按分して計算する税金です。

相続税の計算式と税率は以下のとおりです。

【相続の基礎控除額】

  • 3,000万円 + 600万円× 法定相続人の数

【法定相続分に応じた税率】

法定相続に応じた金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
1,000万円〜3,000万円以下15%50万円
3,000万円〜5,000万円以下20%200万円
5,000万円〜1億円以下30%700万円
1億円〜2億円以下40%1,700万円
2億円〜3億円以下45%2,700万円
3億円〜6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税は、相続が開始した日の翌日から10ヶ月以内に申告・納税しなければなりません。期限を過ぎると特例が適用できなくなる他追加の税金が発生しかねないため、留意しましょう。

登録免許税

登録免許税は、不動産の登記に関連する税金で、法務局に納税する形で支払います。その金額は、不動産の「固定資産税評価額 × 登録免許税率」によって算出されます。

共有持分移転登記の場合、所有割合が計算に含まれるため注意が必要。登録免許税率は下記の計算式で算出します。

<建物の登記>

内容税率
所有権の保存0.4%
売買または競売による所有権の移転2%
相続または法人の合併による所有権の移転0.4%
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等)2%

<住宅用家屋の軽減税率>

項目内容税率
①:住宅用家屋の所有権の保存登記(措法72の2)個人が、令和6年3月31日までの間に住宅用家屋を新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存登記。0.15%
②:宅用家屋の所有権の移転登記(措法73)個人が、令和6年3月31日までの間に住宅用家屋の取得(売買および競落に限る)をし、自己の居住の用に供した場合の移転登記。0.3%
③:定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等(措法74)住宅用家屋に該当するもの(以下「特定認定長期優良住宅」)を新築または建築後使用されたことのない特定認定長期優良住宅の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存または移転登記。

(一戸建ての特定認定長期優良住宅の移転登記にあっては、0.2%となります。)

0.1%
④:認定低炭素住宅の所有権の保存登記等(措法74の2)個人が、令和6年3月31日までの間に、低炭素建築物で住宅用家屋に該当するもの(以下「認定低炭素住宅」)を新築または建築後使用されたことのない認定低炭素住宅の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存または移転登記。0.1%
⑤:特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記(措法74の3)個人が、令和6年3月31日までの間に、宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の住宅用家屋を取得する場合における当該住宅用家屋に係る所有権の移転登記。0.1%
⑥:住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記(措法75)個人が、令和6年3月31日までの間に住宅用家屋の新築(増築を含む)または住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合において、これらの住宅用家屋の新築もしくは取得をするための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記。0.1%

共有持分の「所有」時に発生する税金

共有持分を所有している場合、固定資産税・都市計画税が課税されます。それぞれについて個別に解説します。

固定資産税

固定資産税は、土地や家屋、建物、設備などの固定資産を所有している人に課税される“市町村税”です。この税金は毎年1月1日の所有者に対して課税されます。

固定資産税は、不動産の「固定資産税評価額」に対して1.4%の税率を適用して計算されます。ただし、自治体によっては、税率が1.4%以上となるケースも。

自治体によって異なりますが、固定資産税の支払いは、下記のような手段で行えます。

  • 現金で支払う
  • 口座振替で支払う
  • クレジットカードで支払う
  • ペイジーで支払う

共有名義不動産の固定資産税については、下記の記事でも詳しく解説しています。こちらもあわせてご参照ください。

関連記事:共有名義の「固定資産税」は誰が払うべき? 滞納した場合や支払いたくない場合はどうなる?

都市計画税

都市計画税は、所有している不動産が都市計画法による市街化区域に位置する場合に課税されます。

各地方自治体により、道路や公園、下水道の整備などの土地区画整理事業の費用を賄うために課税される税金です。税額の計算は、「固定資産税評価額 × 0.3%」の式に基づきます。

共有持分の「売却」時に発生する税金

共有持分を何らかの手段で売却した際には「譲渡所得税」「印紙税」の支払いが必要です。ここからは、それぞれについて詳しく紹介します。

譲渡所得税

不動産を売却した際の利益は譲渡所得として所得税と住民税の対象となります。この譲渡所得は他の所得とは別に計算され、分離課税となるのが特徴。

不動産を売却した際の売却価格から取得費や諸経費を引いた額が、不動産を取得した際の価格を超えた場合に課税される方式です。

譲渡所得税の税率は不動産の所有期間により変わり、5年以下(短期所得)と5年超(長期所得)の2つに分けられます。この所有期間は売却した年の1月1日を基準に計算されます。

 所得税住民税復興特別所得税合計
短期譲渡所得(5年以内)30%9%0.63%39.63%
長期譲渡所得(5年超)15%5%0.32%20.32%

よく使われる譲渡所得税の特例とは?

居住用不動産の譲渡所得税には、よく使われる2つの特例があります。

1つ目は、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」です。これは、譲渡所得から3,000万円を控除する特例です。

2つ目は、「居住用財産を売ったときの軽減税率の特例」です。居住用不動産の所有期間が10年以上の場合等に適用される税率の軽減です。譲渡所得が6,000万円以下の場合、所得税は10%、住民税は4%となります。6,000万円を超える部分については、所得税15%と住民税5%が適用されます。

課税長期譲渡所得金額(=A)

税額

6,000万円以下A×10%
6,000万円超(A-6,000万円)×15%+600万円

譲渡所得税の特別控除とは?

2009年と2010年に取得した土地については、譲渡所得から1,000万円を控除できる特例があります。ただし、この特例は上述の3,000万円の特例とは併用できません。

また、現在誰も使用していないなどの低未利用土地の譲渡に対しても特別控除があります。500万円以下で売却した場合、譲渡所得の100万円までが控除対象です。

これらの特例には細かな条件がありますので、詳細は国税庁のWebサイトを参照し、税理士等の専門家に相談しましょう。

印紙税

共有持分を売却する際には、売買契約書に対して課税される税金である「印紙税」を支払う必要もあります。印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼り付ける形で納税する仕組みで、印紙代は取引金額によって以下のように変動します。

契約金額印紙代
1万円未満非課税
1〜10万円200円
10〜50万円400円
50〜100万円1,000円
100〜500万円2,000円
500〜1,000万円1万円
1,000〜5,000万円2万円
5,000万〜1億円6万円
1億〜5億円10万円
5億〜10億円20万円
10億〜50億円40万円
50億〜60万円
契約金額の記載のないもの200円

なお、共有持分を売却するという特性上、契約金額が1,000万円を超えるケースはそこまでないでしょう。そのため「印紙税は大してかからない」と理解しても問題ありません。

認定長期優良住宅に関する特例措置とは?

耐震性や耐久性に優れ、適切な保全が確保されている新築住宅を購入した場合、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税が軽減される特例措置があります。この特例措置は、住宅の場合5年間、マンション等の場合7年間適用されます。

適用期限は、「所得税=2025年12月31日」「登録免許税・不動産取得税・固定資産税=2024年3月31日」です。共有持分の場合、持分割合に応じた税額を納付する仕組みです。

税金が発生したら確定申告も忘れずに行おう

共有持分の売却などを行ったら、確定申告を行う必要性を確認しましょう。期限、書類の記入方法や添付書類は法律で定められていますので、必ず遵守しましょう。

確定申告は、原則として2月15日から3月15日の1か月間に行う必要があります。必要な書類としては、以下のとおりです。

【確定申告に必要な書類】

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票(給与や年金など)
  • 不動産売買契約書
  • 不動産会社への仲介手数料の領収書
  • 売却した不動産の登記簿謄本

共有持分の場合でも、確定申告は共有者全員が行う必要があります。共有者の中の1人が代わりに行うことはできません。

不動産を譲渡した場合の所得は「分離課税」とされ、他の所得とは合算せずに計算し、申告しなければなりません。「譲渡所得の内訳書」の記入も必要です。

関連記事:共有不動産の売却でも「確定申告」は必要?やり方と注意点について紹介

まとめ

共有持分の売却は、各税制を考慮に入れた適切な計画が求められます。具体的には、共有持分の売却に伴う譲渡所得税とその特例や特別控除。さらには認定長期優良住宅の特例措置についてなどです。

税金が発生した場合の確定申告も踏まえつつ、売却を検討している場合は最新の情報を確認し、必要であれば専門家に相談することが重要。不動産の売却は大きな金額が動くため、適切な知識と準備を行いましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

佐藤 丈太郎(税理士)

税理士の職域に留まらず、クライアントファーストで多岐に渡る業務に従事。
大規模な相続対策や節税コンサルティングを得意としている。

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