日常生活でのさまざまな事情や変化から、不動産に関連する手続きを進めることが必要になることは少なくありません。特に、住宅ローンの完済後の抵当権抹消手続きは、人生において重要なイベントになるでしょう。
しかし、この手続きは簡単なものとはいえません。住所や氏名の変更、関連する書類の期限や必要性、そして専門家の助けを借りる場面など、多岐にわたる情報を把握しておく必要があります。
この記事では、抵当権抹消手続きを円滑に進めるためのポイントと注意点を詳しく解説します。まずは全体の流れを把握することから、手続きのハードルを下げてみましょう。
目次
抵当権抹消とは
抵当権は、一般的に住宅ローンをはじめとする多くの融資で用いられる権利です。この権利は、銀行や金融機関が貸し付けたお金の返済の確保のために、借り手の不動産(例:家や土地)を担保とするものです。
しかし、住宅ローン完済後も、この抵当権の登記は自動的に消滅するわけではありません。抵当権抹消とは、
こうした不動産に設定されている担保の権利の登記を取り消す手続きを指します。これを行わないと抵当権が消滅したことを対外的に証明することが困難になります。
抵当権抹消の基本的な手続きの流れは以下のとおり。
- 抵当権を抹消するための条件が揃う(例:住宅ローンの完済)。
- 該当する銀行や金融機関に、抹消に必要な書類の交付を要請する。
- 金融機関から受け取った書類と、その他の必要書類を整え、法務局にて抵当権抹消登記を申請する。
抵当権抹消が必要なケース
一般的なケースとして、住宅ローンの完済後に抵当権抹消登記を行う必要があります。ローン完済時に抵当権の登記も自動で消滅すると誤解されがちですが、これは正確ではありません。
手続きを自分で積極的に進めないと、抵当権の登記は残ったままとなります。通常、ローンを完済すると、金融機関から抹消登記に必要な書類が送付され、これに記入して登記申請を行うことで手続きは完了します。
抵当権が設定された状態の不動産を売却する際も、その前に抵当権抹消登記が必要。この場合、ローンの残債を不動産売却により得られた資金で清算することが一般的です。
抵当権抹消手続きをしない場合のリスク
抵当権抹消手続きをしない場合のリスクとしては、以下のものが考えられます。
- 書類が集めにくくなっていく
- 手続き自体もどんどん複雑化する
次項より、個別にみていきましょう。
必要書類が集めにくくなっていく
抵当権抹消登記に必要な書類は、多くの場合、住宅ローン完済時に金融機関から提供されます。しかしこれを放置し、手続きを先延ばしにしていると、書類を紛失するリスクが高まってきます。
再発行を求めることを簡単に考えるかもしれませんが、時間が経過するとその再発行が非常に難しくなることが多いのです。このため、抵当権抹消登記は、早めに完了させることをおすすめします。
手続き自体もどんどん複雑化する
時間を経ると、不動産所有者の死亡や、金融機関の合併や変更など、さまざまな変動が起きる可能性が考えられます。
そうなった場合、抵当権の抹消に関する手続きが一層複雑となるだけでなく、コストも増加するリスクが発生します。
特に、必要書類が整わなくなると、通常の手続きだけでなく、供託や裁判などの特別な手続きを経る必要が出てきます。
こういった手続きは、時間もコストもかかり、数十万円の出費が必要となる場合も考えられます。
抵当権抹消の手続きをスムーズに行うため、できるだけ早い段階での対応を心がけることが肝心です。
抵当権抹消手続きを自分で行うステップ
抵当権抹消手続きを自分で行う手順は、大きく4ステップに分けられます。
- Step1.書類の受け取り
- Step2.不動産情報の取得
- Step3.住民票や戸籍謄本の取得(※住所・指名が変わっている場合)
- Step4.登記申請書の法務局への提出
それぞれについて、詳しく解説します。
Step1.書類の受け取り
住宅ローンが完済となると、銀行からあなたの登録住所へ重要な書類が送られてきます。
その中には、抵当権抹消のための手続きに必須の文書も含まれるので、大切に保管することが不可欠。具体的には、次の文書が手続きに活用されます。
- 抵当権解除証書(銀行によって名称が異なることがあります。例:放棄証書)
- 銀行からの委任状
- 登記済権利証または登記識別情報通知
「抵当権解除証書」とは、抵当権を取り消す際の根拠となる文書で、いくつかの記入箇所が空白のまま提供されます。誤りのないよう慎重に記入しましょう。間違えてしまうと、再発行などの追加の手続きが必要になります。
さらに、債権者(銀行)と債務者(あなた)の双方が関与する手続きですので、銀行からの委任状も届きます。この文書も慎重に記入してください。
登記済権利証や登記識別情報通知は、銀行が抵当権を設定した際に発行されたものです。この書類を紛失してしまうと、通常の再発行は困難となり、特別な対応が求められることもあります。そのため、手続きが完了するまで丁寧に保管することをおすすめします。
Step2.不動産情報の取得
抵当権の抹消対象となる不動産に関する詳細情報を把握するため、法務局にて「登記事項証明書」を取得しましょう。
この証明書は、全国どの法務局でも取得可能です。取得には、「家屋番号」や「地番」が必要となります。これらの番号は一般的な住所とは異なるため、注意が必要。
もし番号が分からない場合、法務局に住所を伝えれば、彼らが該当する家屋番号・地番を教えてくれます。交付申請書は法務局にて提供されているので、必要事項を正確に記入し、窓口で登記事項証明書を受け取りましょう。
Step3.住民票や戸籍謄本の取得(※住所・指名が変わっている場合)
一般的に、抵当権抹消に必要な書類はStep①で取得した銀行からの文書で完結します。
しかし、不動産の所有者の登記情報(住所・氏名)が現在のものと異なる場合、事前に「所有権登記名義人表示変更登記」を実施する必要があります。
この変更登記を行う際には、次のような文書が求められます。
- 住所が変わっている場合:住民票もしくは戸籍の附票
- 氏名が変わっている場合:戸籍謄本
Step4.登記申請書の法務局への提出
Step1からStep3までの手続きを適切に完了させた後、次は法務局への正式な申請の段階です。登記申請書を適切に記入し、所轄の法務局に提出しましょう。直接窓口での提出のほか、郵送による申請も選べます。
抵当権抹消登記申請の際、登記完了予定日を必ず確認しておくことが大切です。登記申請に何らかの不備が発見されると、法務局より「補正」の連絡が入ります。
その際は、早急に指摘された点を修正するために法務局を訪れる必要があります。修正時には、申請の際に使用した印鑑を忘れずに持参しなければなりません。
補正の要請がなかった場合、指定された登記完了日を確認した上で、後日、完成した文書の受け取りに向かいましょう。文書の受け取りを代理人に依頼する場合は、以下のものを準備する必要があります。
- 登記申請時に使用した印鑑
- 代理人の身分証明書(運転免許証等)
- 委任状
抵当権抹消にかかる費用
抵当権抹消にかかる費用としては、以下のようなものがあります。
- 登録免許税
- 事前調査費用
- 抵当権抹消確認費用
次項より、詳しくみていきましょう。
登録免許税
抵当権抹消登記を申請する際に、登録免許税を納める必要があります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円となります。
土地建物1個ずつに設定されている抵当権を抹消する場合は、2,000円。敷地権付マンションの場合は、敷地権の目的となる土地の筆数と建物分が必要です。
事前調査費用
事前調査費用は、特定の不動産に関連する登記情報を調査するための費用を指します。具体的には、以下の2つの方法で登記内容を確認できます。
- 最新の登記事項証明書を取得する
- 法務局提供の「登記情報提供サービス」を活用する
多くの人は不動産購入時に登記事項証明書を受け取っていますが、最新の情報確認のために再度取得するケースも多々あります。
法務局窓口での取得は1筆ごとに600円、オンライン請求の場合は500円が必要。一方、登記情報提供サービスを利用する場合は、1筆あたりの料金が332円です。
抵当権抹消確認費用
抵当権抹消確認費用は、抵当権抹消登記が適切に行われたかを確かめるために必要な費用です。事前調査費用と同じく、登記事項証明書の取得や登記情報提供サービスを利用する方法があり、それぞれの費用は同様。
専門家である司法書士に手続きを依頼することで、手続きが迅速かつ適切に進められます。その際、一部の司法書士では事前の予約が必要となることがありますので、事前に把握しておきましょう。
抵当権抹消に関する注意点
抵当権抹消を検討する場合、以下の点に留意しましょう。
- 住所・氏名の変更手続きが必要な場合がある
- 関連書類には期限切れがある
それぞれについて、詳しく解説します。
住所・氏名の変更手続きが必要な場合がある
生活の変動、例えば引越しや結婚といった出来事で、登記簿上の所有者や抵当権設定者の情報が最新ではなくなることがあります。
このような場合、抵当権の抹消だけでなく、住所や氏名の変更手続きも必要となります。住所の変更を行う際には、変更の根拠となる住民票や住所変更の申請書が求められます。
便利なことに、住所変更登記申請書は法務局の公式ホームページからダウンロード可能。氏名が変更された場合は、戸籍の謄本と本籍情報が含まれた住民票が必要です。
変更事項によって提出書類が異なるので、手続き時には十分な注意が求められます。
関連書類には期限切れがある
抵当権抹消の際に必要な関連書類には、使用期限が設けられているものが存在します。例として、登記事項証明書は発行から3か月以内に使用する必要があります。期限を過ぎた書類は無効となり、再取得が必須となるので留意しましょう。
再取得の手間だけでなく、それに伴う費用も考慮しなければなりません。特に、金融機関からの書類再発行の際には、追加手間や時間がかかることも考えられます。
手続きをスムーズに進めるため、取得した書類の有効期限をしっかり確認し、適切なタイミングで使用しましょう。
抵当権抹消手続きは司法書士への依頼も検討しよう
抵当権の抹消手続きは、必要な書類が整っていれば、個人でも可能です。特に、住宅ローンの完済直後に手続きを進める場合は、自身での処理でも問題は少ないでしょう。
しかし、以下のような特定の状況では、手続きが難しくなることが考えられます。
- 必要な書類を紛失した場合
- 明治・大正・昭和初期といった時代の古い抵当権が関与する場合
- 手続きの複雑さや時間制約から自分での対応が困難な場合
このようなシチュエーションでは、専門家である司法書士に手続きを依頼するのがおすすめです。
費用は一般的に10万〜20万円程度。そのコストで専門的なサポートを受けられることを考えると、多くの方にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。
まとめ
不動産に関する手続きは、その多様性と複雑さから、一般の方にとって疑問や疑問が生じることも少なくないでしょう。特に、抵当権抹消のような手続きは、関連する書類や期限、さらには変更事項の登記など、多くの要素が絡み合って進行します。
そのなかで、自身での手続きが難しい場合や、手間を省きたい場合、専門家である司法書士のサポートを得ることは有効な選択肢です。不明点や疑問が生じた場合は、積極的に専門家に相談しましょう。
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