共有持分【基礎知識】

共有持分関連の問題は弁護士に相談するべき?

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不動産の共有持分に関する問題は、多くの人にとって複雑かつ重要な事柄です。共有持分の解消や管理は、しばしば「共有者同士の感情的な対立」「法的な課題」を引き起こすため、弁護士に間に入ってもらう必要も出てくるでしょう。

本記事では、共有持分に関する問題を弁護士に相談するにあたって、知っておくべき基本事項を解説します。裁判所を通じた解消法から持分の売却、または放棄に至るまでの過程、それに伴う弁護士の役割と費用についても詳しく説明しますので、ぜひお役立てください。

共有持分とは

共有持分とは、複数人による不動産の所有権の割合を意味します。例として、兄弟3人が相続により実家を等分に分けた場合、各人の共有持分は1/3となります。これは、共有持分権と呼ばれる権利体系の一部であり、不動産に対する割合的な権利を示します。

具体的には、建物の半分が自分のものというよりは、不動産全体に対する半分の権利として把握されます。

共有は主に、夫婦、親子、兄弟間での購入や相続によって生じることが多いです。特に、夫婦でのマイホーム購入や、相続による賃貸物件の共有などが該当します。共有持分の理解は、共有状態のリスクや解消方法にも繋がります。

関連記事:共有持分とは?不動産を共有し続けるリスクや共有状態の解消方法を解説

共有問題において弁護士が行なってくれること

共有問題において、弁護士は以下の形で貢献してくれます。

  • 当事者間の代理交渉
  • 必要書類の収集・作成・提出の代理
  • 弁護士会への照会

それぞれ、詳しく解説します。

当事者間の代理交渉

感情に左右されない弁護士による代理交渉は効果的です。弁護士が交渉窓口となることで、相手方に与える影響は大きく、防御方法としても有効といえるでしょう。

必要書類の収集・作成・提出の代理

弁護士や他の法律専門家(司法書士、行政書士等)は、職務上請求を利用して、戸籍謄本や住民票などの必要書類を取得します。特に相続関連でこのサービスは有益です。

弁護士会への照会

弁護士の介入により、法的な誤りがなく、安心して取引ができます。訴訟手続きでは、弁護士が書類作成から裁判所への代理人としての出頭までをサポートし、当事者の負担を軽減します。訴訟代理人は弁護士に限られています(民事訴訟法第54条第1項を除く)。

共有問題の解決を弁護士に依頼した方がいいケース

下記のケースでは、弁護士への相談を積極的に検討しましょう。

  • 当該不動産を手放したくない
  • 他の共有者と連絡がつかない
  • 共有者間での交渉が難しい

次項より、詳しく解説します。

当該不動産を手放したくない

「家族と住んでいる不動産の売却を他の共有者から迫られている」「経済的に苦しい中、他の共有者から家賃を請求されている」といった切実な事情を抱える方もいます。

このような場合、弁護士を通じて共有不動産の利用や処分について争うことも1つの選択肢です。

他の共有者と連絡がつかない

共有者との連絡が取れず、不動産の利用や処分について相談できない場合は、弁護士に相談することが重要です。

特に、共有者が行方不明の場合は、「不在者財産管理人」の選定や「失踪宣告」の申立てなど、裁判所を通じた手続きが必要になることが理由として挙げられます。

共有者間での交渉が難しい

共有者との交渉が拒否されたり、無視されている場合、弁護士の介入を検討すべきです。共有者と協議できないと、共有不動産の利用や処分について単独で決定することは難しいため。

弁護士を介した交渉が、解決の糸口となることもありますが、場合によっては紛争が激化する可能性も懸念されますので、注意が必要です。

共有問題の解決を弁護士に依頼しない方がいいケース

一方で、以下の場合は弁護士への依頼はいったん保留にするのが賢明です。

  • 共有者間での話し合いが可能
  • 目的が不動産の現金化

それぞれ、詳しくみていきましょう。

共有者間での話し合いが可能

他の共有者とまだ十分な話し合いをしていない。あるいは共有不動産の活用について軽く話し合った程度の場合、弁護士への相談はまだ早いでしょう。

早期の弁護士介入が争いを招くこともありますので、まずは共有者同士で率直な話し合いを行い、すべての意見を確認することが重要です。

目的が不動産の現金化

共有不動産の管理や維持が負担で、共有関係から抜け出したいだけなら、まず他の共有者に持分の買取を提案してみましょう。

相手が不動産を継続して保有したい意向があれば、交渉の余地があります。不動産の現金化が目的の場合、他の共有者との話し合いで解決策を探ることが効果的です。

弁護士に依頼するデメリットとは?

恩恵の多い弁護士への依頼ですが、以下のようなデメリットも存在します。

  • 費用が高額になりがち
  • すぐに解決できる訳ではない
  • 希望通りの解決に至るとは限らない

それぞれ、個別にみていきましょう。

費用が高額になりがち

共有持分の問題を解決するために弁護士に依頼すると、費用が高額になることが1つの課題です。

不動産の共有問題に関わる弁護士費用の相場は、おおよそ50万円から100万円程度とされています。他の共有者との紛争を解決するために、これほどの費用を投じることが適切かどうか、冷静に検討することが重要です。

すぐに解決できる訳ではない

共有持分の問題は、解決までに時間がかかるケースが多々あります。弁護士が仲介しても、共有者間の交渉が必ずしもスムーズに進むとは限らず、場合によっては裁判に発展することもあります。

裁判になれば、共有持分の解消には半年から数年かかることも珍しくありません。

希望通りの解決に至るとは限らない

弁護士に依頼しても、必ずしも望む結果になるとは限りません。交渉が決裂し裁判になった場合、最終的な判断は裁判所に委ねられます。

例えば、個人的に不動産を取得したいと思っていても、裁判所の判断で不動産が競売にかけられることもあり得ます。

弁護士に相談した際の、共有問題解決の流れ

弁護士に相談すると、次の流れで共有問題の解決を図ってくれます。

  • 手順①:事前に共有者間での話し合いを試みる
  • 手順②:弁護士事務所への相談
  • 手順③:共有物分割調停の実施
  • 手順④:共有物分割請求訴訟

以下より、個別にみていきましょう。

手順①:事前に共有者間での話し合いを試みる

最初に、共有者間での話し合いを試みます。この段階で解決しなければ、弁護士を介しての再協議や、調停、訴訟への進行が考えられます。

この段階で、弁護士に費用見積もりや解決の見込みを確認しておくことが大切です。その後は、担当弁護士の指示に従って進めることになります。

手順②:弁護士事務所への相談

共有者間だけで共有持分の解消方法を決定できない場合、裁判所の調停委員を介して公正な話し合いを行うことが効果的です。調停委員は裁判所が選任した民間の有識者で、当事者間の中立的な立場から問題解決のためのアドバイスを行います。

この調停では、法的な観点を踏まえたやり取りが行われますが、調停の段階では強制力のある裁判所の判決は下りません。目的は共有者間の合意形成にあります。

手順③:共有物分割調停の実施

調停を経ても共有持分の解消方法が決まらない場合は、共有物分割請求訴訟の申立てが必要です。

この訴訟は、共有不動産の所在地か被告の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てます。訴訟の申立てや裁判の進行は弁護士に委ねられるのが一般的です。

手順④:共有物分割請求訴訟

裁判所は、状況や当事者の主張を総合的に判断し、共有持分の解消方法を決定します。しかし、裁判所の判断は必ずしも当事者の希望通りにはならない可能性があるでしょう。

例えば、競売によって不動産が安価で落札されると、共有者全員が金銭的な損失を被ることもあります。ただし、訴訟中でも共有者間での和解は可能なので、判決が下る前に解決策を見つけることが望ましいといえます。

弁護士に共有問題を相談した際の必要費用

弁護士に相談した際には、下記の費用が必要になります。

  • 相談料
  • 着手金
  • 成功報酬

以下より解説しますので、しっかりと把握しておきましょう。

相談料

弁護士への法律相談にかかる費用を相談料と言います。相談料の相場は1時間につき約1万円程度ですが、初回相談を無料で提供する弁護士事務所もありますので、適切に活用することが重要です。

着手金

着手金は、弁護士に依頼を開始した際に必要となる初期費用です。着手金が無料である弁護士事務所も存在します。この着手金は、依頼者が受ける「経済的利益」に基づき、事務所ごとに定められたパーセンテージを適用して算出されます。

経済的利益は、例えば「案件成功時に依頼者が得る共有持分の固定資産税評価額の1/3」で計算されることがあります。しかし、共有物件の場合は固定資産評価額だけでなく、手間暇の量を考慮した個別の見積もりが一般的です。

成功報酬

成功報酬は、弁護士が依頼の目的を達成した際に支払う費用です。この報酬も、前述の着手金と同様に、依頼者が得る経済的利益を基に計算されます。

成功報酬の算出基準は事務所によって異なりますが、一般的には依頼者が得る持分の1/3を基に算出されるケースが多々あります。

共有問題を相談できる弁護士の見極め方

共有持分に関する相談をする弁護士が決まっていないなら、次の着眼点を持って信頼できる依頼先を探しましょう。

  • 不動産・相続領域を得意としているか
  • 親身に話を聞いてくれるか

それぞれ、詳しく解説します。

不動産・相続領域を得意としているか

弁護士選びでは、不動産や相続問題に関する実績や経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。不動産の共有問題に強い弁護士を選ぶためには、各事務所のウェブサイトでその専門分野を確認するとよいでしょう。

離婚や相続問題においても不動産に関する争いが頻繁に起こるため、これらの分野に経験がある弁護士も適任といえます。

親身に話を聞いてくれるか

依頼者とのコミュニケーション能力も、弁護士選びにおいて重要な要素です。担当弁護士が依頼者の話を丁寧に聞き、必要な情報を把握できるかどうかは、協議や裁判の成否に大きく影響します。

十分な情報収集と理解がなければ、効果的な代理交渉や裁判対策は困難。依頼者の話をしっかり聞き、親身になって対応する弁護士を選ぶことが望ましいです。

弁護士に相談する以外の共有問題の解決方法

一方で、弁護士に相談する以外にも共有問題の解決方法は存在します。具体的には、以下のとおり。

  • 持分放棄
  • 第三者への売却

次項より、詳しく解説します。

持分放棄

共有持分の問題を裁判なしで解決したい場合、「持分放棄」が1つの選択肢です。この方法を選ぶと、自身の持分は他の共有者に移転し、共有持分から解放されます。

民法第255条では、共有者の一人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属することが定められています。

しかし、持分移転登記には他の共有者の協力が必要であり、共有関係から完全に独立して抜け出すことは難しく、持分放棄では、現金が入ることはありません。そのため、共有持分の解消を目指すならば、次に紹介する「持分の第三者への売却」がおすすめです。

第三者への売却

自分の持分は完全な所有物であり、他の共有者の同意なしに第三者へ売却することが可能です。ただし、共有持分だけでは不動産を自由に活用できないため、一般の個人や不動産業者には売却が困難。

しかし、共有持分を専門に扱う買取業者は、そのような持分でも買い取ってくれる可能性があります。

共有持分を売却する際は、専門の買取業者への依頼が効果的です。これにより、裁判のリスクを回避しながら、迅速に共有関係から抜け出すことが可能になります。

共有持分買取業者を利用すれば、他の共有者と関わることなく、スムーズに持分を売却できるでしょう。

まとめ

共有不動産の持分問題には、複数の解決策が存在します。弁護士を通じた交渉や訴訟、持分放棄、あるいは専門の買取業者による持分の売却など、選択肢は多岐にわたります。重要なのは、各方法の特徴とそれに伴うリスクを理解し、自分の状況に最適な方法を選ぶことです。

弁護士選びではその専門分野やコミュニケーション能力を考慮することが重要で、適切な弁護士の選択は、共有持分の問題解決の成功に大きく寄与します。

本ブログで情報発信を行っている当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり物件の買取に特化したサービス「ワケガイ」を提供しています。

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この記事の監修者

監修者プロフィール写真

丸岡 智幸(宅地建物取引士)

訳あり不動産の買取を専門にする会社の代表取締役。
相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産の買取を専門としている。
訳あり不動産の買取サービス「ワケガイ」、空き家、訳あり不動産CtoCプラットフォーム「空き家のURI・KAI」を運営。
買取の経験をもとに、訳あり不動産の解説をする著書『拝啓 売りたいのに家が売れません』を2024年5月2日に出版。

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