共有名義の不動産で、共有者が亡くなった場合、当該不動産はどのように扱われるのでしょうか。相続人がいる場合には、不動産は相続人に引き継がれます。しかし、相続人がいないケースでは、非常に複雑になります。
残された共有者が不動産を取得できる場合もあれば、取得できない可能性ももあるのです。今回は、不動産の共有者の一人が亡くなった場合に、その共有者がどうなるかについて説明しますので、参考にしてください。
目次
亡くなった共有者に相続人がいない場合
共有持分の所有者が死亡し、相続人がいない場合は問題が生じやすいといえるでしょう。亡くなった共有者に相続人がいないケースは、以下のとおり。
- 配偶者、親、子、兄弟姉妹がいない。
- 相続人が相続放棄をした。
子や孫、ひ孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪がおらず、法定相続人がいない場合は、相続する人が存在しません。
相続人がいたとしても、全員が相続を放棄してしまえば、相続人がいないのと同じ状況になります。この場合、共有持分を相続する人がいなくなってしまうのです。
相続人がいない場合、共有持分はどうなるのか?
相続人がいない場合の共有持分の扱いについて考えてみましょう。民法には下記のとおりの規定があります。
「共有者の一人がその持分を放棄したとき、又はその者が死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」
この規定によると、共有者が死亡して相続人がいない場合、その権利は他の共有者に移ることになります。これは、不動産の所有権をできるだけ一人に集中させることが望ましいことから、このような規定が設けられているのです。
さらに、民法の別の条項には、以下のような規定もあります。
つまり、人が亡くなった場合、基本的には法定相続人のみが遺産を受け取れる……、ということです。ただし、その人の内縁の妻や献身的な介護者には相続する権利がないので、遺産を受け取ることはできません。
しかし、相続人がいない場合に、そのような近親者が全く遺産を受け取れないというのは理不尽な話ともいえるでしょう。
そこで、相続人がいない場合には、被相続人と生前に密接な関係にあった人は、「特別縁故者」として相続財産の一部の受け取りが可能。
以上2つの規定があるため、共有者が死亡して相続人がいない場合、「共有者」「特別縁故者(内縁の妻など)」のどちらに遺産の一部を受け取る権利があるのかは、明確ではないのです。
裁判所の見解は?
裁判所は、共有者が死亡した場合の民法958条1項と民法255条の問題について、以下のように判断しています。
”958条3項の規定の趣旨は、本来国庫に帰属すべき相続財産を被相続人と特別な関係にある者に分割することにより、被相続人と特別な関係にある者を保護しようとするものである。
被相続人と特別な関係にある者に財産を分配する制度があるにもかかわらず、その財産が共有であるというだけで、被相続人と特別な関係にある者に財産を与えないというのは、被相続人の意思に反して不合理です。
共有者が死亡し、相続人がいないと判断された場合には、まず被相続人と特別な関係にある者への財産分配の対象となり、この手続きを終えても財産を引き継ぐ者がいない場合にのみ、255条により他の共有者に帰属すると理解すべきである”
したがって、民法958条の3と民法255条の間では、958条の3が優先されることになります。
共有者の中に相続人がいない場合、共有持分はまず特別縁故者への分配の対象となり、分配が行われない場合は他の共有者の所有物となるのです。
共有者の死亡後の具体的な手続きについて
不動産の共有者が亡くなった場合、その後はどうなるのでしょうか。以下より、2つのケースに分けて、共有者が亡くなった場合の流れを紹介します。
ケース①:相続人がいる場合
相続人がいる場合は、相続人同士で「遺産分割協議」を行い、共有持分を誰が相続するかを決めます。
共有持分を「誰が相続するか」が決まったら、相続人が自分で共有持分の名義変更登記を行います。すると、前の共有者と新しい相続人の持分になる……、という流れです。
ケース②:相続人がいない場合
相続人がいない場合、まず家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申請する必要があります。
前述のように特別縁故者は共有者よりも優先されるため、相続財産管理人が特別縁故者に財産分配の手続きを行うまでは、相続する共有持分を他の共有者の名義に移すことができないため。
相続財産管理人は「相続人の捜索」「債権者や受益者への支払い」「特別受益者への財産の分配」などを行う役割を持っています。
最終的に、共有者が残っていれば、その人たちに不動産の取得を依頼することになります。遺産管理人が必要な支払いを行い、当該不動産の価値を算出した後、共有者の権利があれば、それらは他の共有者に帰属します。
共有者が不動産の共有持分を取得した場合、自分の名前で所有権変更の登記をしなければなりません。これにより、第三者から相続した共有持分の権利を主張できるようになります。
相続人がいない場合に共有者の持分を取得する方法
共有者が亡くなった場合、前述のケース②のように相続人がいないなら、以下の流れで相続財産管理人を選任し、共有持分を取得していきます。
- Step1.死後の相続財産管理人の選任
- Step2.共有者への遺贈
- Step3.遺言書の内容は遺言者が決定する
それぞれについて、個別にみていきましょう。
Step1.死後の相続財産管理人の選任
共有者が死亡し、他の共有者が財産の取り分を希望する場合、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
不動産の共有者は、自分たちの間で話し合いや分割をすることができませんので、共有持分を取得するためには、まず相続財産管理人を選任しましょう。
相続財産管理人の選任で必要な書類
被相続人の住所地の家庭裁判所に、相続財産管理人選任の申立をする必要があります。その際に必要な書類としては、以下のとおりです。
- 被相続人、被相続人の父母、子、孫の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 相続人の住民票または戸籍謄本
- 被相続人の財産に関する書類(例:全ての不動産の証明書、固定資産の評価証明書、貯金や株式の残高がわかる書類)
- 不動産が共有であることを示す書類(共有不動産に関する全ての事項の証明書)
- 相続財産管理人の候補者を選任する場合は、その方の住民票または戸籍謄本
なお、不動産の共有者が自ら相続財産管理人になることも可能。申立に必要なものは「収入印紙」「通信用の郵便切手」「予納金」です。
相続財産管理人選任の予納金は、20万円程度、場合によっては100万円を超えることもあります。
Step2.共有者への遺贈
相続財産管理人が選任されると、相続財産の換価・処分が行われ、特別縁故者への最終的な遺産分配が行われます。その時点で共有持分が処分されずに残っていた場合、存命中の共有者は、民法第255条に基づいて被相続人の共有持分を取得可能。
前述のように、共有者が亡くなった後、他の共有者が自ら被相続人の共有持分を取得しようとすると、時間と費用がかかります。
このような手間を省き、スムーズに共有権を移転するために、「遺言」を活用しましょう。遺言で共有持分を引き継ぐ人を指定しておけば、相続開始と同時に、共有持分を取得できます。
この場合、相続財産管理人を選任する必要がなく、特別縁故者に財産が分割される可能性もありません。
Step3.遺言書の内容は遺言者が決定する
遺言書の内容は遺言者が自由に決められます。共有者が自分の共有持分を特別な人に遺贈した場合、共有持分は特別な人に帰属します。
自身が不動産の共有者で「共有者の死後に自分の共有持分を取得したい」と考える場合は、生前に共有者と十分に話し合い、遺言書を書く前に共有持分を譲ってもらえるように説得しておきましょう。
まとめ
共有不動産の共有者が死亡すると、残された共有持分の処遇についても判断しなければなりません。遺言書を残さずに亡くなった場合は、家庭裁判所が共有者を引き継ぐ「相続財産管理人」を選任する必要があります。
このように、多くの手間がかかるため「どのようにすればよいかわからない」「今すぐ共有持分を売却したい」といったケースでは、専門家への相談も検討しましょう。
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