共有不動産の共有持分を持つことは、しばしば複雑な問題や負担を伴います。専門業者への買取依頼による共有持分の処分は、これらの問題を解決する効果的な方法として注目されています。
買取依頼には、多数のメリットが存在します。しかし、買取価格が市場価格より低くなる可能性や、将来的な家賃収入の喪失など、注意すべき点もがあるのも事実です。
本記事では、共有持分の買取が持つメリット・デメリット、買取を検討すべき具体的な状況について詳しく解説します。
目次
共有持分を売却する際の民法上のルール
共有持分とは、複数の所有者によって共有される不動産の所有権比率を指します。この概念は、不動産を共有する際に頻繁に適用され、例えば相続がその一例です。仮に兄弟三人が実家を等しく相続する場合、それぞれに割り当てられる共有持分は1/3となります。
ここからは、そんな共有持分を売却する際のルールについてみていきましょう。
不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要
不動産の全体を売却する場合、共有者全員の同意が必須となります。この要件は民法第251条に基づき、共有物に対する変更(売却を含む)は全共有者の合意なしには行えないと規定されています。
例として、甲土地をA、B、Cの三人が共有している状況で、AとBの賛成があってもCが反対する場合、甲土地の売却は不可能です。このルールは、共有物の公正な扱いを保証し、一方的な決定による共有者間の紛争を防ぐために設けられています。
自分の持分のみなら単独で売却可能
対照的に、自分の共有持分だけを売却する際には、他の共有者の同意を必要としません。
第206条では、所有者が法の制限内で自由に所有物を使用、収益、処分(売却を含む)する権利を持つと定めています。さらに第250条では、共有持分は等しいものと推定され、これにより各共有者は自身の持分について他の共有者の同意なしに処分する自由があると解釈されます。
この規定により、もし甲土地をA、B、Cの三人で共有しており、Aが自分の持分を売りたい場合、BとCの承認を得る必要はありません。
不動産の売却を検討している方には、複数の不動産会社による査定を一括で比較できるサービスを利用することをおすすめします。
この方法を採れば、より高い価格で、かつ迅速に売却することが可能になります。不動産一括査定サービスは、売却を希望する不動産の情報を入力することで、複数の専門業者からの査定結果を比較検討できる便利なツールです。
共有持分の買取専門業者とは
共有持分を高額で買い取ってもらいたい時、最も重要なのは適切な不動産会社を選ぶことです。共有持分の取引では、物件の権利関係を精密に理解し、適切に調整する専門的な知識が不可欠。
「共有持分専門の買取業者」は、これらの複雑な手続きを効率化し、コストを最小限に抑えることで、買取価格を最大化することが可能です。
通常の不動産会社よりも高い買取価格を期待できるため、共有持分の売却は、実績と専門性を持つ買取業者への相談を検討しましょう。
専門業者に共有持分の買取依頼をするメリット
共有持分の買取専門業者に買取依頼をするメリットとしては、以下のものが挙げられるでしょう。
- 仲介手数料が発生しない
- 比較的短期で買い取ってくれる
- 他の共有者とのトラブルから抜け出せる
- 瑕疵物件でも契約不適合責任を追わずに済む
それぞれ詳しく解説します。
仲介手数料が発生しない
共有持分の売却方法は大きく分けて「仲介」と「買取」の2つがあります。仲介では不動産会社が購入希望者を探しますが、その際には「売買価格の3% + 6万円 + 消費税」の仲介手数料が発生します。
一方、買取ではこの手数料が発生せず、売却価格全額を受け取ることができます。結果として、仲介手数料分を節約できるため、買取の方がコスト的に有利です。
比較的短期で買い取ってくれる
買取は、直接買取業者が物件を購入するため、購入希望者を探す必要がありません。これにより、仲介を通じた売却よりも迅速に取引を完了させることが可能です。
特に、共有持分の売却では、通常の不動産売却に伴う残置物の撤去や境界の確定などの手間が省け、よりスピーディーに現金化できます。
迅速に資金を手にしたい方や、余計な費用や手間をかけずに売却したい方にとって、共有持分の買取は理想的な選択肢です。専門業者に買取査定を依頼し、スムーズな売却プロセスを勘案しましょう。
他の共有者とのトラブルから抜け出せる
共有持分の買取は、共有者間の関係を円滑に解消する1つの手段です。共有名義の不動産は、全共有者の合意がなければ売却が難しく、賃貸に出す場合も同様に全員の合意が必要です。
この制約下では、不動産の利用に限界がありながらも、固定資産税やメンテナンス費用などのランニングコストは共有者それぞれが負担する必要があります。
共有持分の買取を利用することで、これらの経済的負担から自由になり、共有関係の悩みから脱却することが可能になります。
特に離婚協議中や遺産分割での紛争がある場合、共有持分を買取業者に売却することで、紛争解決のプロセスを大幅に簡素化できます。トラブルを専門の買取業者に委ねることで、「解決策が見えない」「紛争処理が煩わしい」という状況から解放されるでしょう。
瑕疵物件でも契約不適合責任を追わずに済む
共有持分の売却を行う際、契約不適合責任は重要な考慮事項です。この責任は、売却後に物件に契約上想定されなかった問題が発見された場合、売主が負うべき責任を指します。
2020年の法改正により、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたこの制度は、買主が売却後に解除や損害賠償を請求することを可能にします。
しかし、買取を行う不動産会社は専門的な視点から物件の事前評価を行い、契約不適合責任の免除を前提に取引するケースが一般的です。これにより、売却後のリスクやトラブルの可能性を大幅に減少させることができ、安心して共有持分を手放すことができます。
専門業者に共有持分の買取依頼をするデメリット
一方で、専門業者への買取依頼には次のようなデメリットも存在します。
- 買取価格は市場相場よりも低くなる
- 売却すると家賃収入などがなくなるリスクがある
それぞれ詳しくみていきましょう。
買取価格は市場相場よりも低くなる
共有持分の買取価格は市場価格よりも低めに設定される傾向があり、多くの場合、売却者の期待するほどの高額での取引は難しいのが実情です。
特に、資金計画が売却収入に依存している場合(例えば借金の返済など)、実際に手元に残る金額を事前に確認しておくことが重要。
高価格での売却を目指す場合は、複数の専門買取業者から査定を受けることが推奨されます。業者によって買取価格は異なるため、一括査定を利用して最適な買取業者を選定することが賢明です。
売却すると家賃収入などがなくなるリスクがある
共有名義の不動産が賃貸物件である場合、持ち分に応じた家賃収入が見込めます。
持分を売却することで、将来的な収入源を失うことになります。そのため、維持管理費と比較して収益が上回っている場合は、共有持分を保持し続けるメリットも考慮する必要があります。
一方で、維持管理費が収益を上回る、または管理の手間とコストが収入のメリットを上回っている場合は、買取を通じて即時の現金化を選択することも1つの解決策です。
共有持分の買取依頼を検討するべきケース
以下のような状況であるなら、積極的に専門業者への買取依頼を検討しましょう。
- 維持・管理の負担が大きい
- 共有不動産が空き家状態である
- 他の共有者と連絡がとれない
次項より個別に解説します。
維持・管理の負担が大きい
共有不動産の維持・管理は、共有者間での協力が必須です。これには固定資産税、修繕費用の金銭的な負担、草取りや庭木の剪定といった日常の手入れ、さらには定期的な見回りや設備点検が含まれます。
これらの負担は共有者間で話し合い、各自の持分に応じて分担されるのが一般的です。しかし、不動産から直接的な利益を得ていない場合でも、これらの負担からは逃れられません。その結果、多くの人にとって共有持分が負担となり得ます。
買取による迅速な共有持分の処分は、このような時間と金銭の損失を避ける有効な手段といえるでしょう。
共有不動産が空き家状態である
空き家の共有不動産を放置すると、その状態が続けば「特定空家」に指定されるリスクがあります。
特定空家に指定されると、倒壊の恐れや景観の悪化などの問題に対して行政からの改善指導や命令を受け、これを無視し続けると罰則が科されます。
最悪の場合、強制的な解体が命じられ、高額な解体費用を共有者で負担することになりかねません。倒壊等により近隣住民への損害を引き起こした場合、共有者は慰謝料や損害賠償の責任を問われることもあります。
使用予定のない空き家の共有持分を早期に売却することで、これらのリスクや責任から逃れられるでしょう。
他の共有者と連絡がとれない
相続が繰り返されることで、共有者の数が増え、未だ会ったことのない、連絡先も分からない共有者が出現するケースもあります。このような状況では、不動産の全体的な売却や処分を進めるための全員の同意を得ることが困難になりがちです。
しかし、自身の共有持分に限れば、他の共有者との連絡が取れない状態でも売却が可能。共有持分の買取を利用することで、不動産の売却・処分をスムーズに進め、連絡が取れない共有者による手間や遅延を回避できます。
まとめ
共有持分の買取は、共有者間の意思疎通が難しい場合や、維持管理の負担が大きい場合、さらには空き家となってしまった不動産の処理に際して、特に有効な手段です。
これらの状況では、共有持分の買取によって、不要なリスクや負担から迅速に解放されることが可能になります。
しかし、買取を検討する際には、買取価格や将来の収益機会の損失など、複数の要因を総合的に考慮することが重要。
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