共有持分【基礎知識】

共有持分の家族信託にメリットはある?トラブル防止に繋がる必要知識を解説

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共有持分の信託とは、複数人で所有する不動産の持分を信託財産として管理・処分する方法です。

相続や共同購入により共有不動産をお持ちの方は、将来的な管理や処分についてお悩みではないでしょうか。実際問題として、共有持分を適切に管理しないと、意思決定の困難さや相続による共有者増加、認知症リスクなど、さまざまな問題が生じる可能性があります。

そこで本記事では、共有持分の信託の仕組みや活用方法まで、詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、共有不動産の適切な管理方法を学んでください。

共有持分とは

共有持分とは、1つの不動産を複数の人が共同で所有する際に、各所有者が持つ権利の割合のことを指します。例えば、ある土地を3人で均等に共有している場合、各人の共有持分は3分の1ずつとなります。

この共有持分は、不動産登記簿に記載され、法的に認められた権利です。共有持分の特徴として、各共有者は自分の持分に応じて不動産を使用する権利を持ちますが、不動産全体の管理や処分に関しては、他の共有者との合意が必要となる点が挙げられます

また、共有者は自分の持分を自由に売却したり担保に入れたりすることができますが、不動産全体の売却や大規模な変更には全共有者の同意が必要となります。

このような特徴により、共有持分は柔軟性がある一方で、共有者間の意見の相違や利害関係の対立が生じやすい性質を持っています。

共有持分が生じる主な場面

共有持分が生じる主な場面として、最も多いのは相続によるケースです。例えば、親が所有していた不動産を複数の子どもが相続する際、その不動産を分割せずに共有することで共有持分が発生します。

また、夫婦で不動産を購入する際に、両者の名義で登記することで共有状態となることもあります。事業用不動産の場合、複数の事業者が共同で土地や建物を所有することで共有持分が生じることがあります。

さらに、相続時に遺産分割協議が整わず、暫定的に相続人全員で共有するケースも少なくありません。兄弟姉妹で親の家を共有したり、親族間で別荘を共有したりするなど、家族や親族間での共有も多く見られます。

このように、共有持分はさまざまな場面で発生し、時には意図せずに共有状態に陥ることもあるため、その管理や将来的な処分について事前に考えておきましょう。

共有持分によるトラブルの可能性

共有持分を所有していると、以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。

  • 意思決定の困難さ
  • 相続による共有者の増加
  • 共有者の認知症リスク

それぞれ個別にみていきましょう。

意思決定の困難さ

共有持分による最大のトラブルの1つが、不動産に関する意思決定の困難さです。共有不動産の管理や処分には、原則として共有者全員の合意が必要となります。例えば、不動産を売却したい場合、1人でも反対する共有者がいれば売却できません。

また、賃貸や大規模な修繕を行う際も、共有者の過半数の同意が必要となります。これらの意思決定プロセスは、共有者の数が多いほど複雑になり、時間もかかります

さらに、共有者間で利害関係が対立する場合、話し合いがこじれて解決が難しくなることもあります。

例えば、ある共有者は不動産を売却して現金化したいと考え、別の共有者は賃貸して安定収入を得たいと考えるなど、方針が分かれるケースが多々存在します。

このような意見の相違は、家族間であっても生じる可能性があり、結果として不動産の有効活用が妨げられたり、共有者間の関係悪化につながったりするリスクがあります。

相続による共有者の増加

相続による共有者の増加は、共有持分に関する重大なリスクの1つです。例えば、親から相続した不動産を3人の兄弟姉妹で共有している場合、そのうちの1人が亡くなると、その人の相続人(配偶者や子ども)も新たに共有者となる可能性があります

これを「二次相続」と呼びます。二次相続が発生すると、共有者の数が増え、さらに血縁関係が遠くなるため、意思決定がより複雑になります。例えば、当初3人だった共有者が、二次相続により7人に増えるケースも珍しくありません。

共有者が増えるほど、全員の意見を調整することは難しくなり、不動産の管理や処分に関する合意形成が困難になります。また、新たな共有者の中には、元々の共有者との関係が希薄な人もいるかもしれません。

このような状況下では、共有不動産の売却や有効活用が事実上不可能になる、いわゆる“塩漬け状態”に陥るリスクが高まります。

共有者の認知症リスク

共有者の認知症リスクは、共有持分に関する深刻な問題の1つです。共有者のなかに認知症を発症する人が出てくると、不動産の管理や処分に大きな支障をきたす可能性があります

認知症により判断能力が低下すると、その人は法的に有効な同意を行うことができなくなります。例えば、不動産の売却や大規模な修繕など、共有者全員の同意が必要な事項について、認知症の共有者から同意を得ることができません。

また、認知症の共有者に成年後見人がついたとしても、成年後見人には本人の財産を処分する権限が制限されているため、簡単には同意できません。

このような状況下では、他の共有者が売却や修繕を希望しても、それを実行することが事実上不可能になります

さらに、認知症の共有者の相続が発生した場合、相続人との調整も必要となり、問題がより複雑化する可能性があります。共有者の認知症リスクは、不動産の円滑な管理と将来的な処分に大きな障害となる可能性があるため、事前の対策が極めて重要となります。

共有持分の信託とは?

共有持分の信託とは、共有不動産の持分を信託財産として信託契約を結ぶことです。信託の基本的な仕組みは、財産の所有者(委託者)が信頼できる人(受託者)に財産の管理や処分を任せ、その利益を受益者が受け取るというものです。

共有持分の信託の場合、委託者は共有者、受託者は共有者の一人や信頼できる家族、受益者は委託者自身や指定された人となります。

例えば、3人の兄弟が共有する不動産の場合、3人全員が委託者となり、そのうちの1人を受託者に指名し、3人を受益者とする信託契約を結ぶことができます。

この仕組みにより、不動産の名義は受託者に移りますが、受託者は信託契約に基づいて不動産を管理し、その利益は受益者に分配されます

信託契約では、受託者の権限や義務、利益の分配方法などを詳細に定めることができるため、共有者の意向を反映した柔軟な管理が可能となります。

共有持分を信託することのメリット

共有持分を信託することには、いくつかの重要なメリットがあります。まず、意思決定の迅速化と効率化が挙げられます。

信託により受託者に権限が集中するため、共有者全員の同意を得る必要がなくなり、不動産の管理や処分がスムーズに行えるようになります。

例えば、修繕や売却の決定を受託者が単独で行えるため、時間と労力を大幅に削減できます。次に、将来的なリスク対策になります。

共有者の認知症発症や死亡による相続の際も、信託契約に基づいて管理が継続されるため、共有者の増加や意思決定の困難化を防げます

また、二次相続や三次相続までを見据えた財産承継計画を立てることも可能で、共有者間のトラブル防止にも効果があります。信託契約で明確なルールを定めることで、利益分配や管理方針に関する紛争を未然に防止できるのです。

加えて、プライバシー保護の面でも優れており、不動産登記簿上は受託者名義となるため、共有関係が公になりません。これらのメリットにより、共有持分の信託は複雑な共有関係を整理し、円滑な不動産管理を実現する有効な手段となっています。

共有持分の信託における具体的な活用例

ここからは、共有持分の信託についての具体的な活用例をみていきましょう。

共有者の一人に権限を集中させるケース

共有者の1人に権限を集中させるケースは、共有持分の信託の典型的な活用例です。例えば、父親が所有していた不動産を3人の子どもが相続し、共有状態になったとします。

この場合、3人の子ども全員が委託者となり、そのうちの1人(例えば長男)を受託者に指名し、3人全員を受益者とする信託契約を結びます。これにより、不動産の名義は長男に移りますが、長男は信託契約に基づいて不動産を管理し、その利益は3人に分配されます。

このケースのメリットは、前述したように不動産の管理や処分に関する意思決定が迅速になることです。具体的には、不動産の賃貸や売却、大規模修繕などの決定を長男が単独で行えるようになります。

3人のうちの誰かが認知症になったり、死亡して相続が発生したりしても、長男が継続して管理できるため、将来的なリスクにも対応できます。

ただし、受託者となる長男に大きな責任と負担がかかるため、信頼関係が強く、管理能力のある人を選ぶことが重要です。また、他の兄弟との利益相反を防ぐため、信託契約で明確なルールを定めなければなりません。

共有者以外の家族に管理を任せるケース

共有者以外の家族に管理を任せるケースは、共有者全員が高齢である場合や、共有者間の関係が複雑な場合に有効な方法です。

例えば、80代の3人兄弟が共有する不動産があるとします。3人とも高齢で、将来的に認知症のリスクがあります。この場合、3人の兄弟が委託者となり、信頼できる次世代の家族(例えば長男の子ども)を受託者に指名し、3人の兄弟を受益者とする信託契約を結びます。

これにより、不動産の名義は次世代の家族に移りますが、その家族は信託契約に基づいて不動産を管理し、利益は3人の兄弟に分配されます。このケースのメリットは、高齢の共有者が認知症になっても、若い世代の受託者が継続して不動産を管理できる点です。

また、共有者間の利害関係から離れた立場の人が管理することで、公平性が保たれやすくなります。

さらに、将来の相続を見据えた管理が可能になります。例えば、3人の兄弟が亡くなった後の受益者を信託契約で指定しておくことで、スムーズな世代交代を実現できます。

ただし、受託者となる家族に十分な管理能力があることを確認し、信託契約で詳細な管理方針を定めることが重要です。また、定期的に共有者や他の家族に報告する仕組みを設けるなど、透明性を確保する工夫も必要です。

共有持分の信託を行う際の注意点

共有持分の信託を行う際には、以下の点に留意しましょう。

  • 受託者の選定と監督
  • 信託契約の設計と遺留分への配慮

次項より、詳しく解説します。

受託者の選定と監督

共有持分の信託において、受託者の選定は非常に重要です。受託者には不動産の管理と処分に関する大きな権限が与えられるため、信頼できる人物を選ぶ必要があります。

一般的に、共有者の中から最も管理能力のある人や、共有者以外の信頼できる家族が選ばれます。

選定の際は、その人物の誠実性、管理能力、公平性などを慎重に検討しましょう。加えて、受託者の負担も考慮する必要があります。不動産管理には時間と労力がかかるため、受託者の日常生活に支障がない人を選ぶことが大切です。

受託者の監督も重要な要素で、信託法では受託者に善管注意義務が課されていますが、実際の管理が適切に行われているか確認する仕組みを設けることが望ましいです。

例えば、定期的な報告会の開催や、信託監督人の設置などが考えられます。信託監督人は、受託者の業務を監督し、必要に応じて是正を求める役割を果たします。また、受託者の解任や変更の条件を信託契約に明記しておくことも重要です。

これにより、受託者が不適切な管理を行った場合や、受託者自身が高齢化した場合などに対応できます。

信託契約の設計と遺留分への配慮

信託契約の設計は、共有持分の信託を成功させる上では重要な要素で、その内容は共有者全員の意向を反映し、将来的なリスクにも対応できるものにする必要があります。

具体的には「受託者の権限と義務」「利益の分配方法」「信託の終了条件」「次の受託者の指定方法」などを明確に定めます。また、不動産の売却や建て替えなど、重要な決定に関する基準や手続きも明記しておくとよいでしょう。

遺留分への配慮も重要な注意点です。遺留分とは、相続人に保障される最低限の相続分のことで、共有持分の信託が遺留分を侵害しないよう注意が必要です。

例えば、ある共有者の子どもを受益者から除外するような信託契約は、その子どもの遺留分を侵害する可能性があります。

このような場合、将来的に遺留分侵害額請求を受ける可能性があり、信託の安定性を脅かす恐れがあります。

遺留分への配慮を適切に行うには、各共有者の家族構成や資産状況を詳細に把握し、弁護士や税理士などの専門家のアドバイスを受けながら信託契約を設計することが重要です。

また、遺留分の放棄や遺留分に関する特別受益の持ち戻し免除など、法律で認められた対策を活用することも検討しましょう。

共有持分の信託と他の対策方法の比較

ここからは、共有持分問題を解消するための、信託以外の選択肢についてみていきましょう。

遺言との比較

共有持分の対策として、信託と遺言はどちらも有効な手段ですが、それぞれに特徴があります。遺言の主なメリットは、作成が比較的簡単で費用も抑えられることです。遺言者の意思を明確に示せるため、相続人間の争いを防ぐ効果があります。

しかし、遺言は遺言者の死亡時にのみ効力を発揮するため、遺言者の認知症など生前の問題に対応できません。また、遺言では二次相続以降の承継先を指定できないため、長期的な財産管理計画を立てるのが難しいです。

一方、信託は生前から効力を発揮し、認知症対策としても有効です。また、二次相続以降の承継先も指定できるため、長期的な財産管理が可能です。さらに、受託者に柔軟な権限を与えられるため、状況の変化に応じた対応が可能です。

ただし、信託は遺言に比べて設定手続きが複雑で、専門家のサポートが必要になるため、初期費用がかかります。また、信託財産の管理に継続的なコストがかかる可能性もあります。

したがって、共有持分の対策として信託か遺言かを選択する際は、財産の規模、家族関係、将来の見通しなどを総合的に考慮し、専門家に相談しながら判断することが重要です。

成年後見制度との比較

共有持分の管理において、信託と成年後見制度はどちらも判断能力の低下に対応できる制度ですが、その特徴は大きく異なります。成年後見制度の主なメリットは、公的機関が関与するため安全性が高く、本人の権利を守る制度として確立されていることです。

また、財産管理だけでなく、身上監護(生活や医療に関する決定)も行えます。しかし、成年後見制度には以下のような制限があります。まず、本人の判断能力が低下した後でないと利用できません。

また、成年後見人には財産処分の権限に制限があり、不動産の売却などには家庭裁判所の許可が必要です。さらに、本人の死亡と同時に終了するため、相続対策としては機能しません。

一方、信託は本人の判断能力が健全なうちから設定でき、将来の認知症に備えられます。また、受託者に幅広い権限を与えられるため、柔軟な財産管理が可能です。さらに、本人の死後も信託を継続できるため、相続対策としても有効です。

ただし、信託は私的契約であるため、成年後見制度に比べると公的な監督が弱く、受託者の不正のリスクがあります。また、身上監護には対応できないため、完全な認知症対策としては不十分な面があります。

したがって、共有持分の管理方法として信託か成年後見制度かを選択する際は、本人の現在の判断能力、家族関係、財産の規模と性質、将来の見通しなどを総合的に考慮し、場合によっては両制度を組み合わせて活用することも検討すべきです。

専門家に相談しながら、最適な方法を選択することが重要です。

まとめ

マンションの専有部分と共用部分の違い、共有持分の仕組みを理解することは、マンション所有者にとって非常に重要です。これらの知識は、日常的な管理から大規模修繕、さらには売却や相続の場面まで、さまざまな局面で活用されます。

特に、共有持分の売却・処分に関する制限や、固定資産税の支払い方法については、トラブルを避けるためにも正確に把握しておく必要があります

また、専有部分の共有状態に悩んでいる方は、共有者全員の合意による売却や自己持分のみの売却など、状況に応じた解決方法を検討することが大切です。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

川村 有毅(司法書士)

私が司法書士になる前は、接客サービス・営業等、お客様と直に接する仕事に長く携わってきました。
そこから、お客様とのコミュニケーションを事務的にせず、お話をしっかりと拝聴し、問題を共有することの大切さを学びました。
お客様と接する機会をもっと重要視し、人と人とのつながりを大切にします。
お客様に人の手のぬくもりが感じられる「あたたかな安心」を提供いたします。

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