相続という大きなライフイベントでは、「実家などを共有持分で相続する」という方も多々いらっしゃることでしょう。
その際に「共有持分を受け取るべきなのか」「潜在的なトラブルをどうやって避けるべきなのか」について、多くの疑問と不安を抱くケースは珍しくありません。
この記事では、共有持分の相続に関する知識について詳しく解説します。相続の過程をスムーズに進め、予期しないトラブルから自分自身を守るための方法を紹介しますので、ぜひお役立てください。
目次
共有持分の相続に関する基礎知識
共有持分とは、複数の人が一つの財産(特に不動産)を共有する際、それぞれが保有する権利の割合を指します。例えば、AさんとBさんが一緒に不動産を所有していて、Aさんが6割、Bさんが4割を所有している場合、これが共有持分です。
相続が発生した場合、共有持分は相続人に引き継がれます。上記の例でAさんが亡くなった場合、Aさんの子供たちがAさんの6割の共有持分を相続します。
遺言書が残されている場合、遺言に基づき遺産分割がなされるのが原則。その場合、遺産の分配方法について話し合う必要はありません。
相続人が有する「法定相続分」とは?
相続人とは、法律に基づき相続権を持つ者を指し、配偶者は常に相続人となります。
法定相続分とは民法で決定される、相続人が相続できる割合のこと。誰が相続人となるかで、その割合は異なります。
具体的な割合については以下のとおりです。配偶者はいつでも相続人となり、その他の者については以下の順序で相続人になれます。
- 第1順位:被相続人の子は
- 第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 第3順位:被相続人の兄弟姉妹
相続発生時には、これらの優先順位についても踏まえておきましょう。
関連記事:共有持分とは?不動産を共有し続けるリスクや共有状態の解消方法を解説
相続発生時、共有持分の扱いはどうなる?
2人以上の相続人がいる状況で相続が始まった場合、遺産分割が完了するまで相続財産は全員の共有状態となります(民法898条)。
つまり、何も手続きしなくても、相続人は法定相続分に応じた共有持分を持つ状態になります。
預貯金など物理的に分割可能な財産は各相続人の法定相続分に従って分けることが可能なため、共有問題が起きる可能性は少ないでしょう。
しかし、不動産のような物理的に分割が困難な財産は、遺産分割協議の結果、共有状態が維持されることがあります。その場合、遺産分割の内容に従い、各相続人が該当財産の共有持分を所有する結果になります。
被相続人が不動産の共有持分を持っていた場合、その共有持分が遺産分割の対象になり、相続人は元々の共有者と一緒にその不動産を共有することになるのです。
共有持分を相続する際の流れ
共有持分を相続する際の流れとしては、以下のとおりです。
- Step1.遺言書・相続人・相続財産の確認
- Step2.遺産分割協議(※遺言書がない場合)
- Step3.相続登記
- Step4.相続税の納付
ここからは、各手順について個別に解説します。
Step1.遺言書・相続人・相続財産の確認
被相続人が死亡した場合、まず相続財産と相続人を調査し、遺言書を確認しましょう。遺言書があるかどうか分からない場合、遺言書の有無を調べなければなりません。
公正証書遺言書(公証役場が遺言の有効性を証明した遺言書)があれば、「遺言検索システム」を使って遺言の有無を調べられます。
ただし、自筆遺言のような公正証書遺言以外のものは自己調査が必要。自宅、銀行の貸金庫、法務局など、遺言書が保管されている可能性のある場所を探しましょう。
公正証書遺言以外の遺言書、あるいは「遺言書情報証明書」が交付されている遺言書以外は、家庭裁判所で検認しなければなりません。
遺言書を検認せずに開封した場合、その内容が無効になるわけではありませんが、過料5万円以下の罰則が科せられます。
Step2.遺産分割協議(※遺言書がない場合)
遺言書がない場合、遺産分割協議を通じて分割方法を協議します。遺産分割協議とは相続人同士で相続割合を決める話し合いを指します。
不動産や預貯金などの遺産の分割方法、相続する不動産の取り扱いなどを協議します。
法律により遺産分割協議は「相続人全員」が参加することが定められています。協議に参加しなかった相続人が1人でもいると、協議結果は無効となります。
協議には全ての相続人が参加する必要がありますが、必ずしも対面で協議する必要はありません。電話や手紙などでやり取りすることも可能です。
しかし、遺産分割協議書を作成する際には、全ての相続人の署名と押印が求められます。
Step3.相続登記
遺産分割の方法が決定したら、法務局で相続登記を行い、共有持分の名義を変更します。申請は共有不動産の住所地を管轄する法務局になります。
法務局が遠くても郵送やオンラインで申請することが可能です。
Step4.相続税の納付
相続登記が完了したら、相続税の申告と納付を行いましょう。申告は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署になります。
相続税は各相続人の課税価格と課税遺産額の合計から計算します。ただし、通常の課税とは異なり、各人が相続によって取得した財産の額に、直接税率を掛けて計算するわけではありません。
相続税は、法定相続金額から基礎控除額を差し引き、そこに税率をかけて計算する方式です。基礎控除額と税率の計算方法については、以下のとおり。
【相続の基礎控除額】
- 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
【法定相続分に応じた税率】
法定相続に応じた金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続時に共有持分を分割する方法
相続をする際には、下記のいずれかの方法で共有持分を分割する必要があります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
次項より、それぞれの方法について具体的に解説します。
現物分割
現物分割は、財産をそのままの形で分割する手法です。共有持分の状況では、共有不動産を持分割合に基づいて分ける方法。
不動産全体を物理的に分けることになりますので、分割が容易な土地の場合に適用されます。建物の場合、1つの建物を別々に分割することは困難なため、現物分割はほとんど使用されません。
現物分割を行うには全ての権利者の同意が必要。もし相続財産が「被相続人が所有していた共有持分」である場合、相続人以外の共有者とも協議が必要な場合があります。
代償分割
代償分割とは、一人が単独で共有持分を相続し、その代わりに他の相続人に対して金銭や他の資産を支払う手法です。「他の相続人が所有する相続分を買い取る」と考えると理解しやすいでしょう。
支払いは金銭に限らず、自分が所有する別の不動産、有価証券、自動車などの他の資産でも可能。相続する共有持分と同等の価値の資産であれば、どの種類の資産で清算しても問題ありません。
具体的にどの資産で清算するのか、また現金の場合は一括払いか分割払いかなど、詳細な内容は協議により決定します。
ただし、支払う資産を所有していない人や、そもそも共有持分を取得したくない人に、強制的に共有持分を負担させることはできないため留意しましょう。
換価分割
換価分割とは、共有持分を売却し、その売却代金を現金で分割する方法です。1円単位で分割できるため、最も公平に共有持分を分けられます。
相続人全員が換価分割に同意し、相続登記を完了し、名義を被相続人から相続人に変更した上で売却するという流れです。
ただし、共有持分だけを売却する場合、一般的な不動産会社では取り扱いを断られるケースが多々あります。
共有持分の売却は特殊な不動産取引となるため、専門的な知識が必要。そのため、共有持分専門の不動産業者に相談し、スムーズかつ最適な価格で売却しましょう。
共有持分の相続で発生し得るトラブルを回避するには?
共有持分の相続では、各利害関係者間でトラブルが発生しがちです。それを回避するためにも、以下の事柄を把握しておきましょう。
- 被相続人が健在のうちに話し合いをしておく
- 「隠れた相続人についてチェックする
- 相続後、自分の持分のみの売却を検討する
次項より、それぞれについて解説します。
被相続人が健在のうちに話し合いをしておく
被相続人(親や祖父母など)がまだ生きている場合、相続人全員で事前に話し合っておくことが有益です。
被相続人の意向を理解しておくことで、相続人間の不満が生じる可能性を低減できるでしょう。これにより共有持分の分配に関するトラブルを未然に防げます。
さらに、相続財産に対する理解を深め、他の相続人が財産を隠しているという疑念も生じません。
相続が発生した際、葬儀の準備などで忙しくなりがちですが、事前に話し合っておくことでスムーズな遺産の分割を可能にすると踏まえておきましょう。
「隠れた相続人」についてチェックする
遺産相続では、「実は私も相続人です」という人が後から現れてトラブルになることがあります。特に、被相続人が離婚し、前の配偶者との間に子供がいる場合などで問題になります。
遺産の分割は「全ての相続人の参加」が前提となるため、後から「隠れた相続人」が現れると、相続の手続きをやり直さなければなりません。被相続人の戸籍などを調べ、全ての相続人を確認することが重要です。
相続後、自分の持分のみの売却を検討する
共有不動産の売却に際しては、他の共有者に買い取ってもらうことも可能です。共有者が親族であれば、買い取ってもらえる可能性もあります。
ただし、トラブルを避けるためにも事前に専門家に相談し、必要であれば介入してもらうようにしましょう
共有持分の相続で専門家に相談した方がいいケース
他の共有者について「所在がわからない」「意見が合わない」などの理由が考えられます。以下より、個別にみていきましょう。
他の共有者の所在がわからない
共有持分を相続した場合、遺産の使用方法や処分方針について他の共有者と話し合うことが必要です。
しかし、相続登記をせず放置していた場合、現在の所有者が登記簿上からは判明しないケースも考えられます。これが起きると、誰と話し合えば良いのかが不明確になることがあります。
このような場合、弁護士に依頼すれば他の共有者の相続関係を調査可能。調査を行うと現在の権利者を確定でき、弁護士は代理人として相手との話し合いを進められます。
他の共有者と意見が合わない
資産を共有状態にしておくと、さまざまなリスクが生じます。そのため、相続の機会に共有関係を解消することが望ましいといえます。
共有関係を解消する方法としては「共有持分の買取専門業者への売却」「共有者間での売却」「共有物分割請求の実施」などがあります。
まとめ
共有持分を相続することには、いくつかのメリットがあるものの、それ以上にトラブル発生のリスクもつきものです。共有持分を相続するかどうかは、個々の状況と意向によるといえます。
大切なのは、共有持分の分割方法などを把握し、トラブルを回避する方法を理解しておくことです。相続問題は複雑なので、専門家への相談も考慮に入れましょう。
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