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契約不適合責任の免責とは何か?売主・買主の双方の視点から詳しく解説

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不動産取引において、契約不適合責任とその免責に関する理解は、売主と買主双方にとって非常に重要です。一方で、多くの方が契約内容の不一致や物件の隠れた欠陥に関して深い悩みを抱えていることでしょう。

この記事では、そうした悩みに対する解決策として、契約不適合責任の「免責」について法的な枠組みと、免責特約の具体的な適用について詳しく掘り下げます。

改正民法における契約不適合責任の変化や、不動産取引におけるリスクも解説しますので、ぜひお役立てください。

契約不適合責任の免責とは

契約不適合責任とは、契約に基づく物の提供で、以下の3つの条件のいずれかが契約内容と異なる場合に生じる、売主や施工業者が買主や施主に対して持つ法的義務です。

2020年4月1日以前、この概念は「瑕疵担保責任」として知られていました。物に欠陥や不備がある場合の売主や施工業者の責任でした。

従来の民法では、隠れた欠陥がある場合、売主が責任を負うことが定められていました。しかし、この瑕疵担保責任は学説間の意見の対立が存在し、改正により「契約不適合」や「契約不適合責任」という用語に置き換わっています。

関連記事:契約不適合責任とは?免責や期間、瑕疵担保責任との違いをわかりやすく解説

契約不適合責任の免責とは

契約不適合責任は民法で認められた責任ですが、特定の特約を通じて免除することも可能です(民法572条、559条に基づく)。この特約を「契約不適合責任免責」といいます。

不動産売買契約書や請負契約書にこの免責条項が含まれている場合、当事者間の合意に基づく特約となります。この結果、原則として、買主や施主は売主や施工業者に対する契約不適合責任を追及できなくなることを理解することが重要です。

契約不適合責任の条件は売主によって変わる

ここで、契約不適合責任につけられる条件について、以下のケース別に解説します。

  • 売主が個人の場合
  • 売主が宅建業者の場合
  • それ以外の法人の場合

次項より、詳しくみていきましょう。

売主が個人の場合

売主が個人である場合、免責の条件は基本的に存在しません。個人間取引においては、民法の規定が適用され、当事者間で任意に免責特約を設定することが可能です。

例えば、個人売主の場合、「引き渡し後すぐに免責が適用される契約」「売買後の責任を限定的にする契約」など、多様な免責特約が可能です。不動産会社を介する仲介取引でも、これは同様。

従って、個人から物件を購入する場合、免責特約の内容に関わらず、免責が基本的に有効になることを理解しておく必要があります。

売主が宅建業者の場合

売主が宅建業者であり、買主が個人の場合、宅建業法の規定により、売却後2年以上の免責設定は行えません(宅建業法第40条)

これは、宅建業者から中古物件などを直接購入した際、少なくとも2年間の保証期間が提供されることが理由です。

宅建業者が売主の場合、「保証期間を2年間」とする契約が一般的。これは、引き渡しから2年以内に欠陥が発覚した場合のみ保証されるという条件を含みます。

購入者は、宅建業者から物件を購入する際、少なくとも2年間は保証されることを知っておくべきでしょう。

それ以外の法人の場合

売主が宅建業者以外の事業者(法人)である場合、消費者契約法が適用され、基本的に引き渡し直後からの免責は認められません。

引き渡し直後の免責や、不当に短い通知期間を設けた契約は、消費者契約法第8条、10条に基づき無効とされることがあります。

「引き渡しからどれだけの期間、免責が認められないか」についての明確な規定はなく、実際には「引き渡しから1年間は免責不可」とする契約が一般的です。

免責期間に関する典型的な特約として、全宅連作成の消費者契約用契約書式では、通知期間を「引き渡しから1年」としています。これは、個人と宅建業者間のバランスを考慮したものとみられます。

したがって、事業者(法人)から物件を購入する際は、保証期間が大体1年程度であると考えるとよいでしょう。

契約不適合責任免責が無効になるケース

契約不適合責任が免責になるケースとしては、次のようなものがあります。

  • 故意に瑕疵を隠した場合
  • 法人の売主が売主で、自社に有利な条件をつけた場合
  • 売主が宅建業者で一定条件を満たした場合
  • 新築の場合

次項より、個別にみていきましょう。

故意に瑕疵を隠した場合

契約に免責特約が存在しても、売主が故意に欠陥を隠した場合、その免責特約は無効となります(改正民法第572条)。

例えば、雨漏りの存在を知りつつこれを隠し、免責を規定した契約は無効になる可能性が高く、買主は売主に対して損害賠償を請求できる状況になります。

ただし、故意を証明する客観的な証拠が必要です。証拠が不足している場合、故意の立証は難しく、実際に免責特約が無効となるケースは少ないでしょう。

法人の売主が売主で、自社に有利な条件をつけた場合

買主が個人で、売主が宅建業者以外の事業者(法人)である場合、消費者契約法が適用され、特定条件下で免責が無効になることがあります。

この無効になる可能性があるのは、主に次の2つのケースです。

  • 契約不適合責任を完全に免除する特約を設定した場合
  • 売主が責任を負う期間を短期間に設定した場合

消費者契約法は、個人の買主に対して不利な条件を含む契約を禁止しています。完全な免責特約や、不当に短い期間の免責特約は、それぞれ消費者契約法第8条と第10条により無効となる可能性があります。

売主が宅建業者で一定条件を満たした場合

買主が個人で売主が宅建業者の場合、宅建業法が適用されます。この法律により、宅建業者は個人買主に対して2年間の免責を設けることが禁止されています。

そのため、免責期間が2年未満に設定されている場合、その免責特約は無効となり得る点には留意しましょう。

新築の場合

新築物件の売買契約には「住宅品質確保法」が適用され、10年間の保証期間が義務付けられています。その結果、新築物件において保証期間を10年未満に設定する免責特約は無効となります。

買主が個人の場合に免責特約をつけるなら把握してくべき法律

買主が個人であった場合、契約不適合責任に免責特約をつけるなら以下の法律の内容について詳しく把握しておきましょう。

  • 消費者契約法
  • 宅地建物取引業法

次項より、個別に解説します。

消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者間の情報や交渉力の格差を踏まえ、消費者が不当な契約により不利益を被らないようにするために制定された法律です。

消費者契約法では、特に損害賠償責任を完全に免除する条項に関して、消費者が不当に不利益を被ることを防ぐため、そのような条項を無効とする規定を設けています(消費者契約法第8条1項1号)。

ただし、売主や施工業者が追完責任や代金減額責任を負う場合、契約不適合責任免責の特約は無効にはならないため、売主や施工業者の損害賠償責任を免除する特約も有効になります。

消費者契約法は主に消費者の利益を守るために用いられ、施工業者(売主)が事業者であり、施主(買主)が消費者である場合に適用されます。個人間の取引ではこの法律は適用されないため、個人取引においては注意が必要です。

宅地建物取引業法

宅地建物取引業法は、宅地や建物の取引を行う不動産業者に対する規制を設け、取引の公正を保つことを目的とした法律です。

この法律は、宅地建物取引業者が売主となる場合に、買主に不利な特約を設定することを制限しています(宅地建物取引業法第40条)。

民法では、買主は契約不適合を知った時から1年以内にその事実を売主に通知しなければならないと定められていますが、宅地建物取引業者が設定できる契約不適合責任免責の特約は、この期間を「目的物の引渡の日から2年以上」とするものに限定しています

そのため、売主が全ての契約不適合責任を免除する特約を設定しても、それは宅地建物取引業法により無効となる可能性が高いのです。

契約不適合責任を免責にするメリット・デメリット

最後に、契約不適合責任を免責にするメリットとデメリットを、買主・売主の双方の視点から解説します。

買主のメリット・デメリット

契約不適合責任が免責されている場合の主な買主のメリットは、市場価格よりも安価に不動産を購入する機会です。

免責されている項目は、ほぼ間違いなく不具合が存在することを意味し、その修補に必要な費用が価格に反映されるため、購入価格が低くなる傾向があります。特に、買主が自分で修補作業を行える場合、これは大きな経済的メリットになり得ます。

一方で、デメリットとしては、購入した不動産に対する保証が一切なく、すべての問題を自己責任で対処しなければならない点があります。したがって、買主は免責条件を慎重に検討し、リスクを理解した上で購入を決める必要があります。

売主のメリット・デメリット

売主にとって最大のメリットは、物件を引き渡した後、それに関する修補や損害賠償のリスクを負わなくて済むことです。一定の条件や期間の制限はあるものの、売却後の責任から解放されることは、売主にとって大きな利点といえるでしょう。

一方で、デメリットとしては、契約成立が難しくなる可能性や、売却価格が低くなることが挙げられます。

買主は、同じ条件や価格帯の他の物件と比較して、免責されていない物件を選ぶ傾向にあります。免責条件がある場合、将来的な修補や改修の必要性があるため、これが金額交渉の要素となり、結果として売却価格が低下する可能性が高まります。

売主は、周辺の競合物件の状況を考慮し、どのような条件を設定するか慎重に決定することが望ましいでしょう。

まとめ

契約不適合責任は、売主が買主に対して持つ法的義務であり、免責特約により責任範囲が限定されることがあります。消費者契約法や宅地建物取引業法などの法律は、この責任と免責に関して重要な役割を果たします。

ただし、売主と買主双方にとってメリットとデメリットが存在するため、取引の際にはこれらの条件を慎重に検討することが重要です。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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