共有持分【売却・買取】

共有持分を売却する際の注意点とは?税金関連の知識も交えて網羅的に解説

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相続や共同購入により不動産の共有持分を有することになった場合、将来的な売却や管理をめぐって共有者間でトラブルが発生することがあります。その際に検討すべきなのが共有持分の売却です。共有持分の売却とは、自身が保有する不動産の一部所有権を他の共有者や第三者に譲渡することです。

しかし、共有持分の売却には独特の課題や注意点があり、適切な知識がないと思わぬトラブルに発展する可能性があります。

そこで本記事では、共有持分売却の基本的な決まりごとから具体的な売却方法、注意点、税金や手続き、さらには売却の代替案まで、幅広く解説します。

共有持分の基本的な決まりごと

共有持分は、1つの不動産を複数人で所有する際に生じる権利割合を指します。この概念は、相続や共同購入などの場面で頻繁に登場し、不動産取引において重要な役割を果たしています。

共有持分を理解することは、円滑な不動産管理や将来的な売却に向けて欠かせません。

共有持分が発生する主な状況

共有持分は、主に2つの状況で発生します。1つ目は相続です。親の遺産を複数の子どもで相続する際、不動産を分割せずに共有名義にすることがあります。この場合、各相続人の法定相続分に応じて共有持分が決まります。

2つ目は、複数人での不動産購入です。夫婦や親子で新居を購入する際、それぞれの資金負担に応じて持分を設定することがあります。

例えば、3,000万円の不動産を夫が2,000万円、妻が1,000万円出資して購入した場合、夫の持分は3分の2、妻の持分は3分の1となります。このように、共有持分は出資額や相続分に応じて決定されるのが一般的です。

共有者の権利と制限

共有者は、自身の持分に応じた権利を持つ一方で、一定の制限も受けます。各共有者は、不動産の使用や収益を享受する権利を有しますが、他の共有者の同意なしに不動産全体を自由に処分することはできません

具体的には、共有者は単独で不動産に居住したり、賃貸収入を得たりすることが可能。ただし、不動産を売却したり、大規模な改築をしたりする場合は、全共有者の同意が必要となります。この制限は、他の共有者の権利を保護するためのものです。

また、共有者は自身の持分を自由に売却することができますが、これにより新たな共有者が加わることになるため、他の共有者との関係性に影響を与える可能性があります。

そのため、共有持分の売却を検討する際は、他の共有者との協議や同意を得ることが望ましいでしょう。

共有持分を売却する3つの方法

共有持分の売却は、単独所有の不動産を売却するのとは異なる手順や注意点があります。売却方法によって、メリットやデメリットが異なるため、自身の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。

ここでは、共有持分を売却する3つの主要な方法について詳しく解説します。

  • 方法①:他の共有者への売却
  • 方法②:第三者への売却
  • 方法③:買取専門業者への売却

それぞれ個別にみていきましょう。

方法①:他の共有者への売却

他の共有者への売却は、最もスムーズに進行する可能性が高い方法です。既に不動産を共有している相手なので、物件の状況や価値を熟知しています。

また、この方法であれば、新たな第三者が共有関係に入ってくることを避けられるメリットがあります。

売却の際には、まず他の共有者に売却の意向を伝え、価格交渉を行います。価格設定の際は、不動産鑑定士による評価を参考にすると良いでしょう。合意に至れば、売買契約を締結し、所有権移転登記を行います。

ただし、他の共有者に購入の意思や資金がない場合もあります。その場合は、次の方法を検討することが大切です。

方法②:第三者への売却

他の共有者への売却が難しい場合、第三者への売却を検討します。この方法では、不動産市場を通じて広く買主を募ることができます。ただし、共有持分の売却は一般的な不動産売却と比べて需要が限られるため、買主を見つけるのに時間がかかる可能性があります。

売却手続きは通常の不動産売却と同様ですが、他の共有者への配慮が必要です。具体的には、売却前に他の共有者に通知し、新たな共有者が加わることへの理解を求めます。

また、売買契約書には共有物件であることを明記し、買主にも共有に関する制限や責任を理解してもらう必要があります。

方法③:買取専門業者への売却

共有持分の買取を専門とする業者への売却は、比較的迅速に現金化できる方法です。これらの業者は共有持分の扱いに慣れているため、手続きがスムーズに進みます。また、一般の買主を探す手間も省けます。

ただし、買取価格が市場価格より低くなる傾向があることに注意が必要。これは、買取業者が将来的な売却や権利調整のリスクを考慮するためです。複数の買取業者から見積もりを取り、条件を比較検討することをおすすめします。

買取業者を選ぶ際は、実績や評判、アフターフォローの内容なども確認しましょう。中には強引な交渉をする業者もいるため、慎重に選択することが大切です。

共有持分を売却する際の注意点

共有持分の売却は、一見単純に見えて実は複雑な手続きです。単独所有の不動産売却とは異なる課題や注意点が多々存在します。

売却を円滑に進め、将来的なトラブルを回避するためには、以下のポイントに注意を払う必要があります。

  • 他の共有者とのトラブルを避ける
  • 適正価格の見誤りを防ぐ
  • 適切な買主を選定する
  •  将来的な権利関係の複雑化を防ぐ

それぞれ個別にみていきましょう。

他の共有者とのトラブルを避ける

共有持分の売却において、最も重要な点の1つが他の共有者との良好な関係維持です。法的には自身の持分を自由に処分できますが、他の共有者の理解を得ずに進めると、後々トラブルの種になりかねません。

まずは、売却の意向を他の共有者に丁寧に説明し、理解を求めることから始めましょう。

可能であれば、売却の理由や今後の不動産の利用方針などについても話し合いの場を設けるとよいでしょう。他の共有者が優先的に買い取る意思があるかどうかも確認しておくことが大切です。

もし、他の共有者から反対意見が出た場合は、その理由をよく聞き、解決策を一緒に考えることが重要です。場合によっては、専門家を交えた話し合いの場を設けることも検討しましょう。

適正価格の見誤りを防ぐ

共有持分の適正価格を決めるのは、単独所有の不動産よりも難しい面があります。一般的に、共有持分は不動産全体の価値に持分割合を掛けた金額よりも、低く評価されることが多いのです。

これは、共有物件の管理や処分に制限があることや、将来的な権利関係の調整コストなどが考慮されることが理由となります。そのため、適正価格を見誤らないよう、不動産鑑定士による専門的な評価を受けることをおすすめします。

また、近隣の類似物件の取引事例や、不動産市場の動向なども参考にしましょう。複数の不動産業者から査定を受けることで、より正確な価格帯を把握することができます。

適切な買主を選定する

共有持分の買主を選ぶ際は、単に高値をつけた相手を選ぶだけでなく、将来的な共有関係を考慮しなければなりません。

特に第三者に売却する場合は、新たな共有者となる人物の性格や経済状況、不動産の利用目的なども可能な限り確認しましょう。

買主が不動産投資会社や買取専門業者の場合は、その会社の実績や評判、アフターフォローの内容なども吟味することが大切です。中には強引な交渉や権利主張をする業者もあるため、慎重に選ぶ必要があります。

また、買主が共有物件であることを十分理解しているか、共有に伴う制限や責任を受け入れる用意があるかも確認しましょう。これらの点を明確にしておくことで、売却後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

 将来的な権利関係の複雑化を防ぐ

共有持分の売却は、不動産の権利関係に大きな影響を与える可能性があります。

特に、第三者への売却の場合、新たな共有者が加わることで権利関係が複雑化しかねません。

この複雑化を防ぐためには、売却時に将来的な不動産の利用や管理について、可能な限り取り決めをしておくことが重要です。

例えば、修繕費用の分担方法や、将来的な売却の際の優先買取権の設定などを、契約書や覚書の形で明文化しておくとよいでしょう。

また、共有物分割請求権の行使に関する取り決めや、共有者間の意思決定方法についても予め合意しておくことで、将来的なトラブルを回避できる可能性が高まります。

共有持分売却に伴う税金関係の必要知識

共有持分の売却には、一般の不動産売却と同様に、さまざまな税金や手続きが伴います。ただし、共有持分特有の注意点もあるため、正確な知識を持って対応することが重要です。

ここでは、共有持分売却に関連する主な税金と手続きについて、詳しく解説していきます。

譲渡所得税の計算と特例

共有持分を売却した場合、その売却益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得税は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益に対して計算されます。

譲渡所得の計算式は以下のとおり。

  • 譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

ここで注意すべき点は、取得費の計算方法です。共有持分を相続で取得した場合、相続時の評価額が取得費となります。共同で購入した場合は、実際に負担した金額が取得費になります。

譲渡所得税の税率は、所有期間によって異なります。5年超の長期所有の場合は「所得税15%、住民税5%」、5年以下の短期所有の場合は「所得税30%、住民税9%」となります。

また、一定の条件を満たす場合、特例措置を利用できる可能性があります。例えば、居住用財産を売却した場合の3,000万円特別控除や、買い替え特例などです。

これらの特例は共有持分の売却にも適用可能ですが、適用条件や控除額の計算方法が複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

登記手続きと登録免許税

共有持分を売却した場合、不動産登記簿の名義変更が必要になります。この手続きを「所有権移転登記」といいます。登記手続きは通常、司法書士に依頼して行います。

所有権移転登記の際には、登録免許税が課税されます。登録免許税の税率は、原則として固定資産税評価額の2%です。

共有持分の場合、登録免許税の計算基礎となる金額は、固定資産税評価額に持分割合を乗じた金額になります。例えば、固定資産税評価額が1,000万円の不動産で、2分の1の持分を売却する場合、登録免許税の計算基礎は500万円となります。

なお、登記手続きの際には、売主と買主の本人確認資料や、売買契約書、固定資産評価証明書などの書類が必要になります。これらの書類の準備も、司法書士が支援してくれるでしょう。

確定申告の方法

共有持分の売却による所得は、原則として確定申告が必要です。確定申告は、売却した年の翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います

確定申告の手順は以下のとおりです。

  • 必要書類の準備:売買契約書、登記簿謄本、取得時の契約書、諸経費の領収書など。
  • 申告書の作成:国税庁のホームページからダウンロードできる確定申告書を使用するか、確定申告書作成コーナーを利用して作成。
  • 申告書の提出:作成した申告書を税務署に提出します。電子申告(e-Tax)を利用すれば、自宅からオンラインで提出することも可能。
  • 納税:確定申告で計算された税額を、指定の期日までに納付。

共有持分の売却に関する確定申告は、一般の不動産売却よりも複雑になる可能性があります。特に、取得費の按分計算や特例の適用などに注意が必要です。

不安な点がある場合は、税理士や国税局の税務相談窓口を利用することをおすすめします。

共有持分売却の代替案

共有持分の売却が難しい場合や、より良い解決策を求める場合、いくつかの代替案が考えられます。代表的なものとしては、以下のとおりです。

  • ①:不動産全体の売却
  • ②:共有物分割請求
  • ③: 他の共有者への贈与

それぞれ個別にみていきましょう。

①:不動産全体の売却

共有者全員が売却に同意できる場合、不動産全体を売却することが最も簡潔な解決策となる可能性があり、いくつかの利点があります。

まず、一般的に不動産全体の方が共有持分よりも売却しやすく、より高値で売却できる可能性が高まります。共有状態が解消されるため、買主にとっても魅力的な物件となります。

また、売却益を共有持分に応じて分配することで、公平な解決が図れます。税務上も、居住用財産の譲渡所得の特別控除などの特例が適用しやすくなる可能性があります。

ただし、この方法を選択する際は、全共有者の合意が必要不可欠です。売却の意思決定から価格設定、契約締結まで、すべての過程で共有者間の綿密な協議が求められます。意見の相違がある場合は、専門家を交えた話し合いの場を設けることも有効でしょう。

②:共有物分割請求

共有者の間で意見がまとまらない場合、法的な手段として共有物分割請求を行うことができます。

これは、民法上認められた権利で、共有関係の解消を裁判所に求める手続きです。

共有物分割請求が認められると、裁判所の判断により以下のいずれかの方法で共有関係が解消されます。

  • 現物分割:物理的に不動産を分割し、それぞれの共有者に割り当てる方法
  • 価格賠償:一部の共有者が不動産を取得し、他の共有者に金銭で補償する方法
  • 競売分割:不動産を競売にかけ、その代金を分配する方法

この方法は、他の共有者との交渉が難航した場合の最終手段として考えられます。ただし、裁判には時間とコストがかかり、人間関係に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重に検討する必要があります。

③: 他の共有者への贈与

経済的な対価を得ることよりも、共有関係からの離脱を優先したい場合、他の共有者への贈与という選択肢もあります。これは、自身の持分を無償で他の共有者に譲渡する方法です。

贈与のメリットとしては、手続きが比較的簡単で、すぐに共有関係から解放されることが挙げられます。また、家族間での贈与の場合、相続税の生前贈与の対策にもなり得ます。

ただし、贈与には以下のような点に留意が必要です。

<贈与税>

  • 受贈者側に贈与税が発生する可能性がある。ただし、配偶者間の贈与や年間110万円以下の贈与は非課税となる。

<将来の相続への影響>

  • 相続時に贈与財産が持ち戻しの対象となりかねない。

<他の共有者の同意>

  • 贈与を受ける側の同意が必要。相手が受け取りを拒否する可能性がある。

これらの代替案は、それぞれに長所と短所があります。自身の状況や他の共有者との関係、税金面での影響などを総合的に考慮し、最適な選択をすることが重要です。

複雑な法的・税務的問題が絡むため、弁護士や税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

共有持分の問題は一朝一夕には解決しないかもしれません。しかし、これらの代替案を含めて幅広い視点で検討することで、より良い解決策を見出せる可能性が高まります。

まとめ

共有持分の売却は、単独所有の不動産売却とは異なる複雑さを伴います。他の共有者との関係性、適正価格の設定、適切な買主の選定など、多くの要素を慎重に検討する必要があります。また、税金や法的手続きについても正確な知識が求められます。

共有持分の売却を検討する際は、まず自身の状況を冷静に分析し、他の共有者との対話を重ねることが大切です。場合によっては、不動産全体の売却や共有物分割請求など、代替案の検討も有効かもしれません。

トラブルを避け、最適な解決策を講じるためにも、弁護士や税理士などの専門家に相談するのがベターです。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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