共有状態のマンションを所有している場合、権利関係の悩みやトラブルは尽きないものでしょう。そのような問題を解決するべく、「共有状態のマンションを売却したい」と考えるケースは多々あるはず。
そこで今回は、どうすれば共有名義のマンションを売却できるのかについて解説します。共有名義のマンションについてお悩みの方は、ぜひお役立てください。
目次
共有名義状態のマンションとは
そもそも不動産の「名義」とは、当該不動産を所有している「人」のことを指す言葉です。
マンションや家などの不動産は「単独名義」として1人で登記することもあれば、複数人で「共有名義」として登記することも可能。共有する人は、夫婦・他人であっても問題ありません。
共有持分との違い
共有名義とあわせて「共有持分」という言葉がよく用いられます。共有持分とは、「共有者各々の所有割合」を表す言葉。
例えば、2000万円の不動産を2人で購入する際「Aさんが1000万円」「Bさんが1000万円」支払ったとしたら、共有持分はそれぞれ50%ずつとなります。
共有者全員に使用収益権がある
共有持分がA・B双方で50%となったとしても「マンションの東側がAのもの、西側がBのもの」という物理的な分け方をするわけではありません。共有名義の不動産は「全体に対し共有者全員が持分に応じた使用収益権を持つ」という、概念的な扱いになります。
【ケース別】共有名義のマンションで共有者ができること
共有名義のマンションは、売却や解体などが1人の判断で行うことができません。具体的には、以下のようなケース別にできることが変わってきます。
- 共有者単独で可能な行為
- 共有者の過半数の合意が必要な行為
- 共有者全員の合意が必要な行為
ここからは、それぞれについて個別に解説します。
共有者単独で可能な行為
民法において「各共有者が保存行為をすることができる」と定められています。単独で判断できる「保存行為」については、以下のとおりです。
【保存行為】
- 修繕
- 無権利者に明途請求・抹消登記請求
- 法定相続による所有権移転登記
「他の共有者の不利益にならないこと」を前提として、共有物の物理的現状を維持するのであれば、他の共有者の合意なしで行うことが可能です。
共有者の過半数の合意が必要な行為
共有マンションの「管理行為」は、共有持分の価格の過半数が合意すれば成立します。民法第252条によれば、「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する」とのこと。
例えば、共有者が3人おり、それぞれ3分の1ずつの持分だった場合、3人のうち2人が合意すれば決行可能です。
「管理行為」とは、主に下記のことを指します。
【管理行為】
- 賃貸借契約締結
- 共有物の使用方法決定
- 賃料の減額
- 賃貸借契約解除
なお、賃貸借契約の締結には「短期賃貸借の範囲を超えないもの」「借地借家法の適用を受けないもの」などの条件があります。
短期間賃貸借とは、民法602条により「建物3年、動産6カ月」と定められており、これを超えると、共有者自身が使用収益することが長期間制限されることから、次項の「変更(処分)行為」とみなされてしまいます。
そのため、共有者全員の合意が必要になります。
共有者全員の合意が必要な行為
「変更(処分)行為」は、共有者全員の合意がなければ成立しません。「何が変更(処分)行為にあたるのかのか」については、以下のものが該当します。
【変更(処分)行為】
- 売却
- 贈与
- 長期賃貸借
- 増築、改築
- 大規模な修繕
- 抵当権の設定
- 解体
- 建て替え
- 分筆・合筆
不動産に物理的変化を伴う行為や法律的に処分する行為は、単独では決行することができません。共有者が複数人おり、大多数が賛成している場合でも1人が反対の状態であれば実行できない点には留意しましょう。
実際は、「保存行為」「管理行為」「変更(処分)行為」の線引きは難しく、トラブルに発展した場合は訴訟に発展する可能性があります。
共有名義のマンションの売却方法
共有持分のマンションを売却する際には、「共有者全員で売却」「他の共有者への自分の持分の売却」のうち、どちらかを選択することになります。以下より、詳しくみていきましょう。
共有者全員で売却
前述のとおり、共有状態のマンションの売却は「変更(処分)行為」にあたるため、単独で判断できません。共有者全員の合意が必要になります。
共有者全員の賛成を得られ、全員の印鑑証明書や実印などがそろったら、マンションを売ることが可能。共有者全員と連絡が取れやすく協力し合える関係であれば、全員での売却を検討しましょう。
売却益から必要な経費を引き、残ったお金を持分の比率で分配するのがスムーズな方法です。夫婦の共有マンションの場合、持分の比率が夫3分の2・妻3分の1だったとしても離婚時の財産分与の考えから、2分の1ずつの分配となるため、留意が必要です。
夫婦で所有しているマンションの分け方については、下記の記事で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
関連記事:夫名義のマンションは「財産分与」で分けられる?取り分に関する考え方
他の共有者への自分の持分の売却
自分の持分を他の共有者に売ることも方法の1つです。反対に、自分に支払い能力があり共有者が納得している状態であれば、共有者の持分を買い取り、単有にすることも可能。
費用面で負担が増えるかもしれませんが、共有状態を解消できれば、「マンションを売却したい」と思ったときにスムーズに売却を進められるでしょう。
共有名義のマンションを売却する際のポイント
共有名義のマンションを売却する際には、以下の点を意識しましょう。
- 共有者間で合意形成をしておく
- 買取専門業者へ売却する
次項より、それぞれ個別に解説します。
共有者間で合意形成をしておく
単独で売却する場合でも、なるべく他の共有者に売却意思を伝えることが必要です。不動産の売却によって、数百万円から数千万円に及ぶような大金が入ってくることから、「黙って売却を進める」と、共有者間の関係性に亀裂が入りかねないためです。
話し合いの際には、売却行為だけでなく「売却代金の配分(共同売却の場合)」「住宅ローンの支払い方法(残っている場合)」についても協議しましょう。
買取専門業者へ売却する
「共有者と連絡がつかない」「同意が得られない」などの理由で困っている場合、自分の共有持分のみを売ることができます。
しかし自分の持分が2分の1だった場合でも、マンション全体の半分の価格で売れるわけではありません。さらに一般の人に「共有持分のみ買い取ってくれませんか」と申し出ても難しいでしょう。
そこで共有持分の買取専門業者に相談すれば、共有持分のみを買い取ってくれる可能性が大いにあります。
共有状態を解消する「共有物分割請求」も検討しよう
「マンションを売る」ということが目的ではなく「共有状態を解消したい」という場合は、「共有物分割請求」も検討しましょう。
共有物分割請求とは共有持分権者に法的に認められた権利。民法第256条では、以下のように定められています。
“各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない”
もし共有者が話し合いに応じない場合でも、裁判所を通して共有状態を解消することが可能。共有物分割請求の方法としては、以下のようなものがあります。
現物分割 | 共有持分に応じて物理的に現物を分ける方法。 |
---|---|
代償分割 | 第三者に売却して経費を差し引いて残ったお金を、共有持分に応じて分配する方法。 |
換価分割 | 共有者の誰か1人がすべての持分を買い取り、他の共有者に 代償金を支払う方法。 |
なお、共有物分割請求については、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
関連記事:共有物分割請求とは?請求方法や流れを解説
まとめ
共有名義のマンションは、他の共有者との兼ね合いなどで「売却したい」と思ったとしても、スムーズにいかない場合があります。自分自身で解決しようとした結果、さらなるトラブルを招いてしまった、という実例も少なくありません。
共有マンションの売却では法令に対する知識も求められるため、専門業者に買取をいらいするとスムーズです。場合によっては共有物分割請求という手段もありますので、まずは専門家に相談しましょう。
本ブログで情報発信を行っている当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり物件の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供しています。
共有持分であっても最短1日の買取が可能で、法的な手続きについては丸投げしていただけます。共有持分にお悩みの方は、ぜひ下記よりご相談ください。