共有持分【売却・買取】

共有持分の売却では共有者の同意は必要?民法上のルールや注意点を紹介

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共有不動産の持分売却は、共有者間の同意がなくとも可能ですが、潜在的なトラブルを避けるためには、あらかじめ他の共有者との交渉が重要です。

共有持分の売却や共有状態の解消は、専門的な知識を必要とするため、適切な不動産業者や法律家との協力が不可欠といえます。

本記事では、共有持分の売却で同意が必要なのかどうかに加え、共有者間の交渉の重要性、専門業者の選定方法などを解説します。

共有持分の売却は可能なのか?

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有している場合に、各所有者がその不動産に対して有する権利の割合を指します。

この割合には、全員が等しく権利を持つ均等共有の場合と、一部の共有者が他の共有者よりも大きな割合を持つ不均等共有の場合があります。

不動産を複数の所有者が共有している状態は「共有名義」と呼ばれ、その典型的な例としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 夫婦が新居購入の際に共有名義で登記するケース
  • 親から相続された不動産を兄弟姉妹間で共有するケース
  • 二世帯住宅を購入する際に、親子が費用を分担するケース

共有名義の不動産の売却には、通常、共有者全員の合意が必要です。しかし、個々の共有持分に関しては、その所有者が自由に売却することが可能。これにより、共有者の一人が自身の持分を第三者に売却できます。

次項より、共有持分を売却する際に知っておきたい民法上のルールを解説します。

共有持分の売却に関わる民法上のルール

共有持分の売却に関わる民法上のルールとしては、以下のものが挙げられます。

  • 自分の持分のみなら「同意なし」で売却できる
  • 不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要
  • 税金は持分割合に応じて負担する
  • 他の共有者からを受ける恐れもある

それぞれ詳しく解説します。

自分の持分のみなら「同意なし」で売却できる

共有不動産の全体売却には共有者全体の一致した同意が不可欠であると説明しましたが、個人の共有持分に関しては、他の共有者の承諾を必要とせずに売却が可能です。これは、自己の持分に限り、個人の裁量で行動できることを意味します。

この権利の根拠は、民法第206条に明記されており、「所有者は、法令の範囲内で、自己の所有物の使用、収益、及び処分の権利を有する」とされています。

これにより、共有不動産の一部を構成する自己持分については、自由に売却することが法的に保障されているのです

共有不動産の共有者間で意見の不一致が発生したり、物件の管理や活用方針について合意形成が難しい場合が珍しくありません。こうした状況下でも、自己持分に関しては、いつでも個別に売却する自由があります。

不動産全体の売却には「共有者全員の同意」が必要

一方で、共有不動産全体の売却には、全共有者の一致した同意が絶対条件です。これは、民法第251条に基づくもので、「各共有者は、他の共有者の同意なしに共有物に大きな変更(形状や効用の大幅な変更を伴うもの)を加えることはできない」と規定されています。

2023年4月の法改正により、軽微な変更については、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは除く」という条文が追加され、このような小規模な変更は管理行為とみなされるようになりました。

例えば、外壁の修繕や屋根の改修、砂利道のアスファルト化といった、物件の構造や用途に重大な影響を与えない変更は、過半数の同意で実施可能となっています。

これは、以前は共有者全員の合意が必要だった軽微な変更が、より柔軟に行えるようになったことを意味します。

税金は持分割合に応じて負担する

共有不動産に関わる維持管理費や固定資産税などの経費は、所有者間でその持分割合に応じて分担されるべきです。

この原則は、民法第253条に「各共有者は、その持分に応じて管理の費用を負担し、共有物に関わるその他の負荷も共同で支払う」と定められています。つまり、各共有者は自分の持分比率に基づいて、これらの費用や税金を負担する義務があるのです。

実務上、税金の納付書は一般的に共有不動産の代表者に送付されます。そのため、代表者が先にこれらの費用を立て替え、後から他の共有者にその分を請求することが一般的な手続きです。

もし共有者がこれらの費用の支払いを拒否した場合、最終手段として、支払いを拒否する共有者の持分を強制的に買い取ることが可能。

費用の立て替えから1年が経過すると、このような措置を取ることができ、立て替えた費用は買取価格から差し引いて精算されます。

共有持分の売却相場はどのくらい?

共有持分の売却は、主に企業によって行われることも珍しくありません。これは、共有持分が単独では実質的な使用価値を持ちにくいため、エンドユーザーに直接売却する仲介がほとんど行われないからです。

共有持分の市場における需要は限られており、その結果、市場価値が低く設定されることが一般的です。

したがって、売却を検討している場合は、共有者間で協議を行い、不動産全体の売却が可能かどうかを最初に検討することが望ましいといえます。それは、全体としての売却の方が、持分に応じた収益を高める可能性が高いためです。

もし共有者間の協議が成立しない場合でも、個々の持分は個人の所有物であるため、その処分については自由。

この際、可能な限り条件の良い買取業者を見つけるために、複数の業者を比較検討し、最も有利な売却条件を提供してくれる業者を選択することが重要です。

共有持分の売却におけるトラブルを避ける方法

共有持分の売却におけるトラブルを避ける上では、以下の点に留意しましょう。

  • なるべく他の共有者と交渉する
  • 訳あり物件の買取専門業者に依頼する
  • 売却後のアフターフォローまで想定しておく

次項より、詳しく解説します。

なるべく他の共有者と交渉する

共有持分の売却を進める際、他の共有者との交渉は非常に重要です。

共有不動産というのは、複数の所有者が1つの財産を共有している状態を指し、所有者間の意見の相違からさまざまな問題が生じることがあります。

不動産の全体売却には全共有者の同意が必要であり、使用や管理に関しても持分の比率に基づく過半数の同意が求められます。

遺産分割により共有状態になった不動産では、共有者間の意見の違いや感情的な問題が原因で、不動産の処分が困難になることも。特に、相続により持分が均等に分配された場合や、二次相続により共有者が増えるケースでは、解決が一層複雑になります。

訳あり物件の買取専門業者に依頼する

共有持分の取り扱いには、民法の規定など専門的な知識が必要とされ、共有者との権利交渉には交渉スキルや経験が求められます。

これらの知識やノウハウを持たない不動産業者に依頼した場合、本来避けられたトラブルを引き起こすリスクがあります。

そのため、共有持分の取り扱いに豊富な実績を持つ不動産業者を選ぶことが重要。共有持分に関する専門的な査定を行える業者は限られており、通常の不動産査定とは異なり、共有者間の関係性や潜在的なトラブルの有無も評価額に影響します。

売却希望者にとっては、可能な限り高額での売却が望ましいでしょう。この目的を達成するためには、共有持分の価値を適切に評価し、正確な査定を行える専門業者に依頼することが大切です。

訳あり物件の買取に特化した専門業者は、共有持分の複雑な問題を理解し、適切な価格での買取を提案してくれる可能性が高いためです。

専門業者の選定に際しては、その業者が「共有持分の取り扱いに関する深い知識と経験を持つかどうか」を慎重に評価しましょう。

売却後のアフターフォローまで想定しておく

共有持分の売却は、その後の共有者間でのトラブル発生の可能性を孕んでいます。例えば、他の共有者が売却行為に同意していない場合、その後の関係悪化や法的な紛争に発展することもあり得るでしょう。

これを防ぐため、売却取引をサポートする不動産業者を選ぶ際には、売却後も法的なトラブルに対応できる体制を整えているかが重要になります。

特に、弁護士が在籍しているか、または提携している業者を選ぶことで、万が一のトラブルに迅速かつ適切に対応してもらえる可能性が高まります。

契約書の法的チェックや契約時の立会いなど、具体的なサポート内容を事前に確認し、比較検討することが望ましいといえます。

共有状態を解消したいなら「共有物分割請求訴訟 」も検討しよう

共有不動産の売却を希望しても他の共有者の同意が得られない場合、共有状態の解消が1つの解決策となります。

共有物分割請求は、共有者間の合意が得られない場合に共有状態を終了させる法的な手段。具体的には「共有物の全体を特定の共有者が買い取る」「不動産を物理的に分割する」「共有物を市場に売却し、その収益を持分に応じて分配する」などの方法があります。

これらの手段は、まず共有者間の話し合いによって進めるのが基本ですが、合意に至らない場合は、簡易裁判所による共有物分割調停を申し立てることができます。

調停を通じても合意に達しない場合には、共有物分割訴訟を提起し、裁判所の判決によって分割方法を決定することになります。このプロセスを通じて、共有状態から脱却し、共有持分を現金化する道が開かれるでしょう。

まとめ

共有不動産の持分売却は、多くの場合、共有者間の合意形成の困難さ、適切な価格での売却、売却後のトラブル回避などが課題として発生します。

売却プロセスを円滑に進めるためには、「共有者との事前の交渉」「専門知識を持つ不動産業者によるサポート」が不可欠でしょう。

共有物分割請求訴訟を含む共有状態の解消方法も、共有持分を有効に活用する上で重要な選択肢の1つです。共有持分の売却や共有状態の解消を考えている方は、適切な専門家に相談しましょう。

本ブログで情報発信を行っている当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり物件の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供しています。

共有持分であっても最短1日の買取が可能で、法的な手続きについては丸投げしていただけます。共有持分にお悩みの方は、ぜひ下記よりご相談ください。

この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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