多数の共有者に権利が分かれている「共有不動産」は、共有者間の合意なしには処分や利活用が難しいというリスクを抱えています。そのような問題を解決する手段として「共有物分割請求」「不動産の交換」の2つが挙げられます。
共有物分割請求・不動産交換は、いずれも「物件にかかる所有権を変更する」ための手続き。本稿では、両者の概要や違いについて、初心者の方にもわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
「共有物分割請求」とは?
不動産が共有状態にある場合、さまざまな問題が発生しやすく、各共有者には民法256条により「共有物分割請求」の権利が与えられています。
これは、裁判所を介して共有状態を解消する訴訟です。方法としては「①:共有物分割協議」「②:共有物分割調停」「③:共有物分割訴訟」の3つがあります。
- ①:共有物分割協議…共有者のみで話し合って分割する
- ②:共有物分割調停…調停委員を交えた協議の末に分割する
- ③:共有物分割訴訟…裁判所の決定した分割方法に従う
本稿の主題となる共有物分割請求とは、共有物分割の不動産について、裁判所を通じて共有状態の解消を行う訴訟。
分割請求は、いつでも共有者単独で行えますが、共有者間の協議だけで決着がつかない場合は、第三者に介入してもらったり、裁判を行ったりするケースもあります。
分割方法は物理的・金銭的のいずれか
共有物分割請求では、共有持分を「物理的に分ける」「金銭的に分ける」という、いずれかの方法があります。
例えば、広い土地を分ける場合は、測量を行い物理的に分割することができますが、戸建て物件の場合は金銭的に分けることが現実的です。
分割請求の対象となる不動産が戸建て物件などの家屋であるケースでは、物理的に分けるのは現実的に厳しいでしょう。このような場合、共有者の間で相当額の金銭を受け渡して問題解決を図るのがベターなのです。
原則として共有物分割請求は拒否できない
民法上で規定された共有物分割請求は、他の共有者からの拒否ができないため、請求があった場合は名義解消に応じる必要があります。
申立人の共有持分の割合が僅かであったとしても同様で、例えば全体の1割程度しか権利を持っていなかったとしても、共有物分割請求を行うことが可能です。
「不動産の交換」とは?
共有不動産において、不動産交換とは所有権を交換する処理です。土地と土地や土地と建物など、異なる不動産同士で所有権を交換し、権利移譲を行います。
一般的には、固定資産税評価額を参照し「等価交換」となるよう調整します。
適用要件を満たした場合は非課税になる
不動産の所有権が交換によって移譲された際には、原則として住民税・所得税がかかり、確定申告を行わなければなりません。
ただし、不動産交換では、一定の要件を満たすことで課税が行われない「固定資産の等価交換の特例」があります。対象となる土地・建物は以下のとおり。
<土地>
- 宅地用地
- 田畑山林
- 牧場
など
<建物>
- 居住用
- 店舗・事務所用
- 工場用
- 倉庫用
など
この特例を活用するためには、この不動産の用途が交換前後で同一でなければなりません。例えば「宅地用地から宅地用地へ」の交換は同一用途。一方で、「宅地用地⇄農地」は別用途となります。
等価交換の特例を活用するための要件については、以下のものが挙げられます。
<等価交換の特例の適用要件>
- 交換する資産は固定資産であること(※不動産業者の売買用の不動産は対象外)
- 同じ種類の不動産を交換すること
- 等価交換で譲渡する土地は1年以上所有したもの
- 等価交換で取得する土地は相手が1年以上所有し、かつ交換目的で取得したものではないこと
- 取得した土地を譲渡した土地と同じ用途で使うこと
- 時価の差額が「高い方の土地の時価×20%」以内であること
共有物分割請求と不動産交換の違い
「共有物分割請求」「不動産の交換」の違いについてまとめると、以下の関連が挙げられるでしょう。
- 実施できる不動産の状態
- 各種税金
ここからは、それぞれについて解説します。
実施できる不動産の状態
共有物分割請求は、共有状態になっている不動産を分割する手続きです。そのため、当該物件が共有不動産でなければ請求を行えません。
一方で、不動産の交換であればただ“所有権を交換する”だけですので、あらゆる物件が対象となる点で異なります。
各種税金
共物分割請求において必要な費用は登記費用のみ費用のみです。
それに対し、不動産の交換を行うにあたって前述の「固定資産の交換の特例」を受けられなかった場合、時価で売却したもの譲渡所得税・住民税などが課税されます。
さらに、登記にかかる登録免許税率についても、以下のように共有物分割請求に比べて不動産の交換の方が高く設定されています。
<登録免許税率>
- 共有物分割請求…0.4%
- 不動産の交換…2%
以上の理由により、「共有持分の問題を解決する」という観点からは、共有物分割請求に比べて不動産交換の方が税負担が増してしまうといえます。
まとめ
共有物分割請求と不動産交換はどちらも不動産の所有者を変更する手続きです。共有状態を解消し権利関係のトラブルを回避するための手続きであり、登記費用のみが必要。そのため、共有物分割請求は主に共有物の問題を解決する目的で利用されます。
特例適用が受けられない場合の不動産交換は費用が多くなる可能性があるでしょう。どちらの手続きを選択するかは、所有者の目的や状況によって異なります。
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