共有持分【相続】

不動産の「共同相続」とは?共同で遺産を相続する際の注意点を解説

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不動産相続は、多くの家庭で避けて通れないテーマとなっています。しかし、遺産の分割や管理に関する認識や意向が一致しないことで、予期せぬトラブルが生じることが少なくありません。

特に不動産を相続する場合、その取り扱いには細心の注意が求められます。相続人間の関係性や遺産の性質によって、最適な方法が異なるため、十分な情報と知識のもとでの検討が必要となるのです。

この記事では共同相続が必要になった場合に備えて、把握しておくべき知識を解説しますので、ぜひお役立てください。

共同相続とは

共同相続とは、相続人が複数いる場合に、相続財産を分ける方法の1つです。具体例として、長男と長女の2名が相続人であった場合、不動産という相続財産を、各々が2分の1の共有名義として持つ形となるケースを指します。

では、実際のところ共同相続はどのような場合なのでしょうか。例を挙げて考えてみましょう。相続人が長男と長女の2名のみで、相続財産として一軒家(不動産)しか持っていない状況を考えます。この場面で、平等に資産を2人で分ける方法にはいくつか選択肢があります。

最もシンプルな方法は、その不動産を売却し、得られた利益を2人で折半する手法。例えば、売却益が2,000万円だった場合、長男と長女は、それぞれ1,000万円を受け取る形になります。

この方法は「換価分割」として知られています。しかしながら、地方での売却が難しい場合や、家に思い入れがあり売りたくないなどの理由でこの選択が困難な場合も存在します。

もう1つの方法としては「代償分割」という手法があります。これは、長男が全ての不動産を相続し、その代わりに長女に1,000万円などの代償金を支払う方法。しかし、長男がその金額を支払う能力がない場合は、この方法も難しくなるでしょう。

これらの方法が難しい場合、平等に財産を分けるために、不動産を「長男1/2」「長女1/2」の共有名義として相続する方法が採用されることもあるのです。

共同相続人とは

共同相続人とは、相続において複数の人が財産を受け継ぐ相続人を指します。相続が発生した際、遺言書が存在しないケースでは、相続財産はまず全ての相続人が共有する形として認識されます。

このように、複数の相続人が相続財産を共同で相続する状態を「共同相続」と称し、その状態の相続人たちを「共同相続人」と呼ぶのです。

実際に、この概念は民法898条で以下のように明文化されています。

 

「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」

引用:民法 | e-Gov法令検索

共同相続と普通の相続の違い

では、共同相続は通常の遺産相続とはどのような点で異なるのでしょうか。代表的なものをピックアップすると、以下のとおり。

  • 遺産分割協議の必要性
  • 必要書類の数
  • 相続税申告の方法

それぞれ、個別にみていきましょう。

遺産分割協議の必要性

相続発生時、遺言書もなく、相続人が複数存在すると、遺産分割が必須となります。

遺産分割は、各相続人への相続財産の配分を意味します。この手続きが完了しない限り、預金の引き出しや不動産の名義変更などの手続きが難しくなることが多いのです。

相続の開始と共に、相続人の確定手続きや財産の詳細確認が行われ、これに続いて相続人全員の参加のもとで遺産分割が実施されます。

遺産分割の進め方には以下の3つが主に挙げられます。

  • 遺産分割協議:全ての相続人が話し合いを行い、全員の合意が必要。
  • 遺産分割調停:家庭裁判所が中心となり、調停を進める。
  • 遺産分割審判:家庭裁判所が最終的な遺産の分割方法を決定する。

通常、遺産分割協議から始め、合意が難しければ調停、さらに進展しない場合は審判の手続きを進めます。

遺産分割が確定すると、それに基づいた公的文書が作成され、これをもとに各種手続きを進めることが可能となります。

必要書類の数

共同相続時には、単独相続に比べ、各手続きに必要な書類が増加します。

それぞれの相続形態で必要とされる主要な書類を以下に示します。

<単独相続の場合>

  • 故人の生誕から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本

<共同相続の場合>

  • 故人の生誕から死亡までの戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 全ての相続人の戸籍謄本
  • 全ての相続人の印鑑証明書

相続税申告の方法

共同相続時の相続税申告は、通常、全ての相続人が連名で行うことが求められます。

相続される財産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人数」を超える場合、相続税が発生し、税の申告が必要となります。

多くのケースで、相続人全員が一つの申告書を共同で提出します。それぞれが個別に申告することも可能です。

共同相続人の決まり方

共同相続人の決まり方を挙げると、以下の3パターンに分けられます。

  • 一般的な場合
  • 共同相続人が相続放棄した場合
  • 共同相続人が相続完了前に亡くなった場合

それぞれ、個別にみていきましょう。

一般的な場合

配偶者は、特別な状況がない限り、常に相続人の資格を持ちます。しかし、相続人は配偶者だけにとどまりません。亡くなった人の子どもは、第1順位の相続人として認識されます。子どもが複数いる場合、全員が平等に相続の資格を持つことになります。

先立たれた子どもが存在する場合、その子どもの子、すなわち孫が相続権を継承します。これを「代襲相続」と称します。さらに孫も亡くなっているケースでは、次の世代が相続の権利を持つ場合があります。

第1順位に該当する者がいないの場合、次は第2順位の親が相続人として認識されるのが通例。親がすでに亡くなっている場合、祖父母や更に上の世代が相続人となることも考えられます。

もし、第2順位にも該当者がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。その上で、先立たれた兄弟姉妹の子、つまり甥や姪が代襲の資格を持ちます。ただし、兄弟姉妹の代襲は一代のみとされます。

共同相続人が相続放棄した場合

相続権を持つ共同相続人が相続を放棄した場合、次の順位の者が相続権を持つこととなります。

例として、第1順位の子どもが相続を放棄した場合、孫がいても、次の第2順位の親が相続人となります。これは、相続放棄した者は初めから相続人でなかったという扱いになるためです。

共同相続人が相続完了前に亡くなった場合

共同相続人が遺産の分割が完了する前に亡くなった場合、その者の相続権は、その者の相続人に引き継がれます。

例えば、父の遺産を相続する際、相続人として母、長男、次男の3人がいたとしましょう。遺産分割前に長男が亡くなった場合、長男の相続人である彼の妻や子どもが、長男の代わりに遺産分割協議に参加することとなります。

この結果、この父の遺産の相続人は母、次男、長男の妻、そして長男の子どもという4人となります。

不動産を共有相続するリスク

不動産を共有相続するリスクとしては、以下のものが考えられるでしょう。

  • 共有者間で利活用や管理で意見がまとまらない
  • 固定資産税の支払いで揉める
  • 経年とともに権利関係が複雑化する

ここからは、それぞれ個別に解説します。

共有者間で利活用や管理で意見がまとまらない

共有された不動産においては、使用方法や売却などの決定が難しくなるケースが多々あります。とりわけ相続に関連する場合、相続人間での意見の不一致がトラブルの原因となり得ます。

法的に、共有の不動産を売却するには共同相続人全員の同意が必要。これは、たとえ一人の相続人が反対すれば、売却は難しくなることを意味します。一人だけの持分を売ることは可能ですが、実際には買い手を見つけることは困難となり得ます。

空き家として放置された共有の不動産は、管理上のトラブルが生じやすいのも実情。これは、維持や修繕に関する責任をめぐる相続人間の対立や、共有状態での所有意識の希薄化から来るものです。

その結果、建物が荒廃し、近隣でのトラブルや不法投棄、火災などのリスクが高まることが考えられます。これを防ぐためには、共有状態を速やかに解消し、明確な責任を持つ者が管理を行うことが求められます。

固定資産税の支払いで揉める

共有のままの不動産では、固定資産税の負担がトラブルの原因となることが一般的です。通常、固定資産税の納付書は共同相続人の代表者へと送られ、その代表者が他の相続人からの支払いを集めて納税する必要があります。

しかし、支払いを拒否する、あるいは支払う能力がない相続人が現れることも少なくありません。このような場合、連帯納税義務に基づき、他の共有者が負担を負うこととなります。

経年とともに権利関係が複雑化する

共有状態が継続する中で、共同相続人の一部が亡くなると、その相続人が新たな共同相続人として加わり、所有者が増加するという問題が生じます。

前述の例では、父の自宅を共同相続人として所有していた母・長男・次男の3人のうち、長男が亡くなった場合、長男の妻と子どもも新たな共同相続人として加わり、所有者は4人に増加します。これにより、様々なトラブルのリスクが増えることが考えられます。

共同相続における遺産分割の方法

共同相続における遺産分割の方法としては、次のとおりです。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割

以下より、詳しく解説します。

現物分割

現物分割とは、遺産をそのままの形で相続人間で分け合う方法です。例えば、土地や家、車などの物理的な資産をそのままの形で分割することを指します。

現物分割は最も直接的な分割方法であり、具体的な財産を特定の相続人に割り当てることができます。

ただし、全ての財産が均等に分割できるわけではないため、特定の財産について相続人間の意見が一致しない場合、トラブルの原因となるケースもあります。

代償分割

代償分割は、一部の相続人が遺産の一部を全て取得する代わりに、他の相続人に金銭などでの補償を行う方法です。

例えば、ある土地を一人の相続人が全て取得する代わりに、他の相続人に一定の金額を支払う、といった方法で遺産を分割します。

代償分割は、代償の額や方法についての合意が難しくなる場合や、補償金の支払いが滞ることでトラブルが生じる可能性がある点に留意が必要です。

換価分割

換価分割は、遺産を売却し、その売却額をもとに相続人間で分割する方法です。具体的な財産に執着がない場合や、現物での分割が困難な場合に有効な方法となります。売却によって得られた金銭を基に、相続人間で分配します。

ただし、財産の売却価格が相続人の期待を下回る場合や、売却までの時間がかかることで遺産分割が遅れる可能性が懸念されます。また、売却に伴う税金や手数料などの負担も考慮する必要があるでしょう。

まとめ

不動産を相続する際には、管理や活用、固定資産税の支払い、さらに経年とともの権利関係の複雑化といったさまざまなリスクが伴います。現物分割、代償分割、換価分割という3つの遺産分割の方法には、それぞれに特徴と問題点があり、適切な選択が求められます。

最終的な選択や決定を行う前に、十分な情報収集と理解が必要。特に複雑なケースや不明確な点がある場合は、適切なアドバイスを受けられる専門家に相談することを推奨します。相続のトラブルを未然に防ぎ、円滑な遺産の取り扱いを実現するために、専門家に相談しましょう。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

川村 有毅(司法書士)

私が司法書士になる前は、接客サービス・営業等、お客様と直に接する仕事に長く携わってきました。
そこから、お客様とのコミュニケーションを事務的にせず、お話をしっかりと拝聴し、問題を共有することの大切さを学びました。
お客様と接する機会をもっと重要視し、人と人とのつながりを大切にします。
お客様に人の手のぬくもりが感じられる「あたたかな安心」を提供いたします。

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