共有持分【基礎知識】

私道を共有持分で保有しているとどのようなトラブルが発生する?

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住宅地の開発や土地の分割などにより、私道を共有する形態が増えています。しかし、私道の共有持分を持つことで、修繕費用の負担や通行権をめぐるトラブルが発生することがあります。その際に問題となるのが私道の共有持分です。

私道の共有持分とは、複数の所有者が1つの私道を共同で所有する形態のことです。共有持分を持つことにはメリットもありますが、さまざまなトラブルのリスクも伴います。

そこで本記事では、私道の共有持分で発生するトラブルと、その対処法について詳しく解説します。

私道の共有持分とは

私道の共有持分は、一般的に認識されている以上に複雑な概念です。

多くの人が日常的に利用している道路の中には、実は私有地である私道が含まれていることをご存知でしょうか。この私道の所有形態の1つが「共有持分」なのです。

公道と私道の違い

公道と私道は、一見すると区別がつきにくいものの、その性質は大きく異なります。公道は国や地方自治体が管理し、誰もが自由に通行できる道路です。

一方、私道は個人や法人が所有する私有地であり、原則として所有者の許可なく通行することはできません。

公道の管理や補修は行政が行いますが、私道の場合はその所有者が責任を負います。このため、私道の所有者は維持管理の負担を背負うことになります。

ただし、建築基準法上の道路として指定された私道は、公道と同様に誰もが通行できるという特徴があります。

私道の共有形態

私道の共有形態には、主に「共同所有型」「相互持合型」の2つが挙げられます。

共同所有型は、1つの私道を複数の所有者が共有する形態です。例えば、ある私道を周辺の住民5人で等分に所有する場合、各人が5分の1ずつの持分を持つことになります。

一方、相互持合型は、私道を分割して各所有者が単独で所有する形態です。この場合、自分の所有する部分以外の私道を通行するために、通行地役権を設定することが一般的です。

私道の共有持分を持つことには、メリットとデメリットの両面があります。

建築基準法上の接道要件を満たせる可能性が高まる反面、維持管理費用や固定資産税の負担が生じます。また、共有者間でのトラブルが発生するリスクも存在するため、所有する際には十分な注意が必要です。

私道の共有持分に関するトラブル事例

私道の共有持分は、一見すると問題のない所有形態に思えますが、実際にはさまざまなトラブルの原因となることがあります。

以下より、代表的な事例についてみていきましょう。

共同所有型私道でのトラブル

共同所有型私道では、道路の管理や改修に関する意思決定が難しくなることがあります。例えば、道路の補修が必要になった場合、共有者全員の合意を得なければなりません。

しかし、費用負担や工事の時期などで意見が分かれ、なかなか合意に至らないケースが少なくありません。

また、固定資産税の支払いをめぐるトラブルも発生しやすいです。共有者の中に支払いを拒否する人がいると、他の共有者が余分な負担を強いられることになります。

このような事態を避けるためには、あらかじめ共有者間で明確な取り決めを設けておくことが重要です。

相互持合型私道でのトラブル

相互持合型私道では、通行権に関する問題が頻繁に発生します。自分の所有する部分以外の私道を通行する際に、他の所有者から制限を受けるケースがあるのです。

特に、新たに家を建てる際に必要となる水道やガスなどのインフラ設備の引き込み工事で、他の所有者から承諾が得られないといったトラブルが起こりがちです。

この場合、私道全体に対する通行地役権を設定し、登記しておくことが有効です。しかし、既存の私道でこれを新たに設定するのは容易ではありません。

私道の共有持分を持つメリットとデメリット

私道の共有持分を持つことには、プラスとマイナスの両面があります。これらを十分に理解した上で、所有の是非を判断することが大切です。

メリット

私道の共有持分を持つ最大のメリットは、建築基準法上の接道要件を満たせる可能性が高まることです。公道に直接面していない土地であっても、共有持分を持つ私道に接していれば、建物を建てることができる場合があります。

さらに、不動産としての資産価値が向上する可能性も挙げられます。私道の共有持分があることで、その土地の利用価値が高まり、売却時に有利に働くことがあるのです。

また、共有者として私道の管理に関与できるため、自身の生活環境を良好に保てるという利点もあります。

デメリット

一方で、私道の共有持分を持つことには負担も伴います。最も大きなデメリットは、維持管理の責任が生じることです。道路の補修や清掃などの費用を、持分に応じて負担しなければなりません。また、固定資産税の支払いも必要となります。

加えて、共有者間でのトラブルリスクも無視できません。意思決定の難しさや費用負担の問題など、さまざまな場面で対立が生じる可能性があります。このようなトラブルは、時として法的な紛争に発展することもあり、精神的・金銭的な負担が大きくなりかねません。

私道トラブルへの対処法

私道に関するトラブルは、一度発生すると解決が難しくなる傾向があります。しかし、適切な対応をとることで、問題を最小限に抑えたり、円滑に解決したりすることが可能です。以下に、具体的な対処法をいくつか紹介します。

当事者間での話し合いを行う

トラブルが発生した際、まず試みるべきは当事者間での話し合いです。共有者全員が集まり、問題の本質を明確にし、互いの立場を理解し合うことが大切。この際、感情的にならず、冷静に議論する必要があります。

話し合いの結果は、必ず書面にまとめておくことをおすすめします。将来的なトラブルを防ぐため、私道の使用規則や費用負担の方法などを明確に定めた取り決めを作成するのも有効です。

また、通行や掘削に関する承諾書を取り交わしておくことで、後々の紛争を予防できる可能性が高まります。

専門家や行政に相談を行う

当事者間での解決が難しい場合は、専門家への相談を検討しましょう。弁護士は法的な観点からアドバイスを提供し、交渉や訴訟の支援を行います。

特に、不動産専門の弁護士は私道問題に精通していることが多く、適切な解決策を提案してくれる可能性が高いです。

また、行政への相談も有効な手段の1つです。特に、私道が建築基準法上の道路として指定されている場合、自治体の建築指導課などが助言をくれることがあります。

ただし、行政は個人間の紛争に直接介入することは少ないため、その点は理解しておきましょう。

民法改正による解決策を活用する

2023年4月に施行された改正民法で特に注目すべきは、共有物の管理に関する規定の変更です。これにより、これまで全員の同意が必要だった一部の決定事項が、持分の過半数で決定できるようになりました。

例えば、私道の軽微な変更や修繕などは、共有者全員の同意がなくても、持分の過半数の賛成があれば実施できるようになりました。これにより、意思決定のプロセスが円滑化され、トラブルの解決がより容易になることが期待されています。

私道に面した不動産の売却時の注意点

私道に面した不動産を売却する際は、通常の不動産取引以上に注意を払う必要があります。買主に対して正確な情報を提供し、将来的なトラブルを防ぐためにも、以下の点に特に注意を払いましょう。

権利関係の明確化を行う

売却前に、私道に関する権利関係を明確にすることが極めて重要です。特に大切なのは「通行承諾書」「掘削承諾書」の取得です。これらの書類があることで、買主は安心して物件を購入できます。

通行承諾書は、私道の所有者から通行を許可されていることを証明する書類です。一方、掘削承諾書は、水道やガスなどのインフラ設備を引き込む際に必要な道路の掘削を許可する書類です。

これらの承諾書がない場合、売却そのものが困難になる可能性があります。

建築基準法の確認を行う

私道が建築基準法上の道路として認められているかどうかの確認も欠かせません。建築基準法では、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していることが、建物を建築するための条件となっています。

私道がこの条件を満たしていない場合、建物の建築や増改築が制限される可能性が生じます。

そのため、セットバック(道路中心線から2メートルの線まで後退すること)が必要になることも想定されます。これらの情報は、不動産の価値に大きく影響するため、買主に正確に伝えることが求められます。

私道持分がない場合の対応を行う

売却しようとする不動産に私道の持分がない場合、その対応が重要になります。この状況では、私道の所有者から通行や掘削の承諾を得ることが不可欠となります。承諾が得られない場合、不動産の価値が大きく下がる可能性を考慮する必要があります。

対策として、売却前に私道の持分を取得することも検討に値するでしょう。ただし、これには私道の所有者との交渉が必要となり、時間とコストがかかると予想されます。

まとめ

私道の共有持分は、一見すると単純な所有形態に思えますが、実際には複雑な問題をはらんでいます。共有者間のトラブルを未然に防ぐためには、事前に明確な取り決めを作成し、お互いの権利と責任を理解しておくことが重要です。

また、不動産の売買時には、私道に関する権利関係を明確にし、買主に正確な情報を提供する必要があります。

私道に関する問題は、法律や建築基準法など専門的な知識が必要となることが多いため、自己解決が難しいケースも少なくありません。

トラブルが発生した場合や、解決の糸口が見つからない場合は、早めに弁護士や不動産の専門家などに相談することをおすすめします。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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